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折り畳まれた|フレンチウィンドウに|近づき、|上部の|小さな|割れた|ガラスを|見た。||カーメンの|銃の|弾が|殴りつけたように|ガラスを|砕いていた。||穴は|開いていなかった。||漆喰に|小さな|穴が|あり、|目の|鋭い|者なら|すぐに|見つけるだろう。||ドレープを|割れた|ガラスの|上に|引いて、|ポケットから|カーメンの|銃を|取り出した。||バンカーズ・スペシャル、|二十二口径、|ホローポイント弾。||真珠の|グリップで、|銃把に|はめ込まれた|小さな|丸い|銀板に|こう|刻まれていた。
「オーウェンより|カーメンへ」

彼女は|みんなを|手玉に|取っていた。
銃を|ポケットに|戻して|ブロディの|そばに|座り、|暗い|茶色の|目を|じっと|見つめた。||一分が|過ぎた。||ブロンドが|ポケットミラーで|顔を|整えた。||ブロディは|タバコを|もてあそんで|ぴくりと|言った。


「満足か?」

「今のところはな。||なぜ|老人でなく|リーガン夫人に|ゆすりを|かけたんだ?」

「老人には|一度|かけた。|六、七ヶ月前。||腹を|立てて|警察を|呼ぶかもしれないと|思って」

「リーガン夫人が|老人に|話さないと|なぜ|思った?」
彼は|タバコを|吸いながら|私の|顔から|目を|離さずに|しばらく|考えた。||やがて|言った。

「あんたは|あの女を|どれくらい|知っている?」

「二度|会っただけだ。||あの写真で|ゆすりを|かけるなんて、|相当|よく|知っていなければ|できないだろう」

「あちこち|遊び歩いている。||老人に|知られたくない|弱みの|一つや|二つ|あると|踏んだ。||五千ドルくらい|楽に|作れると|思った」

「少し|甘かったな」と|私は|言った。||「まあ|いい。||今は|無一文か?」

「一ヶ月ほど|二枚の|硬貨を|こすり合わせて|子供が|できないか|試している」1

「何で|食っている?」

「保険だ。||フルワイダー・ビル2、|ウエスタンと|サンタモニカの|角に|ある|パス・ウォルグリーン3の|事務所に|机を|借りている4」
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「しゃべり始めると|止まらないな。||本は|ここの|アパートに|あるのか?」
彼は|歯を|鳴らして|茶色い|手を|振った。||余裕が|態度に|戻ってきていた。

「まさか。||倉庫だ」

「男を|使って|ここに|運ばせて、|すぐに|倉庫業者に|また|持って|いかせたのか?」

「そうだ。||当然、|ガイガーの店から|直接|倉庫に|運ばせるわけには|いかないだろう?5」

「賢いな」と|私は|感心したように|言った。||「今|この部屋に|まずい|ものは|あるか?」
また|心配そうな|顔に|なった。||きっぱりと|首を|振った。

「それは|よかった」と|私は|言った。

アグネスの|方を|見た。||顔の|手入れは|終わって|ぼんやりと|壁を|見つめていた。||ほとんど|聞いていない。||緊張と|衝撃が|最初の|波を|過ぎた|後の|うとうとした|表情だった。
ブロディが|用心深く|目を|向けた。

「それで?」

「写真は|どこから|手に|入れた?」
彼は|顔を|しかめた。

「聞けよ。||お前は|目当てのものは|手に|入れた。||しかも|ずいぶん|安く。||美味しい|仕事だったな。||依頼人に|持っていけよ。||俺は|潔白だ。||写真のことは|知らない、|そうだろう、|アグネス?」
ブロンドは|目を|開けて、|曖昧だが|あまり|好意的でない|目で|彼を|見た。||

「半人前の|男」と|疲れた|鼻声で|言った。||「私が|引っかかるのは|いつも|そんな|男ばかり。||最初から|最後まで|本当に|賢い|男には|一度も|会ったことが|ない。||一度も」

私は|にやりと|笑った。

「頭は|ひどく|痛むか?6」

「あなたも|今まで|会った|男も|みんな|同じ」
ブロディを|見た。||タバコを|指で|はさんで|ぴくぴく|させていた。||手が|少し|震えている|ようだった。||茶色の|ポーカーフェイスは|まだ|平静だった。

