『Brille Editor System ver.8』用の『BESファイル』を、ZIPファイルに圧縮して公開しています。(2026年4月19日現在未作成)
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折り畳まれた|フレンチウィンドウに|近づき、|上部の|小さな|割れた|ガラスを|見た。||カーメンの|銃の|弾が|殴りつけたように|ガラスを|砕いていた。||穴は|開いていなかった。||漆喰に|小さな|穴が|あり、|目の|鋭い|者なら|すぐに|見つけるだろう。||ドレープを|割れた|ガラスの|上に|引いて、|ポケットから|カーメンの|銃を|取り出した。||バンカーズ・スペシャル、|二十二口径、|ホローポイント弾。||真珠の|グリップで、|銃把に|はめ込まれた|小さな|丸い|銀板に|こう|刻まれていた。
「オーウェンより|カーメンへ」

彼女は|みんなを|手玉に|取っていた。
銃を|ポケットに|戻して|ブロディの|そばに|座り、|暗い|茶色の|目を|じっと|見つめた。||一分が|過ぎた。||ブロンドが|ポケットミラーで|顔を|整えた。||ブロディは|タバコを|もてあそんで|ぴくりと|言った。


「満足か?」

「今のところはな。||なぜ|老人でなく|リーガン夫人に|ゆすりを|かけたんだ?」

「老人には|一度|かけた。|六、七ヶ月前。||腹を|立てて|警察を|呼ぶかもしれないと|思って」

「リーガン夫人が|老人に|話さないと|なぜ|思った?」
彼は|タバコを|吸いながら|私の|顔から|目を|離さずに|しばらく|考えた。||やがて|言った。

「あんたは|あの女を|どれくらい|知っている?」

「二度|会っただけだ。||あの写真で|ゆすりを|かけるなんて、|相当|よく|知っていなければ|できないだろう」

「あちこち|遊び歩いている。||老人に|知られたくない|弱みの|一つや|二つ|あると|踏んだ。||五千ドルくらい|楽に|作れると|思った」

「少し|甘かったな」と|私は|言った。||「まあ|いい。||今は|無一文か?」

「一ヶ月ほど|二枚の|硬貨を|こすり合わせて|子供が|できないか|試している」1

「何で|食っている?」

「保険だ。||フルワイダー・ビル2、|ウエスタンと|サンタモニカの|角に|ある|パス・ウォルグリーン3の|事務所に|机を|借りている4」
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区切り線ルールに従って翻訳します。
「しゃべり始めると|止まらないな。||本は|ここの|アパートに|あるか?」
彼は|歯を|鳴らして|茶色い|手を|振った。||余裕が|態度に|戻ってきていた。||「まさか。|倉庫だ」
「男を|使って|ここに|運ばせて、|すぐに|倉庫業者に|また|持って|いかせたのか?」
「そうだ。|ガイガーの|店から|直接|移したくないだろう?」
「賢いな」と|私は|感心したように|言った。||「今|この部屋に|まずい|ものは|あるか?」
また|心配そうな|顔に|なった。||きっぱりと|首を|振った。
「それは|よかった」と|私は|言った。||アグネスの|方を|見た。||顔の|手入れは|終わって|ぼんやりと|壁を|見つめていた。||ほとんど|聞いていない。||緊張と|衝撃が|最初の|波を|過ぎた|後の|うとうとした|表情だった。
ブロディが|用心深く|目を|向けた。||「それで?」
「写真は|どこから|手に|入れた?」
彼は|顔を|しかめた。||「聞けよ、|欲しいものは|手に|入っただろう、|しかも|ずいぶん|安く。||うまい|仕事だった。||上の|人間に|売りに|行け。||俺は|潔白だ。||写真なんて|何も|知らない。||そうだろう、|アグネス?」
ブロンドは|目を|開けて、|曖昧だが|あまり|好意的でない|目で|彼を|見た。||「半人前の|男」と|疲れた|鼻声で|言った。||「私が|引っかかるのは|いつも|そんな|男ばかり。||最初から|最後まで|本当に|賢い|男には|一度も|会ったことが|ない。||一度も」
私は|にやりと|笑った。||「頭は|ひどく|痛めたか?」
「あなたも|今まで|会った|男も|みんな|同じ」
ブロディを|見た。||タバコを|指で|はさんで|ぴくぴく|させていた。||手が|少し|震えている|ようだった。||茶色の|ポーカーフェイスは|まだ|平静だった。
「話を|合わせないと|いけない」と|私は|言った。||「たとえば、|カーメンは|ここに|いなかった。||それが|大事だ。||いなかった。||あれは|幻だ」
「ふん!」と|ブロディは|冷笑した。||「そう|言うなら、|そして|もし|——」と|言いながら|手を|手のひらを|上にして|差し出し、|指を|丸めて|親指を|人差し指と|中指に|やさしく|こすりつけた。
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- 原文は “I been shaking two nickels together for a month, trying to get them to mate.” です。
二枚の硬貨しか持っていないのに、それを増やそうとしている、つまり一文無しだというユーモラスな言い回しです。「mate」は動物が交尾して子を産むという意味で、硬貨が「子を産む」=お金が増える、という比喩です。
「一ヶ月ほど|二枚の|硬貨しか|持っていない」と訳した方がわかりやすいかもしれません。 ↩︎ - “Fulwider Building”、作中に登場する架空のビルです。ウエスタン通りとサンタモニカ通りの角にある、という設定です。後の場面でもこのビルが出てきます。
チャンドラーはロサンゼルスの実在する通りや地名を使いながら、建物の名前は架空のものにすることが多いです。
↩︎ - “Puss Walgreen”、架空の人物名です。ブロディが机を間借りしている事務所の持ち主の名前で、それ以上の説明は原文にありません。
「パス(Puss)」というあだ名からして、あまり堅気ではない人物を匂わせています。 ↩︎ - 「机を借りている」というのは、他人の事務所の一角を間借りしているだけで、正式な会社員ではありません。1930年代のロサンゼルスでは、保険外交員を装って実際は詐欺や恐喝で食っている人間が多くいました。
直前に「一ヶ月ほど無一文だ」と言っていることからも、保険の仕事はほとんど機能していないと思われます。ガイガーの商売に割り込もうとしていたのも、まともな収入がなかったからでしょう。
↩︎
