モンマルトルで夜の仕事をするタクシーの運転手は物事を半分言われればわかる。何も言われなくてもわかることさえ多い。銃声が響いた瞬間、ピックウィックス・バーの前に停まっていた一台の運転手がメグレを乗せようとドアを開けようとしていた。彼はメグレの素性を知らなかった。それでもその物腰から相手が警官だと見抜いたのだろうか。

向かいの小さなバーの客たちが駆け寄ってきた。あと少しすれば負傷者の周りに人だかりができるところだった。そのとき運転手は手際よく、警部を支えながらもどうすればよいかわからずにいたドアマンを手伝った。そして三十秒も経たないうちに車は走り出した。メグレはクッションの上にいた。
車は十分ほど走り、人気のない通りで止まった。運転手が席を降りてドアを開けると、客がほぼ普通の姿勢で座り、片手を上着の下に滑り込ませているのが見えた。


「思った通りたいしたことはなさそうですね。どこへお連れしましょうか?」

それでもメグレの顔は少し青ざめていた。命に別状はないとはいえ、胸の肉が裂けていた。弾丸は肋骨をかすり、肩甲骨の近くから飛び出していた。

「警視庁へ」
運転手は何かぼそぼそとつぶやいた。走りながら、警部は気が変わった。

「マジェスティックへ行ってくれ。ポンティウ通りの勝手口で降ろしてくれ」
ハンカチを丸めて傷口にあてていたが、血が止まりかけているのに気がついた。パリの中心部へ近づくにつれ、メグレの顔から苦痛の色が薄れ、かわりに不安の色が濃くなっていった。

運転手がタクシーから降りるのを手伝おうとした。メグレは身振りでそれを断り、しっかりとした足取りで歩道を渡った。細い廊下の奥に小窓があり、うとうとしているコンシェルジュがいた。

「何もなかったか?」

「それはどういう意味でしょうか?」
外は寒かった。メグレは引き返して運転手に料金を払った。運転手はまたぶつぶつと文句を言った。あれだけ頑張ったのに、百フランしかもらえないからだ。
メグレはそのままでも堂々とした風貌だった。ハンカチを握った手は相変わらず服の下で胸にあてられていた。片方の肩がもう一方より高くなっていたが、それでも体力を温存しようと気をつけていた。頭が少しぼんやりしていた。ときどき体が浮いているような感覚におそわれ、意識を保って、はっきり感じ、しっかり動くために、気を張り続けなければならなかった。

鉄製の階段を上り、ドアを開けて廊下を進んだ。しかし迷路のような通路に迷い込み、気がつくと最初の階段とそっくりだったが、表示が違った。
ホテルの舞台裏をさまよっていた。幸いなことに、どこかで白い帽子をかぶったコックに出会った。コックは、近づいてくるメグレを、おびえた様子で見ていた。

「一階へ連れていってくれ……モーティマーの部屋の近くだ」

しかしコックは、客の名前を知らなかった。それにメグレが、手で顔を触ったときについた五本の血の筋にすっかり動揺していた。黒いオーバーを肩に引っかけ、袖を通さず、手を頑固に胸にあててチョッキと上着をふくらませたこの大男が、狭い通用口の廊下を、ゆっくりと歩いてくる。

「警察だ!」
メグレは苛立ちをあらわにした。
めまいが起きそうだった。傷口が燃えるように痛み、長い針を何本も刺されているようだった。

コックはメグレを無視するように、振り返りもせず歩きだした。少しすると、メグレの足が絨毯を踏んだ。通用部分を抜けて、ホテルの中に入ったのだとわかった。部屋番号を見て、自分が奇数番号の廊下にいることがわかった。
ようやく客室係を見つけたが、彼女はおびえた。

「モーティマーの部屋は?」

「下の階、ですが、あなたは」
階段を降りた。その間に、奇妙な男が負傷して幽霊のようにホテルをさまよっているという噂が従業員の間に広まっていた。

メグレは一瞬壁にもたれた。壁に血の跡がついた。真っ赤な小さなしずくが三滴、絨毯の上に落ちた。
やっとモーティマーの部屋が見えてきた。隣に、トランスが陣取っている部屋のドアが見えた。少し体を傾けながら歩いて、そのドアにたどり着き、押し開けた。


「トランス!」
部屋には明かりがついていた。テーブルにはまだ食べ物や瓶が並んでいた。
メグレは、その太い眉をひそめた。同僚の姿が見えない。しかし部屋の中に病院のような臭いが漂っていた。
ふらふらしながら数歩進んだ。そして突然、ソファの前で立ち止まった。

