ジョルジュ・シムノンの『死んだガレ氏』
事件の結末は、ガレ氏本人による「他殺に見せかけた自殺」でした。被害者の動機は保険金の支払いだけでなく、もっと自分の人生における複雑な思いがあったと思います。
メグレシリーズは、事件のトリック、犯罪の動機、意外な結末だけでなく、犯人や被害者それ関わる人々の色々な思いが背景にあるのが他の推理小説とは違うところだと考えます。
さて、この『死んだガレ氏』の結末ですが、メグレではなく、クリスティの「エルキュール・ポワロ」、日本が誇る名探偵「杉下右京」だったら、それぞれ、どういう結末になったのか?
個人的に勝手に思い描いてみました。
メグレ警部の場合
まず、本家メグレ警部。原文訳そのままです。
そして|少し|後、|肩を|斜めに|傾けたまま|上司に|言った。
「空振りでした。||この|厄介な|小さな|事件は|お蔵入りに|するしか|ありません」
しかし|心の中では|こう|計算していた。
「医者は|あと|三年は|生きられないと|言っていた。||保険会社が|六万フラン|損をしたと|しても、|会社の|資本金は|九千万フランだ」
つまり、事件の真相は「自殺」であって、本来であれば保険金は降りないことがわかっています。しかし、上司への報告は「迷宮入り」で、他殺として処理します。
しかし、メグレは真実を報告しないこといよる、良心の呵責があるようです。
それは自殺した死者の計画に乗ることによって、「保険会社に損害を与えることなる」ということです。
しかし、最後に自分に都合のいい、言い訳を思い巡らせています。
ガレ氏は自殺しなくても、3年後には病気で無くなって保険会社は保険金を支払うことになる。保険会社は、それまでに受け取る予定だった3年間分の賭け金「6万フラン」を取り損ねるだけの損害だ。
保険会社の資本金「9千万フラン」に比べれば、大した金額ではないと!!
さて、他の名探偵は、被害者が自殺だと推理した場合、どのよう事件を解決すると思いますか?
エルキュール・ポワロの場合
メグレ警部とは違い、自分の推理の過程を関係者の前で自慢げに語り、ガレ氏は「自殺」であって、罰すべき犯人は誰もいないという事実を披露すると思います。
ポワロは「このエルキュール・ポワロを騙すことなどできない!」という自負と劇場があるからです。
ただ、ポワロであれば、死者の意思に寄り添って、上手に保険金が支払われるような理論を組み立てるのことができるのではないでしょうか。
例えば、真相は別にして、被害者本人はセットした拳銃とナイフで自殺を試みているが、実際は「事故死」だった、または致命傷は病気による「自然死」というような論理的にあり得る事実です。
関係者全員が事件を実際にその場で見ていない以上、エルキュール・ポワロにかかれば、江戸川コナンの「真実はいつも一つ!!」とは限らないでしょうから(笑
もちろん、保険金ですから法的な問題はありますが、ポワロであれば、持ち前の「灰色の脳細胞」を使って、そういった情のある面も見せてくれるのではと期待してしまいます。
杉下右京の場合
ドラマを見ている限り、真実を誤魔化すようなことはせず、例えばこういうセリフで正義を貫くのではないでしょうか?

ここで、僕が真実を語らなかったらどうなりますか? 保険会社が契約とは異なる保険金を支払うことになるのですよ。保険の加入者全員から集めた貴重な掛け金を騙し取るということです。それは正義とは言えません!
いかがでしょう。
勝手な妄想ですが、個人的にはポワロの解決は是非見てみたいものです。