「口裏を|合わせておく|必要が|ある」と|私は|言った。||「例えば、|カーメンは|ここに|いなかった。||これは|非常に|重要なことだ。||彼女は|ここに|いなかった。||お前たちが|見たのは|幻だった」

「ふん」と|ブロディは|せせら笑った。||「そう|言うなら|構わないぜ、|兄弟。||ただし‥‥」彼は|手のひらを|上に|向けて|差し出し、|指を|丸めて、|親指を|人差し指と|中指に|軽く|こすりつけた。

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私は|うなずいた。

「考えておく。||少しは|払ってもいい。||ただし|大金では|ないがな。||それより|写真は|どこで|手に|入れたんだ?」

「ある男が|くれた」7

「そうか。||どうせ|通りで|すれ違った|見知らぬ|男だろう。||もう一度|会っても|わからない。||もちろん|初めて|見る|顔だ8」
ブロディは|あくびを|した。


「そいつの|ポケットから|落ちたんだ」と|彼は|言った。

「そうか。||昨夜の|アリバイは|あるか、|ポーカーフェイス?」

「もちろん。||ここに|いた。||アグネスも|一緒だった。||そうだろう、|アグネス?」

「また|お前が|気の毒に|なってきたよ」と|私は|言った。
彼の|目が|大きく|開いて|口が|半開きに|なり、|煙草が|下唇の|上で|バランスを|保っていた9。

「お前は|自分が|賢いと|思っているが、|実に|間抜けだ」と|私は|言った。
「クエンティン10に|送られなかったとしても、|これから|先が|実に|暗くて|長くて|孤独だ」
彼の|煙草が|揺れて|チョッキに|灰を|落とした。


「自分が|いかに|賢かったか、|それだけを|考えながらな」と|私は|言った。

「出て|行け」と|彼は|突然|唸った。
「あっちへ|行け。||もう|十分|喋った。||失せろ」

「わかった」
私は|立ち上がって|背の|高い|オーク材の|机に|行き、|ポケットから|二丁の|銃を|取り出して|銃身が|平行に|なるよう|並べて|吸取紙の|上に|置いた。||長椅子の|脇の|床から|帽子を|拾って|扉に|向かった。

ブロディが|呼んだ。

「おい!」
振り返って|待った。||煙草が|バネに|乗った|人形のように|揺れていた。

「万事|うまく|いくんだろうな?」と|彼は|聞いた。

「もちろん。||ここは|自由の|国だ。||牢屋に|入りたく|なければ|入らなくて|いい。||もちろん|市民で|あればの|話だが。||市民か11?」
彼は|ただ|私を|見つめ、|煙草を|揺らしていた。||ブロンドの|アグネスも|ゆっくりと|頭を|向けて|同じ|高さで|私を|見つめた。||二人の|視線には|ほぼ|同じ|割合で|狡猾さと|疑いと|抑えた|怒りが|混じっていた。||アグネスは|突然|銀色の|爪を|頭に|伸ばして|髪を|一本|引き抜き、|苦々しく|両手の|指で|引きちぎった

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ブロディは|きつい|口調で|言った。

「警察には|行かないだろう、|兄弟。||スターンウッドの|ために|働いているならな。||あの|家族について|俺は|十分な|材料を|持っている。||写真も|口止め料も|手に入れた。||さっさと|行け」

「どっちにするんだ」と|私は|言った。
「出て行けと|言った。||出て行こうとした。||呼び止めた。||止まった。||また|出て行こうと|している。||それで|いいか?」

「俺の|罪は|何も|ないな」と|ブロディは|言った。

「殺人が|二件ほど|ある。||お前の|世界では|はした金程度の|話だろうが」
彼は|一インチほど|飛び上がったが、|一フィートほど|に|見えた。||タバコ色の|虹彩の|周りに|白目が|全部|見えた。||顔の|茶色い|肌が|ランプの|光の|中で|緑がかった|色に|なった。
ブロンドの|アグネスは|低い|動物的な|うめき声を|上げて|長椅子の|端の|クッションに|顔を|埋めた。||私は|そこに|立って|彼女の|長い|脚の|ラインを|眺めた。
ブロディは|ゆっくりと|唇を|湿らせて|言った。

