サン・フィアクル殺人事件|第十一章 二音の笛(一般版)

サン・フィアクル殺人事件

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「お世話が行き届かなくても、恨まないでくださいね、ムッシューメグレ。でも、お葬式がありますから」


そして気の毒なマリー・タタンは忙しく立ち働き、ビールやレモネードの瓶を、木箱ごといくつも用意していた。


「遠くに住んでいる人たちは、きっと軽く食べに寄りますし」


野原は霜で白く、草は足の下で折れるように鳴った。十五分ごとに、小さな教会の鐘が弔いの鐘を鳴らしていた。

霊柩車は夜明け早くに着いており、葬儀屋の男たちは宿屋で、ストーブを半円に囲むように腰を下ろしていた。


「管理人さんが家にいないなんて、意外ですね」と、マリー・タタンは彼らに言っていた。
「きっとお城で、伯爵さまのそばにいるのでしょう」


そしてもう、日曜用の服を着た農民たちがちらほら見えていた。メグレが朝食を食べ終えようとしていたとき、窓の外に、母親に手を引かれた侍者の少年がやってくるのが見えた。だが母親は宿屋まではついてこなかった。道の角、自分の姿が見えないと思った場所で立ち止まり、息子をマリー・タタンの宿屋へ向かわせる勢いをつけるように、前へ押し出した。

エルネストが入ってきたとき、彼は自信たっぷりだった。まるで、三か月も練習した寓話を、表彰式で暗唱する子どものように自信があった。


「警部さんはここにいますか?」


マリー・タタンにそう聞きながら、同時にメグレに気づいて近づいてきた。両手をポケットに突っ込み、片方の手が何かをいじっていた。

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「僕は用があって」


「笛を見せろ」


エルネストは思わず一歩下がり、目をそらし、考えてから、つぶやいた。


「どの笛?」


「おまえのポケットに入っている笛だ。ボーイスカウトの笛がずっと欲しかったんだろう?」


少年は何となくポケットからそれを取り出し、テーブルの上に置いた。


「さて、すこしおまえの話を聞かせてくれるか」


疑わしげな目つき。それから、ほとんどわからないほどの肩すくめ。エルネストはもう知恵がついてた。その目には、はっきりこう読めた。


笛は手に入った。まあいい。言えと命じられたことを言ってやる。

そして彼は暗唱した。


「ミサ典書のことです。この前は、全部は言いませんでした。あなたが怖かったからです。でも、母さんが本当のことを白状しろって。大ミサの少し前に、僕のところへミサ典書をもらいに来た人がいました」


それでも彼は顔を赤くし、その嘘のせいで取り上げられるのを恐れたように、急に笛を取り戻した。


「で、誰がおまえに会いに来た?」


「ムッシュー・メタイエです。お城の秘書です」


「こっちへ来て、私のそばに座れ。グルナディン1を飲むか?」


「はい。泡の出る水で」


「マリー、セルツ水のグルナディンを持ってきてくれ。それで、おまえはその笛が気に入っているのか?鳴らしてみろ」


笛の音を聞いて、葬儀屋たちが振り返った。


「それは昨日の午後、おまえの母さんが買ってくれたんだな?」


「どうして知っているんです?」


「昨日、銀行で、おまえの母さんはいくらもらった?」


赤毛の少年は、メグレの目を見つめた。もう真っ赤ではなく、真っ青になっていた。彼は扉の方をちらりと見た。まるで、そこまでの距離を測っているようだった。


「グルナディンを飲め。君たちに応対したのは、エミール・ゴーティエだな。あいつがおまえにせりふを覚えさせた」


「はい!」


「あいつは、ジャン・メタイエがやったと言えと言ったんだな?」


「はい」

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そして、少し考えてから、彼は言った。


「僕をどうするんです?」


メグレは答えるのを忘れた。考えていた。この事件での自分の役割は、最後の鎖の輪を持ってきたことに限られていたのだと考えていた。完全に輪を閉じる、ごく小さな輪である。

ゴーティエが罪を着せようとしていたのは、やはりジャン・メタイエだった。だが昨夜の晩餐が、彼の計画を狂わせた。危険な男は秘書ではなく、サン・フィアクル伯爵だとわかったのだ。