黒い革靴をはいた足が一本、はみ出していた。
メグレは傷口を三度抑え直した。手を離すたびに、血がどっと吹き出すからだ。
テーブルの上のナプキンを取り、チョッキの下に当てて、チョッキの留め金をきつく締めた。部屋に漂う臭いが気持ちを悪くさせた。
おぼつかない手つきでソファの片側を持ち上げ、二本の脚を軸にしてソファを回転させた。
予想した通りだった。そこにはトランスが横たわっていた。手足を折られたかのように体を丸められ、小さな空間に無理やり押し込められていた。

布切れが顔の下半分を覆っていたが、結ばれていなかった。メグレはひざまずいた。
おそらく自分自身の状態のせいで、動作はすべて落ち着いていて、ひどくゆっくりだった。手が胸を触れるのをためらった。そして心臓に触れた瞬間、警部は固まった。絨毯の上に動かずに座ったまま、目を同僚に向けた。

トランスは死んでいた。メグレの口がかすかに歪んだ。拳が握りしめられた。目が潤んできた。そして、閉め切った部屋の静寂の中で、激しく罵る言葉を吐いた。
滑稽になりかねなかった。だが違った!恐ろしかった!悲惨だった!戦慄すべきことだった!
メグレの顔はこわばっていた。泣いてはいなかった。泣くことができなかったのだろう。しかしその表情には激しい怒りと深い悲しみ、そして茫然自失が入り混じっていて、呆けたように見えた。
トランスは三十歳だった。五年間、ほとんど警部と二人で仕事をしてきた。
口を開けたまま倒れていた。まるで必死に一口の空気を吸おうとしたかのように。
真上の階では、旅行者が死者の真上で靴を脱いでいた。
メグレは敵を探すように周りを見回した。呼吸が荒かった。
数分がそのように過ぎ、警官が立ち上がったのは、体の中で何かひそかな異変が進んでいるのを感じたからだった。

窓の方へ向かい、開けると、シャンゼリゼの人気のない車道が見えた。しばらくそよ風に額を冷やしてから、トランスの顔から引き剥がした布切れを拾い上げた。
それはマジェスティックのモノグラムが入ったダマスク織り1のテーブルナプキンだった。まだかすかにクロロフォルムの臭いがした。メグレは立ったまま、頭の中が空っぽで、いくつかのまとまらない考えがその空白の中でぶつかり合い、痛みをともなって響いていた。
もう一度、廊下でしたように、壁に肩をもたせかけると、顔の肉が急にたるんだ。老いて意気消沈しているように見えた。もしかするとその瞬間、嗚咽をこらえるのがやっとだったのかもしれない。しかし彼は大きすぎ、太すぎ、あまりにも頑丈すぎた。

ソファは斜めにずれて、片付けられていないテーブルに触れていた。皿の上には鶏の骨に交じって煙草の吸い殻が散らばっていた。
警部は電話機に手を伸ばした。しかし触れずに、苛立たしげに舌打ちして、遺体の方へ戻ってじっと見つめた。
苦々しい皮肉な表情で、規則、検察、手続き、取るべき措置のことを考えた。
そんなことが重要か?トランスのことなのだ!まるで自分が死んだも同然だった!

トランスは仲間だった。警察の……
落ち着いた様子の裏で激しく動揺しながら、チョッキのボタンを外した。二つのボタンがもぎ取れた。そして何かを見つけると、顔色が青ざめた。
シャツの上、ちょうど心臓の真ん中あたりに、小さな茶色い点があった。
ひよこ豆ほどの大きさもなかった。一滴の血がにじみ、針の頭ほどのかたまりになって固まっていた。
目を潤ませながら、メグレは言葉にできない憤りで顔を歪めた。
おぞましかった。しかし同時に、これは犯罪の手口として最高の巧妙さだった!もう調べるまでもなかった!この手口は数か月前にドイツの犯罪学の雑誌で研究していた。
まずクロロフォルムを染み込ませたナプキンで二十秒から三十秒で被害者を動けなくする。次に犯人が急がずに長い針を肋骨の間に差し込み、心臓を探し当て、音も血も出さずに命を奪う。
まったく同じ犯行が、半年前にハンブルクでも行われていた。
銃弾は的を外したり傷を負わせるだけに終わることもある。メグレ自身がその証拠だった。音が出るし、血も飛び散る。しかし針なら、動けなくなった人間の心臓に差し込めば、確実に、音もなく命を奪える。
警部はあることを思い出した。その夜、支配人がモーティマー夫妻の外出を知らせてきた時、暖房の上に腰かけて鶏のもも肉をかじりながら、ふと幸せな気分になって、自分がホテルに残り、トランスを劇場へ行かせようかと思いかけたのだった。
その考えが胸を締めつけた。後ろめたさを感じながら同僚を見た。体全体がだるかった。傷のせいか、動揺のせいか、それともクロロフォルムの臭いのせいか、自分でもわからなかった。
きちんとした捜査を始めようという気にはなれなかった。
そこにいるのはトランスだった!ここ数年、あらゆる捜査を共にしてきたトランスだった!一言、目くばせするだけでわかり合えたトランスだった!
それでも生きようとするかのように、口を開けたまま、もう一口の酸素を吸い込もうとしているトランス。泣くことのできないメグレは、気分が悪く、不安で、肩に重荷を背負い、胸の中にむかつきを感じていた。

