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「入りますか?||遺体を|着替えさせるのを|手伝ってほしいのですが」
遺体が|ベッドに|横たえられると、|すぐに|医者が|尋ねた。

「女中を|探しましょう!」
メグレが|答えた。||実際、|ジャンが|上の階へ|上がり、|しばらくして|三十歳ほどの|女を|連れて|戻ってきた。||女は|おびえた目で|あたりを|見回していた。

「消えろ!」
メグレは|使用人たちに|向かって|ぼそりと言った。||使用人たちは|願ってもないとばかりに|その場を|離れた。
彼は|ジャンの袖を|つかみ、|足の先から|頭の先まで|じっくりと|眺め、|窓の|くぼみへと|連れていった。


「伯爵令息との|関係は?」

「いえ、|私は、|あの」
若い男は|やせていた。||縦縞の|パジャマは|清潔とは|言いがたく、|その|みすぼらしさが|さらに|みっともなさを|添えていた。||メグレの目を|まともに|見ようとせず、|指を|引っぱって|伸ばそうとする|癖が|あった。

「もういい!」
警部が|遮った。

「時間の無駄だ。||はっきり|言え」
重い|樫の扉の向こうから|行き来する|足音、|ベッドの|スプリングの|きしむ音、|ブシャルドンが|女中に|低い声で|指示する声が|聞こえていた。||遺体の|着替えを|させているのだ。

「城での|正確な|立場は?||いつから|ここに|いる?」

「四年前から。」

「伯爵夫人とは|どういう|経緯で?」
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「その、|ええと、|共通の|知人に|紹介されまして。||ちょうど|両親が|リヨンの|小さな銀行の|倒産で|破産した|ところで。||信頼できる|相談役として|雇っていただき、|個人的な|要件などを」

「待て。||それ以前は|何を|していた?」

「旅をしたり、|美術評論の|記事を|書いたりして」
メグレは|笑わなかった。||そもそも|その場の|雰囲気が|皮肉を|許さなかった。

城は|広大だった。||外から見れば|それなりの|風格が|あった。||しかし|内部は|この|若者の|パジャマと|同じくらい|みすぼらしかった。||至る所に|埃が|積もり、|美しくもない|古いものが|散乱し、|役にも|立たない|がらくたが|山積みに|なっていた。||壁の|タペストリーは|色あせていた。
壁には|明るい|跡が|残っていた。||家具が|運び出された|証拠だ。||一番|いいものが!||値の|張るものが!

「伯爵夫人の|愛人に|なった」

「誰を|愛そうと|自由で」

「黙れ!」
メグレは|相手に|背を|向けた。||言われなくても|わかっている!||ジャンを|見れば|わかる!||城の|空気を|吸えば|わかる!||使用人たちの|目つきを|見れば|わかる!

「息子が|来ることは|知っていたか?」

「いいえ。||それが|何か?」
目は|相変わらず|泳いでいた。||右手で|左手の|指を|引っぱり続けていた。

「着替えたい。||寒いし。||なぜ|警察が|この件で?」

「着替えてこい!」
メグレは|寝室の|ドアを|押した。||ベッドの上で|全裸に|されている|遺体を|見ないように|した。
寝室も|城の|他の場所と|変わらなかった。||広すぎ、|寒すぎ、|不揃いの|古道具が|ひしめいていた。||暖炉の|大理石の|棚に|肘を|ついた|途端、|割れているのに|気がついた。


「何か|わかりましたか?」
メグレは|ブシャルドンに|聞いた。

少し|待って。||お嬢さん、|席を|外してくれますか?」
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彼は|女中の後ろで|ドアを|閉め、|窓に|額を|押しつけ、|枯れ葉と|灰色の|霞に|すっぽり|包まれた|庭園へ|目を|やった。

「先ほど|申し上げた通りです。||死因は|急性の|心停止です。」

「原因は?」
医者は|曖昧に|手を|振り、|遺体に|毛布を|かけて|窓辺の|メグレに|近づき、|パイプに|火を|つけた。


「感情的な|ショックかも|しれません。||あるいは|寒さか。||教会の中は|寒かったですか?」

「むしろ|暖かかった。||もちろん、|外傷は|なかったんですね?」

「一切」

「注射針の|跡も?」

「考えました。||ありません。||毒物も|摂取していない。||これでは|なかなか|主張しにくい」
メグレは|険しい|顔を|していた。||左手の|木立の下に、|自分が|生まれた|管理人の家の|赤い屋根が|見えた。