「座れよ、|兄弟。||もう少し|話が|あるかもしれない。||殺人が|二件とは|どういう|意味だ?」
私は|扉に|もたれた。

「昨夜の|七時半ごろ、|どこに|いた、|ジョー?」
彼の|口が|不機嫌に|垂れ下がり、|床を|見下ろした。

「ある男を|見張っていた。||そいつは|いい商売を|していたから、|相棒を|必要としていると|思った。||ガイガーだ。||危ない|つながりが|ないか|時々|様子を|見ていた。||あれほど|堂々と|商売を|やっているからには|誰か|後ろ盾が|いるはずだと|思っていた。||でも|誰も|彼の|家には|来ない。||女だけだ」


「見張りが|甘かった」と|私は|言った。||「続けろ」


「昨夜|ガイガーの|家の下の|通りに|いた。||雨が|激しく|降っていて|クーペの|中で|じっとしていたが|何も見えなかった。||ガイガーの|家の前に|一台、|丘の|少し上に|もう一台|車が|あった。||だから|下に|いた。||そこに|大きな|ビュイックが|停まっていて、|しばらくして|近づいて|中を|のぞいた。||ヴィヴィアン・リーガンの|名義だった。12||何も|起きなかったので|立ち去った。||それだけだ」

彼は|煙草を|振った。||目が|私の|顔を|上下に|動いた。

「どうだかな」と|私は|言った。||「そのビュイックが|今|どこに|あるか|知っているか?」

「なぜ|知る必要が|ある?」

「保安官の|ガレージだ。||今朝、|リド桟橋の|沖、|十二フィートの|水中から|引き上げられた。||中に|死体が|あった。||殴られて|車を|桟橋に|向けて|スロットルを|引いたままに|されていた」
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ブロディは|激しく|息を|していた。||片足が|落ち着きなく|床を|叩いていた。

「そんな|罪を|俺は|なすりつけられるのか」と|彼は|しゃがれた|声で|言った。

「殺れない|理由は|ないだろう?||お前の|話では|このビュイックは|ガイガーの|家の裏に|あった。||リーガン夫人が|乗っていたわけでは|ない。||彼女の|運転手、|オーウェン・テイラーという|若者が|乗っていた。||彼は|ガイガーと|話を|つけるために|行った。||オーウェン・テイラーは|カーメンに|惚れていて、|ガイガーが|彼女に|やっていたことが|気に入らなかったから。||こじ開け道具と|銃で|裏から|忍び込んで、|ガイガーが|裸の|カーメンの|写真を|撮っているところを|見つけた。||それで|銃が|暴発して、|ガイガーが|死んで、|オーウェンは|逃げた。||ただし|ガイガーが|撮ったばかりの|ネガを|持って。||お前は|後を|追って|奴から|写真を|奪った。||他に|どうやって|手に入れる|方法がある?」

ブロディは|唇を|舐めた。
「そうだ」と|彼は|言った。
「だが|それで|俺が|殺ったとは|ならない。||銃声を|聞いた。||犯人が|裏の|階段を|駆け下りて|ビュイックに|飛び乗るのを|見た。||後を|追った。

||キャニオンの|下に|出て|サンセットを|西に|走った。||ビバリーヒルズを|過ぎたところで|道路を|外れて|止まった。||近づいて|警官のふりを|した。||奴は|銃を|持っていたが|人を|殺した|ショックで|動揺していた。

||俺は|奴を|殴り倒して|ポケットを|調べた。||誰だか|わかって、|写真の|プレートホルダー13を|もらった。||ただの|好奇心だった。||何が|あったのかと|考えていると、|奴は|突然|正気に|戻って|俺を|車から|突き落とした。||立ち上がったときには|もう|姿が|見えなかった。||それで|全部だ」


「どうやって|ガイガーが|撃たれたと|わかったんだ?」と|私は|ぶっきらぼうに|聞いた。
ブロディは|肩を|すくめた。

「そう|思ったが、|違うかも|しれない。||プレートを|現像して|中身を|見たとき、|そう思った。||ガイガーが|今朝|店に|来なくて|電話にも|出なかったので|ほぼ|確信した。||だから|本を|運び出して|スターンウッドから|旅費を|せしめて|しばらく|姿を消す|いい機会だと|思った」
私は|うなずいた。

「まあ|筋は|通っている。||あんたが|誰かを|殺したわけじゃない、|ということにして|置こう。||で、|ガイガーの|死体は|どこに|隠した?」
彼は|眉を|上げた。||それから|にやりとした。

