『Brille Editor System ver.8』用の『BESファイル』を、ZIPファイルに圧縮して公開しています。(2026年4月19日現在未作成)
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痩せた|黒い目の|掛け売り宝石商が、|前日の|午後と|同じ|場所に|入口に|立っていた。||私が|入ると|同じ|含み笑いを|向けてきた。||店は|まったく|同じだった。||隅の|小さな|机に|同じ|ランプが|灯り、|同じ|灰色がかった|ブロンドが|同じ|黒い|スエード風の|ドレスで|机の|後ろから|立ち上がり、|同じ|おずおずとした|笑みを|浮かべて|近づいてきた。

「あの、|ご用件は|——」と|言いかけて|止まった。
銀色の|爪が|脇で|ぴくりと|動いた。||笑みに|緊張の|色が|にじんでいた。||笑みなどでは|なかった。||引きつった|顔だ。||本人が|笑みだと|思っているだけだ。


「また|来ましたよ」と|私は|軽い|調子で|言い、|タバコを|ひらひらと|振った。
「今日は|ミスターガイガーは?」

「あの‥‥|残念ながら。|いいえ‥‥|残念ながら。|えっと‥‥|ご用件は?」
私は|ダークグラスを|外して|左手首の|内側に|軽く|たたいた。||九十キロ近く|あって|やさ男に|見せるのは|難しいが、|精一杯|やっていた。

「初版本の|話は|ただの|口実でして」と|私は|ささやいた。
「気を|つけないと|いけないもので。||ガイガーさんが|欲しがるものを|持っています。||ずっと|探していたものを」
銀色の|爪が|小さな|黒玉ボタンの|イヤリングの|上の|ブロンドの|髪に|触れた。

「あら、|セールスマンですか。||では‥‥|明日|いらしてください。||明日は|いると|思います」

「もったいぶるのは|やめてください。||私も|同業者ですから」
彼女の|目が|細くなり、|木立の|奥の|森の|池のような|かすかな|緑色の|光に|なった。||指が|手のひらに|食い込んだ。||私を|じっと|見て、|息を|つまらせた。

「具合でも|悪いんですか?||お宅まで|伺っても|いいですよ」と|私は|じれったそうに|言った。||「時間が|ないので」

「あなた‥‥|あの|‥‥|あなた‥‥」と|喉が|つまった。

鼻から|転びそうだと|思った。||全身が|震えて、|顔が|花嫁の|パイの|皮のように|崩れた。||大きな|重荷を|持ち上げるように、|意志の|力だけで|ゆっくりと|立て直した。||笑みが|戻ってきたが、|両端が|ひどく|歪んでいた。

「いいえ」と|彼女は|言った。
「いいえ。||出張中です。||それは‥‥|無駄に|なります。||明日‥‥|いらしては|いただけませんか?」
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何か|言おうと|口を|開けた|とき、|仕切りの|扉が|少し|開いた。||ジャーキンを|着た|背の高い|黒髪の|男前の|若者が|顔を|出し、|蒼ざめた|顔で|唇を|固く|結んで、|私を|見ると|すぐに|扉を|閉めた。||だが|その前に、|後ろの|床に|新聞紙を|敷いて|本を|ゆるく|詰めた|木箱が|たくさん|あるのが|見えた。||真新しい|オーバーオールを|着た|男が|それを|いじっていた。||ガイガーの|在庫が|運び出されていた。

扉が|閉まると、|私は|もう一度|ダークグラスを|かけて|帽子に|手を|当てた。

「では|明日。||名刺を|差し上げたいところですが、|事情は|おわかりでしょう」

「え‥‥|ええ。||事情は|わかります」
彼女は|もう少し|震えて、|明るい|唇の|間から|かすかな|吸い込む|音を|立てた。
私は|店を|出て|大通りを|西へ|角まで|歩き、|店の|裏を|走る|路地へ|北に|折れた。||金属製の|格子の|側面に|文字の|ない|小さな|黒い|トラックが|ガイガーの|店の|裏に|バックで|止まっていた。||真新しい|オーバーオールの|男が|ちょうど|荷台に|箱を|積み上げていた。
||大通りに|戻り、|ガイガーの|隣の|ブロックを|歩いて|消火栓の|そばに|止まっている|タクシーを|見つけた。||顔の|若々しい|男が|ハンドルの|後ろで|ホラー雑誌を|読んでいた。||身を|乗り出して|一ドル札を|見せた。