「簡単に|教えてくれ。||城での|生活は?」

「あなたと|同じくらいしか|知りません。||四十か|四十五歳まで|貞淑の|鑑だった|女性です。||その頃に|伯爵が|亡くなり、|息子は|学業のために|パリへ|行った」

「その後は?」

「秘書が|次々と|やってきました。||それぞれ|長くいた者も|いれば|短い者も|います。||最後の一人は|ご覧の通り」

「財産は?」

「城には|抵当が|かかっています。||農場は|四つのうち|三つが|売られたました。||時々|骨董屋が|来て|残っている|値打ちものを|持っていく」

「息子は?」

「よく|知りません。||一筋縄では|いかない男だと|聞いています」

「ありがとう」
メグレが|出ようとすると、|ブシャルドンが|後を|追った。


「内輪の話だが、|今朝|なぜ|あの教会に|いたのか、|聞いてもいいですか?」

「ああ、|不思議だな」

「どこかで|お会いしたような気が」

「そうかもしれません。」
そして|メグレは|足を|速めた。
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メグレは|廊下を|足早に|進んだ。||十分に|眠れなかったせいか、|頭が|ぼんやりと|していた。||マリー・タタンの宿で|風邪を|引いたのかも|しれなかった。||ジャンが|灰色の|スーツ姿で|階段を|下りてくるのが|見えた。||足には|まだ|スリッパを|履いたままだった。
ちょうど|そのとき、|マフラーを|外した|車が|城の|中庭に|入ってきた。

小さな|レース用の|自動車で、|鴨の羽のような|黄色に|塗られ、|細長くて|乗り心地が|悪そうだった。||革のコートを|着た|男が|玄関ホールに|飛び込んできて、|ヘルメットを|脱ぎ、|叫んだ。

「おい!|誰かいないのか!|みんな|まだ|寝てるのか?」
男は|メグレに|気づき、|じっと|見つめた。

「あんたは|何者だ?」

「静かに。|話がある」
警部の|傍らで、|ジャンは|青ざめ、|不安そうに|立っていた。||通りすがりに、|サン・フィアクル伯爵は|ジャンの|肩を|軽く|小突き、|笑いながら言った。

「まだここに|いたのか、|この|悪党め」
悪意は|ない様子だった。||ただ、|深く|見下しているだけだった。

「何か|まずいことでも|あったのか?」

「今朝、|教会で|お母上が|亡くなりました」

モーリス・ド・サン・フィアクルは|三十歳で、|ジャンと|同じ年だった。||背丈は|同じだが、|伯爵は|がっしりとして|少し|太めだった。||その|全身から、|とりわけ|革の|衣装からは、|陽気な|生き様が|にじみ出ていた。||澄んだ|目は|明るく、|からかうような|光を|帯びていた。
メグレの|言葉を|受けて、|初めて|眉を|寄せた。

「何と|言った?」

「こちらへ」

「そんな|ばかな!||俺は|てっきり」

「てっきり?」

「何でもない!||母は|どこだ?」
男は|呆然と|して、|途方に|暮れていた。||寝室では、|毛布をそっと|持ち上げ、|亡き母の|顔を|一目|見るだけにとどまった。||激しい|嘆きも、|涙も、|劇的な|身振りも|なかった。||ただ、|二言だけ|呟いた。


「かわいそうな、|ばあさんだ!」
ジャンが|扉の|方へ|遠慮がちに|歩き出したとき、|伯爵が|気づき、|鋭く|言い放った。

「お前は|出て行け!」
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モーリスは|落ち着きを|なくして、|部屋の中を|行ったり来たり|していた。||ブシャルドンに|ぶつかりそうに|なった。

「ブシャルドン、|母は|何で|死んだんだ?」

「心臓発作です、|ムッシューモーリス。|ただ、|警部なら|私より|詳しいことを|ご存じかも|しれません」
若者は|素早く|メグレの方を|向いた。

「あなたは|警察の|人間なのか?|いったい|何が?」

「少し|話せないか?||道を|歩きながら|話したい。||ブシャルドンは|ここに|いてくれるか?」

「私は|これから|狩りに|行くつもりで」

「では、|狩りは|別の日に|行けばいい」
モーリス・ド・サン・フィアクルは|夢想するように|足元を|見つめながら、|メグレの|後に|続いた。||城の|正面並木道に|出た|とき、|七時の|ミサが|終わったところで、|最初の|ミサより|人出の多い|信者たちが|出てきて、|教会の|前庭で|群れを|なしていた。||何人かは|すでに|墓地に|入り始めており、|頭だけが|壁の上から|見えて|いた。
夜明けが|近づくにつれ、|寒さが|増してきた。||乾いた|北風が|吹き、|広場の|端から|端まで|枯れ葉を|吹きはらい、|ノートルダムの|池の|上で|鳥のように|舞っていた。

