テールヌヴァの溜まり場 第二章 黄色い靴

テールヌヴァの溜まり場

『Brille Editor System ver.8』用の『BESファイル』を、ZIPファイルに圧縮して公開しています。(2026年3月30日現在 作成中)

二人は|並んで|歩いた。||お互いを|見ずに、|最初は|その時間には|人けの|ない|浜辺沿いに、|それから|埠頭沿いに。
少しずつ|沈黙が|減っていき、|<マリー・レオンネク>は|ほぼ|普通の|声で|話せるように|なってきた。


「会えば|すぐに|好きに|なって|いただけると|思います!||そうじゃない|はずが|ない!||そうすれば|きっと|わかって|いただけます」


メグレは|好奇心と|感嘆の|まざった|目で|彼女を|見た。||ジョリッサンは|夜明け前に|クアンペルへ|向かい、|若い女を|フェカンに|ひとり|残して|いった。


「ついてくるなとは|言わなかった!||でも|あの子は|頑固だから!」と|彼は|言っていた。


前の晩、|彼女は|静かな|小さな町で|育った|若い女に|ありがちな|平凡さを|漂わせていた。||ところが|プラージュ・ホテルを|出て|まだ|一時間も|経っていなかった、|彼女と|メグレが。
警部は|できるだけ|恐ろしい|顔を|していた。||それでも|彼女は|動じず、|信じようとせず、|自信に|満ちた|笑みを|浮かべていた。


「彼の|唯一の|欠点は」と|彼女は|続けた。
「とても|傷つきやすいことです。||でも|しかたがない。||お父さんは|ただの|漁師で、|お母さんは|彼を|育てるために|長い間|網の|修繕を|していました。||今は|彼が|お母さんを|養っています。||教養が|あって、|将来も|明るいのです」


「ご両親は|裕福ですか?」と|メグレは|ずけずけと|聞いた。


「クアンペルで|一番大きな|ロープと|金属ケーブルの|会社を|やっています。||だから|ピエールは|父に|話すのさえ|嫌がっていた。||一年間、|二人で|こっそり|会ってました」

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「二人とも|十八歳でしたか?」


「やっと|十八歳で!||わたしが|家で|話しました。||ピエールは|月に|少なくとも|二千フラン|稼げるように|なるまでは|結婚しないと|誓ってました。||わかって|いただけますよね?」


「逮捕されてから|手紙は|来ましたか?」


「一通だけ。||とても|短い|手紙で。||毎日|何ページも|書いてくれていたのに!||わたしと|両親の|ためには、|二人の|仲が|終わったと|地元で|言いふらした|方が|いいと|書いてありました」


二人は|オセアンの|そばを|通った。||荷降ろしが|続いていて、|満潮の|今は|黒い船体が|埠頭より|高く|そびえていた。||前甲板まえかんぱんの|上で|三人の男が|上半身裸で|体を|洗っていて、|その中に|メグレは|プチ・ルイを|見つけた。

ある|仕草も|目に|入った。||船乗りの|一人が|もう一人の|肩を|押しながら|メグレと|若い女の方を|指さした。||すると|その男は|顔を|しかめた。


「思いやりから|なんですよね?」と|隣で|声が|続いた。
「クアンペルのような|小さな|町で|スキャンダルが|どれほど|広まるか|わかっている。||わたしに|自由を|返してあげようと|した」


朝の空気は|澄み切っていた。||若い女は|グレーの|スーツ姿で、|女学生か|女教師のように|見えた。


「両親が|送り出して|くれたのも、|彼を|信じているから!||それでも|父は|商人と|結婚させたいと|思っているけれど」

メグレは|彼女を|警察署の|待合室で|かなり|長い間|待たせた。||いくつか|メモを|取った。

三十分後、|二人は|刑務所に|入った。

機嫌の悪い|メグレが|両手を|後ろに|組み、|パイプを|歯に|くわえ、|背を|丸めて|牢屋の|隅に|立っていた。||捜査に|公式には|関わっておらず、|野次馬として|見ているだけだと|当局に|伝えてあった。