「お断りだ。||よしてくれ。||あんた、|俺が|戻って|死体を|処理すると|思うのか、|警察の|車が|何台も|角を|曲がって|きているかも|しれないのに?||お断りだ」

「誰かが|死体を|隠した」と|私は|言った。
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ブロディは|肩を|すくめた。||ニヤニヤした|顔は|変わらなかった。||俺の|話など|信じていなかった。
ブロディが|まだ|半信半疑で|いる間に、|ドアの|ブザーが|また|鳴り始めた。||ブロディは|鋭く|立ち上がり、|目つきが|険しくなった。||机の上の|拳銃に|目を|やった。

「また|あの女か」|と|うなった。

「そうだとしても、|拳銃は|持っていない」|と|私は|慰めた。||「他に|友達は|いないのか?」

「一人か|どうかだ。||こんな|鬼ごっこは|もう|たくさんだ」|と|うなった。
彼は|机に|歩み寄り、|コルトを|手に取った。||銃を|腿の|脇に|下げたまま|ドアへ|向かった。||左手で|ノブを|つかんで|ひねり、|ドアを|一フィート|開けて|身を|乗り出した。||銃を|腿に|きつく|押しつけたまま。
声が|した。
「ブロディか?」
ブロディが|何か|言ったが、|聞こえなかった。||二発の|銃声は|布に|包まれたように|鈍かった。||銃は|ブロディの|体に|押しつけられていたに|違いない。||彼は|ドアに|もたれかかるように|前に|傾き、|体の|重みで|ドアが|バタンと|閉まった。||木の|扉に|沿って|ずり落ちた。||足が|後ろの|カーペットを|押しのけた。||左手が|ノブから|離れ、|腕が|ドスンと|床を|叩いた。||頭が|ドアに|挟まったまま|動かなかった。||コルトが|右手に|しがみついていた。

私は|部屋を|飛び越えるように|駆け寄り、|体を|少し|転がして|ドアを|開け、|外に|出た。||ほぼ|真向かいの|ドアから|女が|顔を|覗かせた。||顔は|恐怖で|いっぱいで、|鉤爪のような|手で|廊下の|先を|指さした。

私は|廊下を|駆け下り、|タイルの|階段を|ドタドタと|降りる|足音を|聞きながら|その|音を|追って|降りた。||ロビーの|フロアで、|玄関の|ドアが|静かに|閉まりかけており、|外の|舗道を|走る|足音が|聞こえた。||閉まりきる|前に|ドアに|たどり着き、|引き開けて|飛び出した。

革の|ジャケットを|着た|背の高い|帽子なしの|人影が、|駐車した|車の|間を|斜めに|横切って|走っていた。||人影が|振り返り、|そこから|炎が|吹いた。||重い|ハンマーが|二発、|私の|横の|漆喰の壁を|叩いた。||人影は|走り続け、|二台の|車の|間に|消えた。

男が|傍に|来て|聞いた。
「何が|あった?」

「撃ち合いだ」|と|私は|言った。
「ああ!」||野次馬は|アパートの中へ|逃げ込んだ。
私は|素早く|舗道を|歩いて|車に|乗り込み、|エンジンを|かけた。||縁石から|出て、|ゆっくりと|坂を|下った。||道の|反対側で|動き出した|車は|なかった。||足音が|聞こえた|気が|したが、|確かでは|なかった。||坂を|一ブロック半|下り、|交差点で|曲がって|バックし始めた。||かすかな|口笛の|音が|舗道を|伝って|聞こえてきた。||それから|足音が。||二重駐車して|二台の|車の|間に|滑り込み、|低く|身を|かがめた。||カーメンの|小さな|リボルバーを|ポケットから|取り出した。

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足音は|だんだん|大きくなり、|口笛は|陽気に|続いた。||やがて|革ジャケットが|見えてきた。||私は|二台の|車の|間から|踏み出して|言った。

「マッチを|一本|くれないか、|兄ちゃん」
少年は|私の|方へ|くるりと|向き直り、|右手が|さっと|ジャケットの|中へ|向かった。||丸い|街灯の|光の中で、|目が|濡れたように|光っていた。||アーモンド形の|湿った|黒い瞳、|青白い|端整な顔、|額に|二つの|頂点を|作って|低く|生えた|波打つ|黒髪。||実に|端整な|少年だった。||ガイガーの|店の|少年だった。

