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第4章(ページ21)

ルーシー・アイルズバロウという|名前は、|すでに|ある方面では|広く|知られて|いた。
ルーシー・アイルズバロウは|三十二歳。||オックスフォード大学の|数学科を|首席で|卒業し、|優れた|頭脳の|持ち主として|認められており、|輝かしい|学者の|道を|歩む|ものと|誰もが|思って|いた。
しかし|ルーシー・アイルズバロウは、|学問的な|才能の|ほかに、|しっかりとした|現実的な|常識も|持ち合わせて|いた。||学問の|道が|いかに|報われない|ものかは|一目瞭然だった。||教えることには|まったく|興味が|なく、|むしろ|自分より|頭の|よくない|人たちと|付き合うことを|楽しんだ。||つまり、|あらゆる|種類の|人が|好きで、|しかも|いつも|同じ|人と|いるのは|嫌いだった。||そして|率直に|言って、|お金が|好きだった。||お金を|稼ぐには|不足して|いるものを|利用するしかない。
ルーシーが|目をつけたのは、|深刻に|不足して|いるもの、|つまり|熟練した|家事労働者だった。||友人や|同僚を|あっと|言わせながら、|ルーシーは|家事の|世界へと|飛び込んだ。
成功は|たちまちで|確実だった。||数年が|たった|今では、|その|名前は|イギリス中に|知られて|いた。||妻が|夫に|うれしそうに|言うことが|よくあった。|「大丈夫よ。||一緒に|アメリカへ|行けるわ。||ルーシー・アイルズバロウに|頼んだから!」
ルーシーが|家に|来ると、|心配事も|不安も|大変な|仕事も|すべて|消えてしまった。||ルーシーは|何もかも|こなし、|何もかも|目を|配り、|何もかも|手配した。||どんな|分野でも|信じられないほど|有能だった。||年老いた|親の|世話を|し、|小さな|子どもたちを|引き受け、|病人を|看護し、|神がかりの|料理を|作り、|古株の|使用人が|いれば|うまく|やり、|無理な|人とも|うまく|折り合い、|酒飲みを|なだめ、|犬の|扱いも|抜群だった。||何を|するのも|嫌がらなかった。||台所の|床を|磨き、|庭を|掘り、|犬の|後始末を|し、|石炭まで|運んだ。
ルールの|一つは、|長期の|契約を|受けないこと。||通常は|二週間、|例外的な|事情でも|せいぜい|一か月だった。
その|二週間、|依頼人は|大金を|払わなければ|ならない。||しかし|その|二週間、|依頼人の|生活は|天国だった。||完全に|くつろいで、|外国へ|行っても、|家に|いても、|好きに|過ごせた。||ルーシー・アイルズバロウの|有能な|手に|委ねれば、|すべてが|うまくいく|という|安心感が|あった。
当然、|依頼は|引きも|切らなかった。||望めば|三年先まで|予約を|入れられた。||常駐で|来て|ほしいと|大金で|引き止めようとした|人も|いた。||しかし|ルーシーは|常駐になる|つもりは|なかったし、|六か月|より|先の|予約も|受けなかった。||そして|殺到する|依頼人たちには|内緒で、|いつも|いくらかの|空き時間を|確保していた。||それが|あれば、|短い|贅沢な|休暇を|取ったり|できた。||普段は|ほとんど|お金を|使わず|高給を|もらっていたので。