何人かから|無線係の|人相を|聞かされていたが、|目の前の|若者は|その描写と|寸分違わなかった。

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「なぜだ?」

マリー・レオンネクは|苛立って|口を|挟んだ。

「ピエール、|話して!||あなたを|救うためなんだから!||本当のことを|言わなければ!」

「わかりません」

彼は|気力も|張り合いも|なく、|希望も|失ったように|見えた。

「ファリュ船長と|言い争いは|あったのか?」

「いいえ」

「それでも|三か月近く|同じ船で|一言も|口を|きかなかった。||みんなが|気づいていた。||ファリュが|ときどき|狂人のように|見えたと|ひそひそ|言う者も|いる」

「わかりません」

マリー・レオンネクは|苛立ちの|あまり|こみあげる|嗚咽を|こらえていた。

「オセアンが|帰港したとき、|あなたは|乗組員と|一緒に|上陸した。||ホテルの|部屋で|書類を|燃やした」

「そうです!||たいしたことじゃ|なかった」

「何でも|見たものを|日記に|つける|習慣がある。||燃やしたのは|この|航海の|日記では|なかったのか?」

彼は|立ったまま|頭を|垂れ、|答えられない|生徒が|頑固な|目で|床を|見つめるように|していた。

「そうです」

「なぜだ?」

「もう|わからない!」

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「それに|なぜ|船に|戻ったのかも|わからないと?||すぐには|戻っていない!||船から|五十メートル|離れた|貨車の|陰に|隠れているのを|見られていた」

若い女は|警部を|見て、|婚約者を|見て、|また|警部を|見て、|だんだん|混乱してきた。

「そうです」

「船長が|タラップを|渡って|埠頭に|降りた。||そのとき|襲われた」

彼は|黙ったままだった。

「答えなさい!」

「ピエール、|答えて!||あなたを|救うためなんだから。||わからない、|わたしには」

涙が|まぶたに|あふれてきた。

「そうです」

「何が|そうなんだ?」

「そこに|いました!」

「では、|見たのか?」

「はっきりとは。||樽の|山や|貨車が|あって。||二人の男が|もみ合い、|一人が|逃げ、|体が|水に|落ちた」

「逃げた男は|どんな|格好を|していた?」

「わかりません」

「船乗りの|格好か?」

「いいえ!」

「では|どんな|格好か|わかるな?」

「ガス灯の|そばを|通った|とき、|黄色い|靴を|はいているのだけ|気づいた」

「その後|どうした?」

「船に|戻りました」

「なぜだ?||なぜ|船長を|助けに|行かなかったんだ?||もう|死んでいると|わかっていたのか?」

重い|沈黙。||マリー・レオンネクが|両手を|組んで|懇願した。

「ピエール、|お願い、|話して!」

廊下に|足音が|した。||看守が|来て、|ル・クランシュに|予審判事が|呼んでいると|告げた。

婚約者が|彼に|キスしようとした。||彼は|ためらった。||やがて|ゆっくりと、|考えるような|様子で|彼女を|抱き寄せた。

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彼が|キスしたのは|口ではなく、|こめかみの|細い|明るい|巻き毛だった。

「ピエール!」

「来るべきじゃ|なかった!」と|彼は|眉を寄せ、|疲れた|足取りで|看守の|後に|続きながら|言った。

メグレと|マリー・レオンネクは|黙ったまま|出口へ|向かった。||外に|出ると、|彼女は|苦しそうに|ため息を|ついた。

「わからない。||わたしには」

しかし|頭を|上げて|言った。

「それでも|彼は|無実です!||きっとそう!||わたしたちには|わからない、|こんな|状況に|なったことが|ないから!||三日間も|牢屋に|いて、|みんなから|責められて。||それに|あの子は|内気なんです!」