再び電話の方へ歩き、聞き返されるほど小さな声で話した。

「警視庁へ……そう……もしもし!……警視庁……誰だ?……え?……タロー?……いいか、君……捜査部長の家へ走ってくれ……そう、家へ……こう伝えてくれ……マジェスティックへ来るように伝えてくれ……すぐに……部屋番号はわからないが、案内させる……え?……いや、それだけだ……もしもし……何だって?……いや、俺は何でもない……」
電話を切った。同僚が奇妙な声と、さらに奇妙な指示に首をかしげていたからだ。
しばらく腕をだらりと下げたまま立っていた。トランスが横たわっている隅を見ないようにしていた。鏡に自分の姿が映っているのに気づき、血がナプキンを染み通しているのを確認した。そしてやっとの思いで上着を脱いだ。

一時間後、捜査部長がホテルの従業員に案内されてドアをノックすると、細く開いた隙間にメグレのシルエットが浮かんだ。

「もういい」と警部はくぐもった声で従業員に言った。
男が姿を消してからやっとドアを開けた。そこで初めて、部長はメグレが上半身裸なのに気づいた。浴室のドアが大きく開いていた。床には赤く染まった水たまりがあった。

「早く閉めてくれ」と警部は上下関係も気にせず言った。
胸の右側に長く腫れ上がった傷があった。サスペンダーが太ももの上にだらりと垂れていた。
トランスがいる方向に顎で示し、唇に指を当てた。

「しっ!……」
部長はぞっとした。あわてて聞いた。


「死んだのか?」
メグレは頭を垂れた。

「手を貸してくれませんか、部長……」とうつろな声でつぶやいた。

「しかし……君は……これは大変だ……」

「しっ!……弾丸は抜けています、それが大事なんです!……これをテーブルクロスで縛るのを手伝ってください……」
食器を床に置き、テーブルクロスを二つに切っていた。

「レトン一味の仕業です……私は外れましたが……トランスは外れなかった……」

「傷は消毒したか?」

「石鹸で、それからヨードチンキで……はい……」

「それで大丈夫だと?……」

「今はそれで十分です!……針ですよ、部長!……眠らせてから針で殺したんです……」
もはや別人だった。薄い布越しに見たり聞いたりしているような、ぼんやりとした印象だった。


「シャツを取ってください……」
単調な声。抑えた、ぎこちない動作。無表情な顔。

「来てもらわなければなりませんでした……仲間のことですから……それに騒ぎにしたくないんです……あとで連れていってもらって……新聞には一言も出さないで……私を信頼してくれますね、部長?」
喉にかすかな震えがあった。それが部長の胸を打ち、メグレの手を握った。

「メグレ!……何があったんだ?……」

「何でもありません……落ち着いています、本当に……こんなに落ち着いたことはないくらいです……しかしもうこれはあいつらと私の問題です……わかりますね!……」
部長がチョッキと上着を着るのを手伝った。包帯で胴回りが太くなり、体の輪郭がぼやけて、まるで脂肪がついたように見えた。

鏡を見て、皮肉な表情を浮かべた。自分の体のだらしなさがよくわかった。敵の前にどっしりと立ちはだかる、あの岩のような体ではもはやなかった。
顔は青白く、赤い筋が走り、むくんで見えた。目の下にくまができはじめていた。

「ありがとうございます、部長……トランスのことは、うまくできますか?」

「公にしないことはできる……検察に連絡しておく……検事長に直接会うことにしよう」

「わかりました!私は仕事にかかります……」
乱れた髪を少し整えながら言った。それからトランスの遺体の方へ歩き、ためらってから部長に頼んだ。

「目を閉じてやってもいいですか……私がしてやりたいんです……」

指が震えていた。しばらくの間、死者のまぶたの上にそっと手を置いた。部長はたまらなくなって懇願した。

「メグレ!……」

警部は立ち上がり、部屋を見回した。

「では、部長……妻には怪我のことを言わないでください……」
その大きな体が一瞬、ドアの枠いっぱいに広がった。捜査部長は思わず呼び止めそうになった。メグレが心配だったのだ。
戦争中、戦友たちも突撃の前にこんなふうに別れを告げたものだった。同じ落ち着き、同じ現実離れした穏やかさで。
そしてその者たちは誰一人、戻らなかった!