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あるいは|気に|入った|依頼が|あれば、|それが|仕事の|性質の|ためでも、|「人が|好きだから」という|理由でも、|急な|仕事を|引き受けることもあった。||今や|声高に|求める|依頼人の|中から|自由に|選べる|立場に|なったので、|個人的な|好みを|大いに|優先させた。||単なる|お金持ちでは|ルーシー・アイルズバロウの|サービスは|買えない。||選ぶのは|彼女で、|実際に|選んでいた。||彼女は|自分の|仕事を|とても|楽しんでおり、|絶えず|楽しみを|見つけていた。
ルーシー・アイルズバロウは|ミス・マープルからの|手紙を|何度も|読み返した。||ミス・マープルとの|知り合いは|二年前で、|小説家の|レイモンド・ウェストが|肺炎から|回復中の|老いた|叔母の|世話を|してほしいと|ルーシーに|頼んだのが|きっかけだった。||ルーシーは|引き受けて|セント・メアリー・ミードへ|向かった。
ルーシーは|ミス・マープルが|大好きに|なった。||一方|ミス・マープルは、|寝室の|窓から|ルーシー・アイルズバロウが|スイートピーの|ために|きちんとした|方法で|溝を|掘っているのを|見て、|枕に|もたれて|ほっと|ため息を|ついた。||ルーシーが|運んで|きてくれる|美味しそうな|食事を|食べ、|年老いた|気難しい|女中が|「ミス・アイルズバロウに|かぎ針編みの|模様を|教えて|あげたのよ。||知らなかったみたいで。||ちゃんと|礼を|言っていたわ」|と|話して|くれるのを|楽しく|聞いた。||そして|主治医を|驚かせるほど|みるみる|回復した。
ミス・マープルは|ある|仕事を|引き受けてもらえないかと|手紙を|書いた。||少し|変わった|仕事だが。||詳しく|話し合う|ために|会ってもらえないかと。
ルーシー・アイルズバロウは|少し|考えた。||実は|予約は|いっぱいだった。||しかし|「変わった」という|言葉と、|ミス・マープルの|人柄の|記憶が|決め手と|なり、|すぐに|電話を|かけた。||今は|仕事中で|セント・メアリー・ミードには|行けないが、|翌日の|午後|二時から|四時まで|空いているので|ロンドンで|会えると|伝えた。||自分の|クラブを|提案した。||地味な|クラブだが、|いつも|人の|いない|薄暗い|小部屋が|いくつか|あるのが|利点だった。
ミス・マープルは|承諾し、|翌日|二人は|会った。||挨拶を|交わしてから、|ルーシーは|客を|一番|暗い|小部屋へ|案内して|言った。|「今は|少し|予約が|いっぱいですが、|何を|お望みか|聞かせていただけますか?」
「実は|簡単な|ことなのよ」|とミス・マープルは|言った。||「変わっているけど|簡単。||遺体を|見つけてほしいの」
一瞬、|ルーシーは|ミス・マープルが|頭の|おかしい|人なのかと|思ったが、|すぐに|その|考えを|打ち消した。||ミス・マープルは|まったく|正気だ。||言葉通りの|意味で|言っているのだ。
「どんな|遺体ですか?」|とルーシー・アイルズバロウは|見事に|落ち着いた|声で|聞いた。