メグレは|胸を|打たれた。||すっかり|落胆しながらも、|言葉に|精いっぱい|熱を|込もうとしている|彼女に。

「それでも|何か|してくれますよね?」

「クアンペルに|帰るならな」

「いやです!||そんな!||お願い!||せめて」

「じゃあ|浜辺へ|行け。||うちの女房の|そばに|いろ。||刺繍の|仕事でも|あるだろう」

「何を|するんですか?||黄色い靴の|手がかりは」

二人を|振り返る者が|いた。||マリー・レオンネクが|あまりにも|興奮しているので、|口げんかを|しているように|見えた。

「できる限り|やる。||ほら、|あの通りを|まっすぐ|行けば|プラージュ・ホテルだ。||女房に|昼飯が|かなり|遅くなるかも|しれないと|言っておいてくれ」

メグレは|踵を返して|埠頭へ|向かった。||しかめっ面は|消えていた。||ほとんど|微笑んでいた。

牢屋の中で|大騒ぎに|なること、|激しい|抗議、|涙、|抱擁を|恐れていた。||それが|違った。||もっと|単純で、|もっと|胸を|裂くような、|もっと|意味深な|展開だった。

ル・クランシュという|人物が|気に|入った。||ちょうど|その|距離感と|内に|こもった|感じが。

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ある|店の前で、|ゴム長靴を|手に|持った|プチ・ルイと|出くわした。

「どこへ|行く?」

「売りに!||買いませんか?||カナダ製の|最高品ですよ!||フランスで|同じものは|見つからない。||二百フランで」

プチ・ルイは|少し|不安そうで、|早く|行かせて|もらえるのを|待っていた。

「ファリュ船長が|頭が|おかしかったと|思ったことは|あるか?」

「ボイラー室じゃ|あまり|見えないから」

「でも|話は|する。||どうなんだ?」

「そりゃ|変なことが|いろいろ|あったよ!」

「何が?」

「何もかも、|何もなし!||説明が|難しい。||陸に|上がったら|特に!」

長靴を|手に|持ったまま、|目をつけていた|船具屋の|主人が|戸口で|待っていた。

「もう|用は|ないですか?」

「いつごろから|始まったんだ?」

「最初から!||船ってのは|健康か|病気かどちらかだ。||オセアンは|病気だった」

「操船ミスもか?」

「何もかも!||何て|言えばいいか。||意味は|ないんだが、|でも|確かに|あった。||戻れないんじゃ|ないか|という|気がしていた。||ところで、|あの財布の件は|もう|追いかけられないんですよね?」

「そのうちな」

港は|ほぼ|がらんと|していた。||夏は|船がみんな|ニューファンドランドに|出ていて、|沿岸で|鮮魚を|取る|小型漁船しか|残っていない。||オセアンだけが|船渠ドックに|黒い|シルエットを|浮かべていて、|強い|タラの|においを|あたりに|漂わせていた。

貨物の|そばに、|革製のゲートルを|つけ、|絹の|モール飾りのついた|帽子を|かぶった|男が|いた。

「船主ですか?」と|メグレは|通りかかった|税関員に|聞いた。

「そうです。||モリュ・フランセーズの|社長で」

警部は|船主に|名乗った。||船主は|疑い深そうな|目で|見ながら、|荷降ろしの|監視を|続けていた。

「船長が|殺された件を|どう|思いますか?」

「どう|思うか?||腐った|タラが|八百トンある!||このままでは|船が|二度目の|漁に|出られない!||警察が|どうにか|できるわけでも|ないし、|赤字を|埋めて|くれるわけでも|ない!」

「ファリュを|全面的に|信頼して|いたんですね?」

「そうだ!||それが|どうした?」

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「無線係は|どうだ?」

「無線係だろうと|何だろうと、|今年は|もう|おしまいだ!||それに|戻ってきた|網を|見ろ!||二百万フランも|かかった|網が、|岩でも|釣っていたように|ずたずたに|破れていた!||あげくに|乗組員が|祟りだと|騒いでいる!||おい、|そこ!||何を|しているんだ?||この貨車への|積み込みを|先に|終わらせると|言ったじゃないか!」

