『怪盗レトン第五章』に、これらの人物の名前が出てくる。何者か?
Maigret agissait comme les autres. Comme les autres aussi il usait des outils extraordinaires que les Bertillon, les Reiss, les Locard ont mis entre les mains de la police et qui constituent une véritable science.
Mais il cherchait, attendait, guettait surtout la fissure. Le moment, autrement dit, où, derrière le joueur, apparaît l’homme.
メグレも|他の者たちと|同じように|行動していた。||また同じように|<ベルトン>や|<レイス>や|<ロカール>が|警察の手に|与えた|あの|驚くべき|道具を|使っていた。||それらは|まさに|一つの|学問を|成すものである。
だが彼は|探していた。||待ち構えていた。||とりわけ|その「裂け目」を|見張っていた。||つまり|言い換えれば|勝負師の|背後に|人間が|姿を|現す|その瞬間だ。
■ ベルトン(Alphonse Bertillon)



- フランスの犯罪学者
- 身体測定法(ベルティヨン法)を考案
- 身長・腕の長さ・頭のサイズなどで個人を識別
さらに重要なのは、 犯罪者の写真(マグショット)を体系化したこと
「見た目で犯人を特定する」技術の元祖
■ レイス(Rodolphe Archibald Reiss)




- スイスの犯罪学者
- 科学捜査(forensics)を体系化した人
特に
- 現場検証
- 写真記録
- 弾道・痕跡分析
「現場の証拠から犯人を追う」方向を確立
■ ロカール(Edmond Locard)



- フランスの犯罪学者
- ロカールの交換原理:「接触すれば、必ず何かが残る」
つまり
- 犯人は必ず何かを残す(髪、繊維、土)
- 何かを持ち去る
👉現代のDNA捜査の発想の原点と言える
■ メグレの刑事像
- ベルトン → 身体識別
- レイス → 科学的現場分析
- ロカール → 痕跡理論
これ全部まとめて 「警察はすでに科学になっている」とメグレは理解しているのです。
怪盗レトんの中でも、この科学捜査は全て使われます。だから
👉 メグレは特別な直感だけの人間ではない
👉 当時最先端の「科学捜査」をちゃんと使う警官でもある
しかし、ここでメグレはどうするかというと──
La situation était ridicule. Le commissaire savait qu’il n’y avait pas dix chances sur cent que sa faction servit à quelque chose. Et pourtant il tint bon, à cause d’une impression vague, qu’il n’eût même pas pu appeler un pressentiment.
C’était plutôt une théorie à lui, qu’il n’avait d’ailleurs jamais développée et qui restait imprécise dans son esprit, ce qu’il nommait à part lui la théorie de la fissure.
状況は|滑稽なものだった。||警部は|自分の張り込みが役に立つ可能性は|十に一つもないと分かっていた。||それでも彼は踏みとどまった。||はっきりと予感と呼べるものですらない|ぼんやりとした印象のためにだった。||それはむしろ|彼自身のひとつの理論だった。
もっとも彼はそれを一度もきちんと展開したことはなく
その内容も|彼の頭の中では曖昧なままだった。||彼がひそかに|「裂け目の理論」と呼んでいるものだった。
自分でも意味がないと思われる雨の中の張り込みやっています。
つまり、この「科学」から一歩外に出て、自分の「裂け目の理論」といういわば「刑事の勘」で動いていると言えるでしょう。
このメグレの理論には、おそらく「犯罪はなぜ起こるのか?」というある種の心理学的な側面からのアプローチだと思います。つまり科学的な証拠(ポワロのいう外からの推理)より、人間の内面、つまり犯罪を起こす「動機」から事件の核心に近づく手法をとっているように思えます。
そこが、ホームズやポワロとは違う、このメグレ警部という人物の面白さです。