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「女性の|遺体よ」|とミス・マープルは|言った。||「殺された、|正確には|絞め殺された|女性の|遺体。||列車の|中で」
ルーシーは|眉を|少し|上げた。
「それは|確かに|変わっていますね。||詳しく|聞かせてください」
ミス・マープルは|話した。||ルーシー・アイルズバロウは|口を|挟まずに|注意深く|聞いた。
話し終えると|ルーシーは|言った。|「すべては|お友達が|何を|見たか、|あるいは|見たと|思ったかに|かかっていますね?」
文を|途中で|止めて|問いかけた。
「エルスぺス・マギリカディは|思い込みで|ものを|言う|人では|ないの」|とミス・マープルは|言った。||「だから|彼女の|言葉を|信じているのよ。||ドロシー・カートライトなら|話は|別だけど。||ドロシーは|いつも|面白い|話を|するし、|自分でも|信じていることが|多いし、|たいてい|多少の|根拠は|あるけれど、|それだけのことよ。||でも|エルスぺスは|普通でない|ことや|変わった|ことが|起きたとは|なかなか|信じられない|たちの|人なの。||花崗岩のように|暗示に|かかりにくい|人よ」
「わかりました」|とルーシーは|考えながら|言った。||「では|全部|本当のこととして|話を|進めましょう。||私は|何を|すれば|いいのですか?」
「あなたの|ことを|とても|頼もしく|思っているの」|とミス・マープルは|言った。||「でも|今の|私には|あちこち|動き回る|体力が|ないのよ」
「調査を|してほしい|ということですか?||そういった|ことを?||でも|警察が|すでに|やって|いるのでは?||それとも|警察が|怠けていると|お思いですか?」
「いいえ」|とミス・マープルは|言った。||「警察は|怠けていないわ。||ただ|私には|遺体について|ある|考えが|あって。||遺体は|どこかに|あるはず。||列車の|中で|見つからなかったなら、|列車から|押し出されたか|投げ捨てられたはず。||でも|線路上では|発見されていない。||それで|同じ|ルートで|乗ってみて、|遺体が|線路上には|落ちずに|投げ出せる|場所が|あるかを|確かめたの。||あったのよ。||ブラックハンプトンに|入る|手前で|線路が|大きく|カーブして、|高い|築堤の|縁に|なっている|ところが|あるの。||そこで|列車が|傾いた|ときに|遺体を|投げ出せば、|築堤の|下まで|落ちると|思う|わ」
「でも|そこでも|見つかるの|では?」
「ええ。||だから|誰かが|運び去った|はずよ。||その|話は|後で|するわ。||場所は|この|地図を|見て」
ルーシーは|ミス・マープルの|指が|示す|場所を|じっと|見た。
「今は|ブラックハンプトンの|郊外に|なっているけど」|とミス・マープルは|言った。||「もともとは|広大な|公園と|庭を|持つ|カントリー・ハウスで、|今も|そのまま|残っていて、|周りを|住宅地と|小さな|郊外の|家々に|囲まれているの。||ラザフォード・ホールという|名前よ。||1884年に|クラッケンソープという|とても|裕福な|実業家が|建てたの。

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「クラッケンソープの|息子が、|老齢で|今も|そこに|住んでいて、|娘も|一緒だと|聞いています。||鉄道が|敷地の|半分ほどを|取り囲んでいるの」
「私に|してほしい|ことは|何ですか?」
ミス・マープルは|すぐに|答えた。
「そこに|住み込みで|働いてほしいの。||有能な|家事の|手は|どこでも|引っ張りだこだから、|難しくは|ないと|思う|わ」
「ええ、|難しくは|ないと|思います」
「クラッケンソープ氏は|地元では|かなりの|けちと|言われているみたい。||だから|安い|給料で|引き受けてくれるなら、|差額は|私が|補填するわ。||今の|相場より|少し|高めに|なると|思うけど」
「危険な|仕事だから|ですか?」
「難しさというより|危険性の|ことよ。||危険かもしれないの。||ちゃんと|伝えておかなければと|思って」
「危険ということで|気が|引けるか|どうか」|とルーシーは|考えながら|言った。||「わからないわ」
「そうでしょうと|思っていたわ」|とミス・マープルは|言った。||「あなたは|そういう|人じゃ|ないもの」
「むしろ|危険が|魅力に|なるとも|思っていたでしょう?||これまでの|仕事で|危険な|目に|遭ったことは|ほとんど|なかったから。||でも|本当に|危険だと|思っているの?」
「誰かが」|とミス・マープルは|言った。|「とても|うまく|犯罪を|やり遂げたの。||騒ぎも|なく、|疑いも|ない。||二人の|年配の|女性が|ちょっと|信じがたい|話を|して、|警察が|調べたが|何も|出なかった。||だから|すべては|穏やかで|静かなまま。||その|誰かは|この|件が|掘り返されるのを|好まないと|思う。||特に|あなたが|成功した|場合は」
「具体的に|何を|探せば|いいのですか?」
「築堤に|沿った|何らかの|痕跡。||衣服の|切れ端とか、|折れた|茂みとか、|そういったもの」