船主は|みんなに|怒鳴りながら|船に|沿って|走り出した。

メグレは|しばらく|荷降ろしを|眺めていた。||それから|桟橋の|方へ|歩いていった。||ピンクの|帆布の|上着を|着た|漁師たちの|群れの|中を。

しばらくして|後ろから|声が|した。

「ちょっと!||ちょっと!||警部さん!」

<テール=ヌーヴァ=溜まり場>の|店主、|レオンが|短い|足を|せいいっぱい|動かして|追いかけてきた。

「うちで|一杯|どうですか!」

何か|秘密でも|あるような、|期待を|持たせる|顔つきだった。||歩きながら|説明した。

「落ち着いてきましたよ!||ブルターニュや|村に|帰った者も|いて、|残った連中も|ほぼ|金を|使い果たした。||今朝は|サバ漁師が|数人|来ただけで」

二人は|埠頭を|渡って|カフェに|入った。||テーブルを|拭いている|ウェイトレスの|ほかは|誰も|いなかった。

「さあ!||何に|しますか?||食前酒でも?||もう|そんな|時間ですし。||もっとも、|昨日も|言ったように、|飲ませるように|けしかけている|わけじゃない。||飲んだら|飲んだで、|払ってもらえる|以上に|ものを|壊されるから。||ジュリー、|台所で|用事を|してくれ!」

警部に|含み|ありげな|ウインクを|一つ。

「お互いの|健康を|祝って!||遠くから|見えたので、|話が|あって」

ウェイトレスが|扉の|裏で|聞き耳を|立てていないか|確かめに行った。||それから|ますます|謎めいて、|同時に|得意げな|顔つきで、|ポケットから|何かを|取り出した。||写真ほどの|大きさの|一枚の|厚紙だった。

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「これです!||どう|思いますか?」

写真だった。||女の写真。||しかし|顔の部分が|赤インクの|線で|完全に|塗りつぶされていた。||憎しみを|込めて|顔を|消そうとしたようで、|ペン先が|紙を|引っかいていた。||線が|縦横に|走り、|一ミリも|見えないほどだった。

一方、|顔の|下の|胸から|下は|そのままだった。||かなり|豊かな|胸。||薄い|絹の|ドレスが|体に|ぴったり|張りついて、|大きく|胸元が|開いていた。

「どこで|見つけた?」

また|ウインクが|飛んだ。

「内緒ですが。||ル・クランシュの|部屋の|収納箱の|錠は|ゆるくて、|中を|見られたんんです。||だから|婚約者からの|手紙は|机の|敷物の|下に|隠す|習慣があって」

「読んでいたのか?」

「別に|たいした|内容じゃ|なかった。||偶然です。||捜索のとき、|誰も|敷物の下を|見なかった。||昨夜|ふと|思いついて|見たら|これが。||顔は|見えなくても、|あの婚約者じゃ|ないことは|確かです!||婚約者の|写真も|見ましたが、|こんな|体つきじゃない!||つまり|別の女が|いるわけで」

メグレは|写真を|じっと|見た。||肩の|ラインが|艶めかしかった。||マリー・レオンネクより|年上に|違いない。||この|胸元には|非常に|官能的な|ものが|あった。

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少し|下品でも|あった。||ドレスは|既製品らしく、|安っぽい|おしゃれだった。

「この家に|赤インクは|あるか?」

「いいえ!||緑の|インクしか|ない」

「ル・クランシュは|赤インクを|使った|ことは|なかったか?」

「一度も!||万年筆専用の|自分の|インクが|あって。||特別な|ブルーブラックで」

メグレは|立ち上がり、|扉へ|向かった。

「借りていくぞ」

しばらくして|オセアンに|乗り込み、|無線係の|船室と、|続いて、|船長の|船室を|調べた。||船長の|部屋は|汚くて|散らかっていた。

トロール船に|赤インクは|なかった。||船乗りたちも|見たことが|ないと|言った。

船を|降りると、|いつも|みんなを|怒鳴りつけている|船主が|メグレを|険しい目で|見た。

「会社の|事務所に|赤インクは|あるか?」

「赤インク?||何に|使うんだ?||学校じゃ|あるまいし」

しかし|突然、|何かを|思い出したように:

「赤インクで|書くのは|ファリュ|だけだった。||エトルタ通りの|自宅に|いるとき。||また|何の|話だ?||そこの|貨物車、|気をつけろ!||事故でも|起きたら|大変だ。||で、|あなたは|赤インクが|何だと?」

「いや、|何でも|ない。||ありがとう」

プチ・ルイが|長靴を|売った|らしく、|少し|酔っぱらって|戻ってきた。||やくざな|帽子を|かぶり、|ぼろぼろの|スリッパを|はいていた。