彼は|黙って|私を|見ていた。||右手は|ジャケットの|縁に|かかっていたが、|まだ|中には|入っていなかった。||私は|小さな|リボルバーを|腿の|脇に|下げたまま|立っていた。

「あの|女王様が|よほど|大事だったんだな」|と|私は|言った。

「うせろ」|と|少年は|静かに|言った。
駐車した|車と|歩道の|内側の|五フィートの|擁壁の|間で、|じっとしていた。
遠くから|サイレンが|長い|坂を|上がってくる|音が|響いた。||少年の|頭が|その|音の|方へ|ぴくりと|動いた。||私は|ぐっと|近づき、|銃を|ジャケットに|押しつけた。

「俺か、|それとも|警察か?」|と|私は|聞いた。
少年の|頭が|横に|少し|傾いた。||まるで|私に|頬を|張られたように。

「あんたは|誰だ?」と|言った。

「ガイガーの|友人だ」

「失せろ」

「これは|小さな|銃だ、|坊主。||へそから|撃ち込んでやる。||歩けるように|なるまで|三ヶ月は|かかるだろう。||でも|ちゃんと|治る。||そうすれば|クェンティンの|真新しい|ガス室まで|自分の足で|歩いていける」

「うせろ」|と|彼は|言った。
手が|ジャケットの|中へ|動いた。||私は|腹に|もっと|強く|押しつけた。||少年は|長く|静かに|息を|吐き、|ジャケットから|手を|引いて|脇に|だらりと|垂らした。||広い|肩が|がっくりと|落ちた。


「何が|望みだ?」|と|囁いた。
私は|ジャケットの|中に|手を|入れ、|オートマチックを|引き抜いた。

「俺の|車に|乗れ、|坊主」
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彼は|私の|傍らを|通り抜け、|私は|後ろから|ぴったり|ついた。||彼は|車に|乗り込んだ。

「ハンドルの|下に|入れ、|坊主。|お前が|運転しろ」
彼は|ハンドルの|下に|滑り込み、|私は|隣に|乗った。

「パトカーが|坂を|上がって|通り過ぎるまで|待て。||サイレンを|聞いて|端に|寄ったと|思うだろう。||それから|坂を|下って|家に|帰ろう」
私は|カーメンの|銃を|しまい、|オートマチックを|少年の|脇腹に|押しつけた。||窓から|後ろを|振り返った。||サイレンの|うなりが|今や|耳をつんざくほど|大きくなっていた。||道の|真ん中で|二つの|赤い|灯が|膨らみ、|一つに|なって、|凄まじい|騒音を|残しながら|車が|通り過ぎた。