ルーシーは|うなずいた。
「それから?」
「私は|すぐ|近くに|いるつもりよ」|とミス・マープルは|言った。||「私の|昔の|女中で|忠実な|フローレンスが|ブラックハンプトンに|住んでいるの。||長年|年老いた|両親の|世話を|してきたけど、|二人とも|亡くなって、|今は|下宿人を|とっているの。||とても|ちゃんとした|人たちばかりで。||私の|ための|部屋も|用意してくれると|言ってくれて。||そばに|いたいから。||近所に|年老いた|叔母が|いるので、|その|近くで|働きたいと|言って|ほしいの||それと、|よく|会いに|行けるよう|相応の|空き時間を|条件に|してほしいの」

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ルーシーは|またうなずいた。
「明後日から|タオルミーナへ|行く|予定だったんですが」|と|彼女は|言った。||「休暇は|後でも|いい。||でも|三週間しか|約束できません。||その後は|予約が|入っているので」
「三週間あれば|十分よ」|とミス・マープルは|言った。||「三週間で|何も|わからなければ、|全部|ただの|空騒ぎと|して|あきらめましょう」
ミス・マープルが|帰ると、|ルーシーは|少し|考えてから|ブラックハンプトンの|職業紹介所に|電話を|かけた。||所長とは|よく|知った|仲だった。||「叔母」の|そばで|働きたいと|伝えた。||少し|苦労しながらも|うまく|断って、|いくつかの|より|条件の|よい|職場を|断ったところで、|ラザフォード・ホールの|話が|出た。
「それが|ちょうど|いいわ」|とルーシーは|きっぱりと|言った。
紹介所は|クラッケンソープ嬢に|電話を|し、|クラッケンソープ嬢は|ルーシーに|電話を|した。||二日後、|ルーシーは|ロンドンを|出て|ラザフォード・ホールへ|向かった。

自分の|小さな|車を|運転して、|ルーシー・アイルズバロウは|堂々たる|大きな|鉄の|門を|通り抜けた。||門のすぐ|内側に|もともと|小さな|門番小屋が|あったが、|今は|すっかり|荒れ果てていた。||戦争の|被害なのか|ただの|放置なのか、|判断が|つかなかった。||長く|曲がりくねった|私道が|大きな|暗い|シャクナゲの|茂みを|縫って|屋敷まで|続いていた。

屋敷を|見て、|ルーシーは|思わず|息を|のんだ。||ミニチュアの|ウィンザー城の|ような|建物だった。||玄関前の|石段は|手入れが|必要で、|砂利の|広場は|放置された|雑草で|緑に|なっていた。
古風な|錬鉄製の|呼び鈴を|引くと、|けたたましい|音が|屋敷の|中に|響き渡った。||エプロンで|手を|拭いながら|だらしない|身なりの|女が|扉を|開け、|疑わしそうに|ルーシーを|見た。
「お待ちしていましたね。||ミス・なんとかバロウとか|おっしゃって|いました」
「そうです」|とルーシーは|言った。
屋敷の|中は|ひどく|寒かった。
案内の|女は|暗い|廊下を|進んで|右側の|扉を|開けた。||意外にも、|そこは|なかなか|感じの|よい|居間で、|本が|並び|サラサ|模様の|椅子が|置かれていた。
「呼んで|きます」|と|女は|言い、|ルーシーに|ひどく|不満そうな|目を|向けてから|扉を|閉めて|出て|行った。

