本作『怪盗レトン』は、ジョルジュ・シムノンのメグレ警部シリーズ、最初の作品と言われています。
怪盗レトンは、原文の『ピエトル=ル=レトン』(ラトビア人のピエトルという意味)とはかなり異なる題名になってます。
おそらく、最初に日本語訳が出版されたとき、おなじフランス人作家で当時日本でも人気だった、モーリス・ルブランの「怪盗ルパン」が意識されていたのかもしれません。
また、現代でこそバルト3国のひとつ「ラトヴィア」という国が存在しますが、当時は旧ソ連の時代で、日本ではラトヴィアという国の知名度が高くなかったということもあると思われます。
フランキーの読書感想文
この作品は、推理小説というよりも、冒険小説、レイモンド・チャンドラーの探偵フィリップ。マーロウに近いノアール小説遠y部方がいいかもしれません。というのも、最初から、メグレとピエトル・ル・レトンとの戦いの様相を呈しています。そして、いきなり、メグレの相棒とトランス刑事が何者かの手によって殺されます。そして、メグレ自身も胸の辺りを銃で撃たれます。たまたま弾が肩甲骨の辺りで貫通したから大したことはないと、応急手当てのみでピエトルを追いかけるのです。そして、メグレ特有の忍耐強さでpイエアトルを追い込んでゆき、最後はトランスを殺し、自分を売った本当の黒幕がわかります。実は、ピエトル自身も犯人であり被害者という立場だったようです。メグレシリーズは中では、推理ゲーム的な様相は少ないですが、ピエトルはそもsも、双子であり、かつ兄の代わりを演じた二重の人格を持っていることが徐々にわかり、なぜ兄を殺し二重人格として行動することになったのかというその動機と経緯が「謎」であり「ミステリー小説」でありうるのでしょう。メグレシリーズの最初の作品ですが、やはり日本語でサラリと読むとどこがミステリーなんだとつまらない小説です。しかし、シムノンお得意のフランス語の情景描写と登場人物の心理とその背景をじっくり読むことでこの作品の良さがわかるでそう。最後の海岸での格闘シーンは本サイトの挿絵でもわかると思いますがぜひ実写で見てみたいと迫力のシーンです。その辺りはマーロウ的なアードボイルドな側面があります。しかし、再世からこの過酷な捜査でメグレを登場させるなんて、クリスティーやヴァンダインなど、当時の本格ミステリー黎明期としては伊そくの作品ではなかったのでしょうか?
レイモンド・チャンドラーがクリスティの作品を批判的に「探偵の事件捜査なんて現実はもっと泥臭い人間臭いもんだ」みたいなことを言ったとか・・・。シムノンのメグレシリーズはその中間に位置し、そういった批判に十分耐えうるミステリー小説ではないでしょうか?