「尾行|頼めるか?」
男は|私を|見た。

||「刑事?」

「私立だ」
にやりと|笑った。|

「お安い|御用」

ドライバー|は雑誌を|バックミラーに|かぶせ、|私は|タクシーに|乗った。||ブロックを|回り、|ガイガーの|路地の|向かい、|別の|消火栓の|そばに|止まった。
オーバーオールの|男が|格子の|扉を|閉めて|荷台を|掛け金で|止め、|ハンドルの|後ろに|乗り込んだ|ときには、|箱は|十数個に|なっていた。

「追え」と|私は|運転手に|言った。
オーバーオールの|男は|エンジンを|吹かし、|路地の|両側を|ちらりと|見て|逆方向に|急発進した。||路地を|左に|出た。||こちらも|同じ|方向に|出た。||フランクリン通りを|東に|曲がる|トラックが|見えたので、|もう少し|詰めるよう|運転手に|言った。||できなかった|か、|しなかった。||フランクリンに|出たとき、|トラックは|二ブロック|先に|見えた。||ヴァイン通りまで、|ヴァインを|渡って、|ウエスタンまで|ずっと|見えていた。||ウエスタンを|過ぎてから|二度|見えた。||交通量が|多く、|顔の|若い|運転手は|離れすぎて|尾行していた。||遠慮なく|そう|言っている|うちに、|はるか|前方の|トラックが|また|北に|曲がった。||曲がった|通りは|ブリタニー・プレイス1と|いう|名だった。||ブリタニー・プレイスに|着いたとき、|トラックは|消えていた。

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顔の|若い|運転手が|仕切り越しに|慰めるような|声を|かけながら、|時速|六キロで|茂みの|陰に|トラックを|探しながら|丘を|上った。||二ブロック|上ったところで|ブリタニー・プレイスが|東に|曲がり、|ランドール・プレイスと|三角形の|土地で|合流していた。||そこに|白い|アパートが|あり、|正面は|ランドール・プレイス2に、|地下の|ガレージは|ブリタニーに|面していた。||その前を|通り過ぎようとして、|若い|運転手が|トラックは|遠くに|ないはずだと|言った|とき、|ガレージの|アーチ型の|入口から|奥の|薄暗がりに|トラックが|後ろ扉を|また|開けて|止まっているのが|見えた。

アパートの|正面に|回り、|私は|車を|降りた。||ロビーには|誰も|おらず、|交換台も|なかった。||木製の|受付台が|金色の|郵便受けの|パネルの|横の|壁に|寄せて|置いてあった。||名前を|見た。||ジョセフ・ブロディという|男が|405号室に|入っていた。||ジョー・ブロディという|男が|スターンウッド将軍から|五千ドルを|受け取り、|カーメンと|遊ぶのを|やめて|別の|女を|探すよう|言われていた。||同一人物かも|しれない。||まず|間違いないと|思った。

壁の|角を|曲がって|タイル敷きの|階段と|自動|エレベーターの|昇降路の|足元に|出た。||エレベーターの|天井は|床と|同じ|高さだった。||昇降路の|隣に|「ガレージ」と|書かれた|扉が|あった。||開けて|地下へ|狭い|階段を|下りた。||自動|エレベーターは|開いたまま|止まっており、|真新しい|オーバーオールの|男が|重い|箱を|積み込みながら|苦しそうに|うなっていた。||男の|横に|立って|タバコに|火を|つけて|眺めた。||男は|見られるのが|気に|入らなかった。
しばらくして|私は|言った。|

「重さに|気を|つけろよ。||あのエレベーター、|半トンしか|耐えられない。||荷物は|どこへ?」

「ブロディ、|四〇五号室」と|彼は|言った。
||「管理人か?」

「ああ。|なかなか|いい|荷物だな」
彼は|白い|縁取りの|ある|青ざめた|目で|私を|にらんだ。||

「本だよ」と|どなった。||「一箱|軽く|四十五キロ、|おまけに|俺の|腰は|三十五キロしか|持てない」

「重さに|気を|つけろよ」と|私は|言った。
男は|六箱|積んで|エレベーターに|乗り込み、|扉を|閉めた。
||私は|階段を|上がって|ロビーに|戻り、|通りに|出て、|タクシーで|また|ダウンタウンの|事務所の|ビルへ|戻った。||顔の|若い|運転手に|やり過ぎの|チップを|渡したら、|使い古した|名刺を|くれた。||珍しく|それを|エレベーター|バンクの|横の|砂入りの|マジョリカ焼きの|壷に|捨てなかった。
七階の|裏側に|一部屋半|借りていた。||半分の|方は|待合室に|仕切られた|事務室で、|私の|部屋は|ドアに|名前だけが|書いてあり、|それも|待合室の|扉だけだった。||客が|来て|待てる|ように|いつも|鍵を|かけずに|おいた。
客が|いた。