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数分後、|扉が|また|開いた。||最初の|瞬間から、|ルーシーは|エマ・クラッケンソープが|気に|入った。
中年の|女性で、|特に|目立つ|ところは|なく、|美人でも|不美人でも|なかった。||ツイードと|セーターという|実用的な|服装で、|黒髪を|額から|後ろへ|なでつけ、|落ち着いた|ヘーゼル色の|目と|とても|感じの|よい|声の|持ち主だった。
「ミス・アイルズバロウ?」|と|彼女は|言って|手を|差し出した。
それから|少し|迷った|様子で|言った。|「この|仕事が|本当に|あなたの|お探しに|なっているものかどうか。||監督する|家政婦さんでは|なく、|実際に|仕事を|してくれる|人が|必要なのですが」
ルーシーは|それが|ほとんどの|家庭で|必要な|ことだと|言った。
エマ・クラッケンソープは|申し訳なさそうに|言った。|「軽い|お掃除だけで|十分と|お考えの|方が|多くて。||でも|軽い|お掃除は|私自身で|できますから」
「よく|わかります」|とルーシーは|言った。||「料理と|後片付け、|家事全般と|ボイラーの|管理ですね。||大丈夫です。||それが|私の|仕事ですから。||労働は|少しも|苦に|なりません」
「大きな|屋敷で、|不便な|ところも|あります。||もちろん|住んでいるのは|一部分だけで、|父と|私の|二人です。||父は|少し|体が|弱くて。||とても|静かに|暮らしています。||アガ・ストーブが|あります。||兄弟が|何人か|いますが、|あまり|来ません。||掃除に|来る|女性が|二人いて、|午前中は|キダー夫人、|週に|三日は|ハート夫人が|真鍮磨きや|そういった|ことを|してくれます。||お車は|お持ちですか?」
「はい。||置き場が|なければ|外でも|構いません。||いつもそうしていますので」
「馬小屋が|たくさん|ありますから|問題ありません」
少し|考えてから|彼女は|言った。|「アイルズバロウという|珍しい|お名前ですね。||ルーシー・アイルズバロウという|方の|話を|友人から|聞いたことが|あって。||ケネディさんご夫妻から?」
「ええ。||ケネディ夫人が|赤ちゃんを|産む|とき|北デヴォンで|お世話を|しました」
エマ・クラッケンソープは|ほほ笑んだ。
「あなたが|いてくれた|ときほど|すばらしかった|ことは|ない、って|おっしゃっていたわ。||でも|とても|お高いと|聞いて|いました。||私が|申し上げた|お給料は」
「大丈夫です」|とルーシーは|言った。||「ブラックハンプトンの|近くに|いたい|理由が|あって。||重体の|老いた|叔母が|いて、|近くに|いたいのです。||だから|お給料は|二の次です。||かといって|何も|しないわけには|いきません。||毎日|少し|時間を|いただけますか?」
「もちろんです。||毎日|午後六時まで|空けていただいて|構いません」

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「それは|ちょうど|よかった」
クラッケンソープ嬢は|少し|ためらってから|言った。|「父が|年を|とっていて、|少し|難しいときが|あって。||倹約に|とても|うるさくて、|ときどき|人を|傷つける|ことを|言うことが|あるの。||嫌な|思いを|させたくないので」
ルーシーは|すばやく|遮って|言った。|「年配の|方には|慣れていますから、|どんな|方とも|うまく|やって|いけます」
エマ・クラッケンソープは|ほっとした|様子だった。
「お父さんが|やっかいなのね」|とルーシーは|心の|中で|思った。||「きっと|相当な|くせ者だわ」