「行くぞ」|と|私は|言った。
少年は|車を|方向転換させ、|坂を|下り始めた。

「家に|帰ろう」|と|私は|言った。||「ラヴァーン|テラスへ」
少年の|滑らかな|唇が|ひくりと|動いた。||フランクリン通りを|西へ|車を|走らせた。

「お前は|頭の|単純な|若者だな。|名前は?」

「キャロル|ランドグレン」|と|少年は|力なく|言った。

「間違った|男を|撃ったな、|キャロル。||ジョー|ブロディは|お前の|女王を|殺していない」
少年は|三つの|言葉を|口にして、|運転を|続けた。
- 原文は “I been shaking two nickels together for a month, trying to get them to mate.” です。
二枚の硬貨しか持っていないのに、それを増やそうとしている、つまり一文無しだというユーモラスな言い回しです。「mate」は動物が交尾して子を産むという意味で、硬貨が「子を産む」=お金が増える、という比喩です。
「一ヶ月ほど|二枚の|硬貨しか|持っていない」と訳した方がわかりやすいかもしれません。 ↩︎ - “Fulwider Building”、作中に登場する架空のビルです。ウエスタン通りとサンタモニカ通りの角にある、という設定です。後の場面でもこのビルが出てきます。
チャンドラーはロサンゼルスの実在する通りや地名を使いながら、建物の名前は架空のものにすることが多いです。
↩︎ - “Puss Walgreen”、架空の人物名です。ブロディが机を間借りしている事務所の持ち主の名前で、それ以上の説明は原文にありません。
「パス(Puss)」というあだ名からして、あまり堅気ではない人物を匂わせています。 ↩︎ - 「机を借りている」というのは、他人の事務所の一角を間借りしているだけで、正式な会社員ではありません。1930年代のロサンゼルスでは、保険外交員を装って実際は詐欺や恐喝で食っている人間が多くいました。
直前に「一ヶ月ほど無一文だ」と言っていることからも、保険の仕事はほとんど機能していないと思われます。ガイガーの商売に割り込もうとしていたのも、まともな収入がなかったからでしょう。
↩︎ - つまりガイガーの店から直接倉庫業者に頼んで運馬せると、誰かに見られたり証拠が残ったりする危険があるため、一旦自分のアパートに運んでからあらためて倉庫に移すという二段階の隠蔽工作をしたわけです。ブロディなりの用心深さを示しています。 ↩︎
- マーロウがアグネスを気遣って言っている言葉です。
混乱の場面でマーロウがアグネスの頭を銃で叩いたことを指しています。「頭をひどく打たなかったか?」という意味で、皮肉とユーモアを込めた一言です。
相手が自分に噛みついて脚にしがみついた相手に対して、まるで友人に軽い怪我をさせてしまったかのように気軽に聞くところがマーロウらしい乾いたユーモアです。
アグネスへの敵意はなく、ただ仕事として対処しただけというマーロウの冷静さとプロ意識を示しています。
↩︎ - 「A guy slipped it to me」
「ある男がこっそり渡した」という意味ですが、これは明らかに嘘です。「slipped」は「こっそり手渡す」という意味で、まるで偶然もらったかのような言い方をしていますが、そんなことは普通ありえません。
ブロディは写真をどこで手に入れたか絶対に言いたくないのです。それを言うと昨夜の事件への関与が深まるからです。
↩︎ - マーロウがブロディの嘘を皮肉っている場面です。
「通りですれ違っただけの男」「もう一度会っても顔もわからない」「以前見たこともない」という三つの言い訳は、当時のギャングや犯罪者が警察の尋問でよく使った常套句です。マーロウはブロディの嘘を完全に見抜きながら、あえてその嘘の中身を代わりに言ってやることで、「そんな言い訳は通じない」と暗に伝えています。
↩︎ - 「気の毒」という言葉が予想外だったため、ブロディは一瞬虚を突かれて表情が崩れました。それまで保っていたポーカーフェイスが一瞬崩れ、目が大きく開いて口が半開きになった状態です。 ↩︎
- クエンティン「dance off up in Quentin」の「Quentin」はサンクエンティン刑務所のことで、カリフォルニア州の有名な州立刑務所です。「dance off」は絞首刑になるという意味のスラングで、「Quentinに送られて絞首台で踊る」つまり「死刑になる」という意味です。
つまりマーロウは「あなたは自分が賢いと思っているが実に間抜けだ。死刑にならなかったとしても、これから先の人生は暗くて長くて孤独だ」と言っています。
↩︎ - 「市民であれば」という皮肉は、ブロディが犯罪者として非合法な商売をしていることを暗に指しています。「本当に市民らしく生きているのか?」という意味も込められています
↩︎ - ブロディはヴィヴィアン本人を見ていません。
ブロディが確認したのは車の登録証だけです。「ヴィヴィアン・リーガンの名義だった」とあるだけで、ヴィヴィアン本人が車の中にいたか、あるいは近くにいたかについては何も言っていません。
これは非常に重要な点で、後の展開に関わってきます。ヴィヴィアンのビュイックがガイガーの家の近くに停まっていたという事実は、ヴィヴィアンがその夜の事件に何らかの形で関与していたことを示唆しています。しかしブロディは本人を目撃していないため、ヴィヴィアンが実際に何をしていたかはわかりません。
マーロウもこの点をしっかり把握していて、後でヴィヴィアンに対してこの夜の行動を問いただすことになります。
↩︎ - カメラのフィルムを収納する金属製の容器です。
1930年代の大型カメラでは、現代のようなフィルムロールではなく、ガラス乾板や平らなフィルムを一枚ずつ金属製のホルダーに入れて使っていました。撮影後はそのホルダーごと取り出して暗室で現像する仕組みです。
つまりガイガーがカーメンを撮影した写真の「ネガが入った容器」がプレートホルダーです。オーウェン・テイラーがガイガーを殺した後、証拠隠滅のためにカメラからプレートホルダーを抜き取って逃げました。それをブロディが追いかけて奪ったわけです。
現代で言えばデジタルカメラのメモリーカードに相当するものです。 ↩︎