メグレは|パイプに|煙草を|詰めた。||これこそ、|連れを|外に|誘い出した|主な|理由では|なかったか?||もっとも、|亡き伯爵夫人の|部屋でさえ、|医者は|煙草を|吸って|いた。||メグレは|どこでも|気にせず|煙草を|吸う|たちだった。
しかし|城では|違った。||ここは|別格の|場所だった。||幼い|ころの|メグレに|とって、|この城は|この世で|もっとも|近づきがたいものの|象徴だった。
『今日は|伯爵様が|書斎に|呼んでくださって、|一緒に|お仕事を|させて|いただいた』と|父は|誇らしそうに|話した|ものだった。

そして|幼い|メグレは、|乳母に|押されて|庭を|進む|乳母車を、|遠くから|敬い|見ていた。||その|乳母車の|赤ちゃんこそ、|モーリス・ド・サン・フィアクルだった。

「お母上の|死で|得をする者が|いますか?」

「どういう|意味だ?|医師は|さっき」
モーリスは|不安な|様子で、|動作が|ぎこちなく|なっていた。||メグレが|差し出した|紙を|素早く|取った。|犯行を|告げる|文書だった。


「これは|どういう|ことだ?||ブシャルドンは|心臓発作だと|言っていたのに」
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「十五日前から|誰かが|予測していた|心臓発作だ!」
農民たちが|遠くから|二人を|眺めていた。||二人は|教会に|近づきながら、|ゆっくりと|歩き、|それぞれの|考えに|沈んで|いた。

「今朝、|城に|来た|目的は|何だ?」

「ちょうど|それを|自分でも|考えて|いたところだ」と|若者は|ゆっくりと|言った。
「さっき、|誰が|母の死で|得を|するかと|聞いたな。|そうだ、|いる。|俺だ」
からかっている|様子は|なかった。||額に|憂いの|影が|差して|いた。||自転車で|通りかかった|男を、|名前を|呼んで|挨拶した。

「警察の|人間なら、|もう|状況は|わかっているだろう。|あの|口の軽い|ブシャルドンが|喋ったに|決まっている。||母は|哀れな|婆さんだった。||父は|亡くなり、|俺は|出て行った。||一人残された母は、|少し|頭が|おかしく|なったんだと|思う。||最初は|教会に|入り浸り、|そのうち」

「若い|秘書たちに」

「あなたや|ブシャルドンが|思うような|ことじゃない。||不道徳な|話じゃ|ないんだ。||ただ|愛情を|求めていた。||誰かを|世話したかっただけだ。||若い連中が|それに乗じて|踏み込んだとしても、|母は|信心深い|ままだった。||信仰と、|その、|ああいう|関係との|間で|ひどい|良心の呵責に|苦しんでいたはずだ」

「あなたが|得をすると|言っていたが?」

「財産は|ほとんど|残って|いないのは|知って|いるだろう。||あなたが見た|あの男の|ような|連中は|欲が深い。||このまま|三、四年も|経てば、|何も|残らなかっただろう」
モーリスは|帽子を|かぶっていなかった。||指で|髪を|かきあげた。||それから|メグレを|まっすぐ|見つめ、|一呼吸おいて|続けた。

「もう一つ|言っておく。||今日|ここに来たのは、|母に|四万フランを|頼むため|だった。||そのカネが|ないと、|振り出した|小切手が|不渡りに|なる。||すべて|つながって|いるだろう」
沿道の|生垣から|枝を|一本|折り取った。||押し寄せる|出来事に|飲み込まれまいと、|懸命に|こらえている|様子だった。

「マリー・ヴァシリエフを|連れて来て|しまったんだ」

「マリー・ヴァシリエフ?」
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「俺の|女だ。||ムーランの|ホテルに|置いてきた。||このままだと、|あいつは|車を|借りて|すっ飛んで|くるぞ。||まったく|とんでもないことに|なった」
マリー・タタンの宿では|ちょうど|ランプが|消えるところで、|何人かの|男が|ラム酒を|飲んでいた。||ムーラン行きの|乗合自動車が|半分ほどの|乗客を|乗せて|出発しようと|していた。