大きくて|暗い|寝室に|通された。||小さな|電気ヒーターが|ほとんど|役に|立たずに|頑張っていた。||屋敷の|中を|案内されたが、|巨大で|不便な|邸宅だった。||廊下の|扉の|前を|通りかかると、|怒鳴り声が|した。|「エマか?|新しい|娘も|一緒か?||連れて|こい。||見て|やる」
エマは|顔を|赤らめ、|申し訳なさそうに|ルーシーを|見た。
二人は|部屋に|入った。||深い|ビロードで|飾られ、|細い|窓から|ほとんど|光が|入らず、|重厚な|マホガニーの|ヴィクトリア朝の|家具が|並んでいた。
クラッケンソープ|老人は|病人用の|椅子に|横たわり、|銀の|柄の|ステッキを|脇に|置いていた。||大柄で|やつれた|体つきで、|肉が|だぶついていた。||ブルドッグに|似た|顔で、|顎が|突き出ていた。||白髪の|まじった|濃い|黒髪と、|疑い深そうな|小さな|目を|していた。
「こちらへ|来なさい、|お嬢さん」
ルーシーは|落ち着いた|笑顔で|進み出た。
「最初に|はっきり|言っておく。||大きな|屋敷に|住んでいるからといって|金持ちだと|思うな。||金持ちじゃ|ない。||質素に|暮らしている。||いいか?||質素に!||贅沢な|考えを|持ち込むな。||タラだって|ターボットと|同じくらい|うまい|魚だ。||忘れるな。||無駄は|許さない。||ここに|住んでいるのは|父親が|建てた|家だから|だ。||死んだ後は|売りたければ|売れば|いい。||そう|したいだろうな。||家族への|思い|やりなど|ない。||この|家は|しっかり|建てられている。||頑丈で、|周りに|自分の|土地が|ある。||人目に|つかずに|済む。||建築用地として|売れば|高く|なるだろうが、|生きている|うちは|そうさせない。||足から|先に|担ぎ出されるまで、|ここを|出て|行く|気は|ない」
老人は|ルーシーを|にらみつけた。
「お屋敷は|あなたの|城ですね」|とルーシーは|言った。
「笑っているのか?」
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「まさか。||町に|囲まれながら|本物の|田舎屋敷が|あるなんて、|とても|すてきだと|思います」
「そうだろう。||ここから|ほかの|家は|見えないだろう?||牛の|いる|牧草地が|あって、|ブラックハンプトンの|真ん中に|いるのに。||風向きに|よっては|車の|音が|聞こえるが、|それ以外は|まだ|田舎だ」
老人は|間も|なく|口調も|変えずに|娘に|言った。|「あのばかな|医者に|電話しろ。||あの|薬は|まったく|効かないと|言え」
ルーシーと|エマは|退いた。||老人は|後ろから|怒鳴った。|「それと|あの|鼻を|すする|女を|ここに|入れるな。||私の|本を|みんな|並べ替えて|しまいやがった」
ルーシーは|聞いた。|「クラッケンソープ氏は|長く|病気なの?」
エマは|少し|言葉を|濁して|言った。|「ええ、|もう|何年も。||こちらが|台所です」
台所は|広大だった。||大きな|レンジが|冷たく|使われずに|置かれており、|その|傍らに|アガ・ストーブが|控えめに|立っていた。
ルーシーは|食事の|時間を|聞いて|食料庫を|調べた。||それから|エマ・クラッケンソープに|明るく|言った。|「もう|全部|わかりました。||ご心配なく。||あとは|お任せください」
その夜、|エマ・クラッケンソープは|寝室へ|上がりながら|ほっと|ため息を|ついた。
「ケネディさんたちの|言った|通りだわ」|と|彼女は|言った。|「すばらしい|方ね」
翌朝|六時、|ルーシーは|起き出した。||屋敷の|掃除を|し、|野菜を|用意し、|朝食を|作って|出した。||キダー夫人と|一緒に|ベッドを|整えて、|十一時に|台所で|濃い|お茶と|ビスケットを|一緒に|食べた。||ルーシーが|「気取りが|なかった」ことと、|お茶が|濃くて|甘かった|ことで|打ち解けた|キダー夫人は|おしゃべりを|始めた。
小柄で|細身の|女性で、|目が|鋭く|口が|固そうだった。
「あの|お爺さんは|本物の|けちです。||エマお嬢さんも|よく|我慢できる|もんだわ!||でも|踏みにじられて|いるわけでも|なくて、|いざと|なったら|ちゃんと|自分を|守りますよ。||お坊ちゃんたちが|来ると|きちんとした|食事を|出せるように|気を|使います」
「お坊ちゃんたち?」
「ええ、|大きな|ご家族でして。||長男の|エドマンド|様は|戦争で|亡くなって。||それから|セドリック|様は|外国に|住んでいて、|独身です。||外国で|絵を|描いています。||ハロルド|様は|シティで|働いていて|ロンドン|住まい、|伯爵の|娘さんと|結婚されています。||アルフレッド|様は|感じの|よい|方だけど|ちょっと|問題があって、|一度|二度|厄介な|ことが|あって。||それと|エディス|様の|ご主人の|ブライアン|様、|とても|いい|方で、|エディス|様は|何年か|前に|亡くなられたけど、|ずっと|ご家族の|一人で|いらして、|それから|エディス|様の|お坊ちゃまの|アレグザンダーが|学校に|通っていて、|休暇の|一部は|いつも|ここで|過ごします。||エマお嬢さんが|とても|可愛がっていらして」

