『Brille Editor System ver.8』用の『BESファイル』を、ZIPファイルに圧縮して公開しています。(2026年4月19日現在未作成)
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こういう場面は|長くは|続かない。||神経の|抵抗には|限界が|あるからだろう。||絶頂に|達すると、|突然|凪のような|静けさが|来る。||移行も|なく。||直前の|熱狂が|狂気に|近かったように、|その|静けさは|放心に|近い。
まるで|自分の|狂乱を、|涙を、|口にした|言葉を|恥じているようだ。||人間は|劇的な|身振りの|ために|作られては|いないとでも|いうように。
メグレは|居心地悪く|待ちながら、|小さな|窓から|青みがかった|夕暮れを|眺めていた。||憲兵の|ケピ帽が|シルエットで|見えた。||しかし|背後で|何が|起きているか、|感じ取れた。||バッソ夫人が|夫に|近づき、|肩を|つかんで、|途切れ途切れの|声で|言うのが|わかった。

「嘘だと|言って!」
バッソは|鼻をすすり、|立ち上がり、|妻を|払いのけ、|酔っぱらいのような|濁った|大きな|目で|あたりを|見回した。||ストーブが|開いていた。||マチルドばあさんが|石炭を|くべた。||天井に|赤い光の|大きな|輪が|できた。||梁が|浮き上がって|見えた。
坊やは|父親を|見て、|父親に|倣うように|泣き止んだ。

「もう|大丈夫です。||申し訳ない」||バッソは|部屋の|真ん中に|立って|つぶやいた。
傷ついているのが|伝わってきた。||声は|疲れ果てていた。||もう|何一つ|残っていなかった。

「自白しますか?」

「自白では|ない。||聞いてください」
苦しそうな|表情で|家族を|見つめ、|長く|眉を|ひそめた。