「あの人は|こんな|目に|遭わなくて|よかったのに」と|モーリスが|夢見るような|声で|言った。

「誰が?」

「母さんが」

そのとき、|大柄で|少し|太り始めた|体とは|不釣り合いな、|子どものような|面影が|モーリスの|顔に|浮かんだ。||もしかすると、|ようやく|泣きそうに|なって|いたのかも|しれなかった。
二人は|教会の|近くを|行ったり来たり|していた。||同じ道を|何度も|繰り返し、|池に|向かったり、|背を|向けたりしながら。

「なあ、|警部さん。||でも|本当に|殺された|なんてことは|あり得ない。||そうでないと|俺には|どうしても|わからない」
メグレは|考えに|没頭するあまり、|連れのことを|忘れかけていた。||最初の|ミサの|細部を|一つ一つ|思い返していた。
自分の|席に|座る|伯爵夫人。||誰も|近づかなかった。||聖体拝領を|受けた。||そのあと|ひざまずき、|両手で|顔を|おおった。||それから|祈祷書を|開いた。||少し|後に|また|顔を|両手に|うずめた。

「少し|失礼する」
メグレは|石段を|上がり、|教会に|入った。||聖具室係が|大ミサの|ために|祭壇の|準備を|進めて|いた。||鐘突きは|ごつい|農夫で、|鋲打ちの|重い|靴を|履き、|椅子の|列を|整えて|いた。
警部は|聖歌隊席へ|まっすぐ|歩み寄り、|身をかがめて、|振り返った|世話役を|呼んだ。

「ミサ典書1を|拾ったのは|誰ですか?」

「ミサ典書と|おっしゃいますと?」

「伯爵夫人の|ミサ典書です。||ここに|置かれたままだった|はずです」

「そうでしたか?」

「ちょっと|君、|こっちへ!」と|メグレは|鐘突きに|言った。

「この席にあった|ミサ典書を|見なかったか?」

「私が?」

ふりをしているのか、|本当に|間が抜けているのか|わからなかった。||メグレは|苛立って|いた。||ふと|見ると、|モーリスが|中央通路の奥に|立って|いた。
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「この席に|近づいたのは|誰だ?」

「七時の|ミサでは|医師の奥さんが|この席に|座っていました」

「医者は|信心深くないと|思っていたが」

「先生は|そうかも|しれません。||でも|奥さんは」

「では|村中に|触れ回ってくれ。||ミサ典書を|届けてくれた|者には|たっぷり|礼をすると」

「お城に|届ければ|よいですか?」

「いや、|マリー・タタンの|宿に」
外では、|モーリスが|また|隣を|歩き始めていた。

「ミサ典書の|話が|さっぱり|わからない」

「心臓発作は、|強い|ショックで|引き起こされることがある。||聖体拝領の|少し後、|つまり|伯爵夫人が|ミサ典書を|開いた後に|起きた。||もし|その|ミサ典書の中に」
しかし|若者は|気落ちした|様子で|首を|振った。

「母が|そこまで|ショックを|受けるような|知らせは|考えられない。||それに|もしそうなら、|あまりにも|あまりにも|ひどすぎる」
彼は|息がつまりそうな|顔で、|暗い|目を|城に|向けた。

「何か|飲もう」
向かったのは|城では|なく、|宿だった。||モーリスが|入ってくると、|場の|空気が|一変した。||ラム酒を|飲んで|いた|四人の|農夫たちは、|急に|居場所を|なくしたような|顔に|なり、|恐れの|混じった|敬意を|込めて|挨拶した。

マリー・タタンが|エプロンで|手を|拭きながら|台所から|駆けてきた。

「ムッシューモーリス。||噂を|聞いて|まだ|動転して|おります。||かわいそうな|伯爵夫人」

女は|泣いていた。||村で|誰かが|亡くなるたびに、|きっと|こうして|泣くのだろう。

「あなたも|ミサに|いらして|いましたよね?」と|女は|メグレに|同意を|求めた。
「何も|気づかなかったなんて。||ここで、|知らせを|受けたんです」
こういう場では、|無関係なはずの|人間より|悲しみが|薄いのは|気まずいものだ。||モーリスは|お悔やみの|言葉を|苛立ちを|隠しながら|聞き、|気を|紛らわせるように|棚から|ラム酒の瓶を|取り、|グラスに|二杯|注いだ。
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モーリスは|一気に|飲み干しながら|肩を|震わせ、|メグレに|言った。