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ルーシーは|これらの|情報を|しっかりと|頭に|入れながら、|キダー夫人の|お茶を|注ぎ続けた。
やがて|キダー夫人は|名残惜しそうに|立ち上がった。
「今朝は|うまく|いきましたね」|と|彼女は|感心したように|言った。|「ジャガイモを|剥くのを|手伝いましょうか?」
「もう|全部|済ませてあります」
「本当に|てきぱき|してるわね。||もうする|ことも|なさそうだから、|私も|帰りましょうか」
キダー夫人が|帰ると、|ルーシーは|ずっと|したかった|台所の|テーブルを|磨いた。||本当は|もっと|前から|したかったのだが、|キダー夫人の|仕事を|奪う|ことに|なるのでがまんしていたのだ。

それから|銀器を|磨いて|輝かせた。||昼食を|作り、|片付けて|洗い物を|して、|二時半には|探索の|準備が|できた。||お茶の|支度は|済ませておいた。||トレイに|サンドイッチと|パンを|並べ、|しっとりした|まま|保つ|ために|湿った|ナプキンを|かけておいた。
まず|庭を|ぶらりと|歩いた。||いかにも|自然な|行動だ。
家庭菜園は|少しだけ|手が|入っていて、|野菜が|少し|植えられていた。||温室は|廃墟同然だった。||どこの|小道も|雑草で|おおわれていた。||屋敷の|近くに|ある|宿根草の|花壇だけが|手入れが|行き届いていて、|エマの|手に|よるものだと|ルーシーは|思った。||庭師は|耳の|遠い|老人で、|働いている|ふりを|しているだけだった。||ルーシーは|気さくに|話しかけた。||老人は|大きな|馬小屋の|敷地に|隣接した|小屋に|住んでいた。
馬小屋の|敷地から|裏の|私道が|公園を|抜けて|続いており、|両側は|フェンスで|囲まれ、|鉄道の|アーチを|くぐって|小さな|裏道に|出た。
数分ごとに|列車が|鉄道の|アーチの|上を|轟音を|立てて|通り過ぎた。
ルーシーは|クラッケンソープ家の|敷地を|取り囲む|急カーブで|速度を|落とす|列車を|眺めた。||鉄道の|アーチを|くぐって|裏道に|出た。||あまり|人が|通らない|道だった。||片側は|鉄道の|築堤、|もう片側は|高い|工場の|建物を|囲む|塀が|続いていた。||ルーシーは|道を|進んで|小さな|家々が|並ぶ|通りに|出た。||すぐ|近くに|幹線道路の|賑やかな|車の|音が|聞こえた。||時計を|見た。||近くの|家から|女性が|出てきたので|ルーシーは|声を|かけた。
「すみません、|この|近くに|公衆電話は|ありますか?」

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「角を|曲がった|ところに|郵便局が|あります」
ルーシーは|礼を|言い、|歩いて|郵便局へ|行った。||雑貨店と|郵便局を|兼ねた|店で、|脇に|電話ボックスが|あった。||ルーシーは|中に|入って|電話を|かけた。||ミス・マープルを|呼んでほしいと|頼んだ。||女性の|するどい|声が|答えた。
「今|休んでいます。||邪魔は|できません。||年を|とった|方ですから、|休息が|必要なんです。||どちら様ですか?」
「アイルズバロウです。||邪魔を|しなくて|構いません。||着いて|すべて|順調に|進んでいると|伝えてください。||何か|わかったら|お知らせします」
ルーシーは|受話器を|置き、|ラザフォード・ホールへ|戻った。