すべてがうまくいっていれば、彼は早朝に、赤毛の少年を訪ね、新しいせりふを教えなければならなかっただろう。


『ミサ典書を頼んだのは、伯爵さまだと言え』


そして少年はまた繰り返した。


「僕をどうするんです?」


メグレは答える暇がなかった。弁護士が階段を降り、宿屋の広間へ入り、わずかにためらいながらも手を差し出して、メグレへ近づいてきた。


「よくお休みになれましたか、警部さん。失礼。依頼人の名で、ご相談したいことがありまして。いや、頭がひどく痛みますな」


彼は腰を下ろした、というより、ベンチへ倒れ込んだ。


「葬儀は十時でしたな」


葬儀屋の者たちを見てから、道を行き来する人々を見て、葬儀の時間を待っていた。


「内輪の話ですが、メタイエの義務としてやはり出席すべきか。おわかりでしょうか。状況は認識していて、むしろ気遣いから」


「行ってもいいですか、警部さん?」


メグレは聞いていなかった。弁護士に話していた。


「まだわからないのか?」


「つまり、我々が検討すれば」


「一つ忠告する。何も検討しないことだ!」


「では、あなたのご意見では、何もせずに出発したほうがよいと?」


遅すぎた。笛を取り戻したエルネストが、扉を開け、全速力で走り去っていた。


「法律上、われわれは非常に有利な立場に」


「有利でしょうね」


「そうですよね?私も依頼人にそう言ったのです」


「彼はよく眠りましたか?」

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「彼は服も脱ぎませんでした。たいへん神経質で、感じやすい青年です。良家の若者にはよくあることですが」


しかし葬儀屋たちは耳を澄ませ、立ち上がり、飲み代を払っていた。メグレも立ち上がり、ビロード襟の外套を取って、その袖で山高帽のほこりを払った。


「あなた方二人には、こっそり逃げ出す機会がありますよ。葬儀のあいだに」


「葬儀のあいだに、ですか?それなら、タクシーを頼む電話をしなければ」


「そういうことです」


白い法衣を着た司祭。黒い祭服を着たエルネストと二人の侍者。寒さのために足早に歩きながら、近くの村の司祭が掲げている十字架。そして道を急ぎながら唱えられる典礼の歌。

農民たちは玄関の石段の下に集まっていた。中は何も見えなかった。ようやく扉が開き、四人の男に担がれた棺が現れた。

その後ろに、背の高い影。モーリス・ド・サン・フィアクル。背筋をまっすぐに伸ばし、目を赤くしていた。

彼は黒を着ていなかった。喪服でないのは、彼だけだった。

それでも、石段の上から群衆へ視線をさまよわせたとき、そこにはどこか気まずい空気が流れた。

彼は誰も伴わず、城から出てきた。そして一人きりで棺のあとに続いた。

メグレの立っている場所からは、かつて自分の家だった管理人の家が見えた。扉も窓も閉ざされていた。

城館の鎧戸も閉ざされていた。厨房だけでは、召使いたちが窓ガラスに顔を押しつけていた。

足音に砂利がきしむ音に、ほとんどかき消されるような聖歌のざわめき。

鐘は激しく鳴っていた。

二つの視線が出会った。伯爵の視線と、メグレの視線である。

警部の思い違いだったのか。モーリス・ド・サン・フィアクルの唇には、微笑み影が浮かんでいるように思えた。それは、懐疑的なパリ男の笑みでも、落ちぶれた良家の息子の笑みでもなかった。

静かで、自信に満ちた笑みだった。

ミサのあいだ、細いタクシーの警笛が皆んなの耳に聞こえた。二日酔いでぼんやりした弁護士を連れて、小悪党が逃げ出していったのだ!。

  1. グルナディンは、フランスのノンアルコール飲料です。
    ザクロのシロップ(grenadine)を水や炭酸水で割ったものです。鮮やかな赤い色が特徴で、甘くてさわやかな味です。
    エルネストが「炭酸入りで」と頼んだのは「grenadine à l’eau de Seltz」、つまりグレナデンシロップを炭酸水で割ったものです。子どもが好む定番の飲み物で、1930年代のフランスのカフェや宿屋では普通に出されていました。 ↩︎