「今朝|来る途中で|風邪を|引いたようだ」

「この|あたりでは|みんな|風邪を|引いて|いますよ、|ムッシューモーリス」
マリー・タタンが|メグレに|向かって|言った。

「あなたも|気を|つけないと。||昨夜、|咳を|して|いるのが|聞こえましたよ」
農夫たちが|帰っていった。||ストーブが|真っ赤に|燃えて|いた。

「こんな|日に」と|マリー・タタンが|言った。
目の|焦点が|合わないせいで、|メグレを|見て|いるのか|伯爵を|見て|いるのか|わからなかった。

「何か|召し上がりませんか?||知らせを|聞いたとき|あまりに|動転して、|着替えることも|忘れてしまいました」
ミサにしか|着ない|黒い|ワンピースの|上に、|エプロンを|かけただけだった。||帽子が|テーブルの|上に|置きっぱなしに|なっていた。
モーリス・ド・サン・フィアクルは|ラム酒を|もう一杯|飲み、|どうすれば|いいかを|問うような|目で|メグレを|見た。

「行こう」と|警部は|言った。

「昼ごはんは|ここで|食べませんか?||鶏を|一羽|用意して|あります」

しかし|二人は|すでに|外に|出て|いた。||教会の|前には|四、五台の|荷馬車が|止まり、|馬が|木に|つながれていた。||墓地の|低い|塀の|上から、|頭が|行き来するのが|見えた。||城の|中庭では、|黄色い|自動車だけが|鮮やかな色の|染みを|作っていた。

「小切手は|線引き小切手2か?」と|メグレが|聞いた。

「そうだ。||でも|明日|銀行に|回される」

「仕事は|忙しいのか?」

沈黙。||固まった|道を|踏む|足音。||風に|運ばれる|枯れ葉の|こすれる|音。||馬が|鼻を|鳴らす|音。

「俺は|まさに|世間でいう|ろくでなしだ。||いろいろと|手を出してきた。||あの|四万フランも、|映画会社を|立ち上げるつもりだった。||その前は|ラジオの|商売に|出資していた」
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ノートルダムの|池の|向こう、|右手で|鈍い|銃声が|した。||猟師が|大股で|獲物に|向かって|歩いていくのが|見えた。||犬が|しつこく|獲物に|かじりついて|いた。

「ゴーティエだ、|管理人の。||こんなことになる|前に|狩りに|出かけていたんだろう」と|モーリスは|言った。
その|とき、|突然|感情が|爆発した。||踵で|地面を|叩き、|顔を|歪め、|嗚咽を|こらえた。


「かわいそうに!||なんて|卑劣な|ことだ!||あの|クソッタレの|ジャンめ」と|口をへの字に|曲げて|うめいた。
まるで|魔法のように、|ちょうど|その|ジャンが|城の|中庭で|医者と|並んで|歩いて|いるのが|目に入った。||細い腕を|振り回しながら|何かを|熱心に|語りかけている|様子だった。
風の中に、|時おり|菊の香りが|漂ってきた。

- ミサ典書とは、カトリックの専門用語で信者が|ミサの際に|手に持つ|祈祷書です。フランス語|「missel」(ミセル)の訳で、|英語では|「missal」と|いいます。
ミサの|進行に沿った|すべての|祈りと|応唱文が|収められています。||ラテン語の|典礼文と|フランス語訳が|並んで|印刷されており、|信者が|司祭に|合わせて|祈りを|追えるように|なっています。
黒い|革表紙の|小型の|厚い本で、|金具の|留め金が|ついていることが|多い。||信者が|ページを|すぐ|開けるように|しおり紐が|何本も|ついています。
↩︎ - 線引小切手は、銀行を通して取り立てる小切手です。
つまり、普通の小切手のように、持参人が銀行窓口でそのまま現金を受け取る形ではなく、受取人の銀行口座に入金して、銀行間で決済される形になります。
この「線引き」は、小切手の表面に二本線を引くことで、現金で直接払わないでください。銀行を通してくださいという指定になります。
要するに、メグレは、その小切手が|その窓口で|現金化されるものではなく、|銀行処理に|回るものだと|確認しているわけです。
ただし、銀行を通すから安心という話ではありません。銀行に回された時点で、口座に残高がなければ不渡りになるので、モーリスは明日までに四万フランを用意しなければならない、という切迫した状況です。 ↩︎



