エルキュール・ポワロ

 


ポワロとは誰か(序文)

エルキュール・ポワロは、アガサ・クリスティの豊かな想像力の中から生まれた人物である。
彼は、ドイツ軍のベルギー侵攻によって祖国を追われ、イギリスへ逃れてきた難民という設定だ。
この侵攻は、イギリスを第一次世界大戦(1914〜1918年)へと参戦させる原因となった。

ドイツ軍の攻撃から逃げられる者は逃げた。
ブリュッセルで警察の幹部を務めていたポワロも、もし残っていれば逮捕され、牢屋に入れられていたかもしれない。

だが、それはポワロが望むような生活ではない。
牢屋では「小さな灰色の脳細胞」を働かせる余地がないからだ。

祖国がドイツの占領下に置かれている間、
生計を立てる必要があるにしても、少なくとも暇を持て余すことのないよう、
ポワロは自分の得意なこと――犯罪の解決――に取り組むことにした。

やがて彼は、第一次大戦に従軍した元将校、ヘイスティングズ大尉と同居するようになる。
ヘイスティングズは、いわばポワロにとってのワトスン役だった。
緊急時にはリボルバーを持ち、ポワロの推理を聞く相手でもあった。

ヘイスティングズ自身も時々推理をするが、
その多くは見当違い、いわゆる「レッドヘリング(ミスリード)」であることが多かった。

ポワロの最初の事件は
**『スタイルズ荘の怪事件(The Mysterious Affair at Styles)』**である。

クリスティはポワロを、少し滑稽な人物として描いた。
背が低く、丸々とした体型、卵形の頭、細かい癖のある仕草。
そして、どこか時代遅れのような完璧に整った服装。

しかしその一方で、
彼にはシャーロック・ホームズに匹敵するほど鋭い頭脳が与えられている。

嘘や秘密が絡み合った複雑な事件でも、
その知性はそれらを見事に切り分け、
そして確実に犯人を指し示す。

テレビドラマ(PBSシリーズ)では、
デヴィッド・スーシェがポワロを完璧に演じた。
クリスティの孫マシュー・プリチャードも、
祖母が彼の演技を見られなかったことを残念がったほどである。

また、
『ナイル殺人事件』ではピーター・ユスティノフがポワロを演じ、
劇中では見事なタンゴまで踊った。

『オリエント急行殺人事件』では
アルバート・フィニーが、より陰影のあるポワロを演じている。

しかし、
外見だけでなく、内面の強さや直観的な知性まで表現したのは、
やはりスーシェだと言えるだろう。

ポワロは多くの長編小説に登場し、
さらに数多くの短編にも登場する。

そして実は、
ポワロが最も輝くのはこの短編なのである。

クリスティは、とりわけ巧妙なトリックをポワロのために用意し、
犯罪がどのように、そしてなぜ行われたのかを
新しい視点から描いた。

彼女はミステリーというジャンルに、
数多くの見事などんでん返しを残した。

ジョン・カランの
『アガサ・クリスティ 秘密のノート』や
『アガサ・クリスティ 殺人の作り方』を読めば、
クリスティが物語を作るとき、どれほど鮮やかな発想をしていたかがよくわかる。

登場人物と筋書きを結び合わせながら、
読者を最後まで迷わせ続けるその手腕は見事なものだ。

だが、その話はまた別の機会に。

ここにあるのは、
ポワロの短編の数々――
彼を世界中で有名にした物語の宝庫である。

もしまだ、
この尊大で小柄、しかし驚くほど鋭い頭脳を持つ男を知らないなら、
今がその絶好の機会だ。

この本は、
楽しみながら読み進めることもできるし、
気になるところだけを拾い読みすることもできる。

本棚に置いてコレクションにするのもよいし、
旅行の飛行機の中や長い通勤の時間、
病院の待合室で読むのもよい。

雨の日の昼食のお供にも、
眠る前の読書にもぴったりだ。

ポワロは、そのすべてになり得る。

彼は創造力の象徴であり、
そしてアガサ・クリスティという偉大な作家の遺産でもある。

彼女はコナン・ドイルと並ぶ存在として、
ホームズに匹敵するほど有名で長く愛される探偵を、
ミステリーの世界に生み出した。

クリスティの作品のタイトルさえ、
童謡などをもじった印象的なものが多い。
目次をざっと眺めるだけでも、その多様さがわかる。

だがそれらはすべて、
意図して選ばれている。

クリスティは偶然に任せることをしない。

しかし、この本の最大の謎は、
素晴らしい物語だけではない。

それは ポワロ自身である。

クリスティは、
彼の伝記よりも外見の描写を多く与えながら、
読者を謎解きの追跡へと誘う。

ヒントはたくさんある。
だが同時に、ポワロ自身がわざと仕掛けた
ミスリードも多い。

彼はイギリスへ来る前に、
どんな事件を解決していたのか。

彼はいったい何歳なのか。

なぜその場所に住むことを選んだのか。

なぜベルギー王室と親しいのか。

なぜ結婚しなかったのか。

ヘイスティングズとの関係は何だったのか。

そもそもヘイスティングズの名前は何だったのか。

ベルギーのある町には
ポワロの像まで建っている――
だがそれは本当に彼の生まれた町なのか。

そして彼の服装を見てほしい。
戦争難民の彼が、どうやってあれほど裕福に暮らしていたのか。

ポワロという人物は、
まさに謎そのものだ。

ここであなたは、
彼を単なる物語の人物としてだけでなく、
一人の人間として知る機会を得る。

クリスティ自身と同じく、
ポワロもまた秘密を抱えているのだ。

 

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