『Brille Editor System ver.8』用の『BESファイル』を、ZIPファイルに圧縮して公開しています。(2026年5月27日現在)
91

日曜の家族の小さな儀式のなかで、メグレがもっとも印象に残ったのは、年老いたペーテルスの籐椅子を、台所からサロンへ運ぶことだった。
平日は、その椅子の定位置、つまり老人の場所は、ストーブのそばだった。たとえ食堂に客を迎えていても、ペーテルスは姿を見せなかった。
だが日曜日には、中庭に面した窓のそばに、日曜用の場所があった。海泡石のパイプ、長いさくらんぼ材の吸い口がついたパイプは、タバコ缶1のそば、窓枠の上に置かれていた。
ヴァン・ド・ウェールト医師は、それより小さな革張りの肘掛け椅子に腰をおろし、石炭の火に向かって、ふっくらした脚を組んでいた。

ベルギーの検死医の報告書を読みながら、医者は絶えず頷き、感心し、驚き、一人で小さく手を動かしていた。
やがて医者は報告書をメグレに差し出した。二人のあいだにいたマルグリットが、それを受け取ろうとした。

「だめだ。おまえは読むな」
ヴァン・ド・ウェールトが口をはさんだ。

「君のほうが、たぶんもっと関心があるだろう!」
メグレはそう言って、書類をジョゼフ・ペーテルスに渡した。

全員がテーブルを囲んでいた。ジョゼフとマルグリット、アンナとその母親。母親はときどき立ち上がって、コーヒーの様子を見に行っていた。
ドクターはベルギー人らしく、ブルゴーニュを飲みながら葉巻をふかし、その火のついた先を顎の下でしきりに動かしていた。

台所のテーブルの上には、通りがかりにメグレが見たところ、半ダースほどのタルトが用意されていた。

「いい報告書だ、もちろん。たとえば、ただ、それには書いていないんだ、その、その……」
92
ドクターは気まずそうに娘を見た。

「私の言いたいことはおわかりでしょう。つまり、その報告書には書いてないんです。その」

「強姦があったのか!」とメグレは唐突に言い放った。

ドクターはそんな言葉が口にされるなど思いもよらず憤った顔をしていた。それを見て、メグレは危うく吹き出しそうになった。

「それがわかれば参考になったでしょうな。こういう場合には。たとえば、一九一一年に」
ドクターは話し続け、遠回しな言い方で、どこかの事件を語り出した。だが、警部は聞いていなかった。ジョゼフ・ペーテルスがその書類を読んでいるのを見ていた。
ところが、その書類は、ムーズ川から引き上げられたジェルメーヌ・ピエドブフの遺体の詳細な描写を容赦なく記していた。
ジョゼフは青ざめていた。小鼻がきつく締まっていた。それは姉のマリアと同じ特徴だった。
彼は読むのをやめて、書類をメグレに返すかと思われた。だが、そうはならなかった。彼は最後まで読んだ。ページをめくろうとすると、肩越しに覗き込んでいたアンナが止めた。

「待って」

彼女にはまだ三行読むところが残っていた。それから二人は一緒に次のページを読み始めた。そのページはこう始まっていた。
頭蓋の開口部はあまりに大きく、脳のかけら一つさえ見つけることはできなかった。

「お飲み物を召し上がりますか、警部さん?食卓の準備をしますので」
そしてペーテルス夫人は灰皿と葉巻とジュネヴァの瓶を暖炉に移し、テーブルに刺繍を入れたクロスを広げた。
彼女の子供たちはまだ読んでいた。マルグリットは羨ましそうに二人を見ていた。ドクターは、自分の話を誰も聞いていないことに気づき、黙って葉巻を吸っていた。
二ページ目の終わりに差しかかったとき、ジョゼフ・ペーテルスは死人のように青ざめ、鼻の両側には暗いくぼみができ、こめかみには汗がにじんでいた。彼はページをめくるのを忘れた。アンナが代わりにめくり、最後まで一人で読み進めた。
93
マルグリットはそれを機に立ち上がり、若者の肩に触れた。

「かわいそうなジョゼフ。読むべきじゃなかったのよ。少し外の空気を吸ってきた方がいいわ」
メグレはその機会を逃さなかった。

「そいつはいい考えだ。私も少し脚を伸ばしたい」

しばらくして、二人は帽子もかぶらずに岸壁に出ていた。もう雨はやんでいた。何人かの釣り人が、艀と艀のあいだのわずかな隙間を見つけて、釣り糸を垂れていた。橋の向こう側からは、映画館の呼び鈴が絶え間なく聞こえていた。
ペーテルスは神経質に煙草に火をつけ、流れていく水面に視線を投げたままだった。

「こたえるんだな、やっぱり。こんなことを聞いて悪いが、今でもマルグリットと結婚するつもりか?」
長い沈黙が続いた。ジョゼフはメグレのほうを向こうとせず、メグレにはその横顔だけが見えていた。やがて彼は店の扉を眺めた。透明な広告が貼られた扉だった。それから橋を眺め、またムーズ川に視線を落とした。

「わかりません」

「それでも、彼女を愛していたはずだ」

「なぜあの報告書を読ませたんですか?」
そして彼は額に手をやった。手を離すと、外気は冷たいのに、その手は濡れていた。

「ジェルメーヌはそんなに見劣りしたのか?」

「やめてください。わかりません。マルグリットは美しい、上品だ、賢い、育ちがいいと、何度も聞かされてきました」

「それで、今は?」

「わかりません」
彼は話したくなかった。まったく黙っていることもできず、しぶしぶ言葉を搾り出していた。手の中の煙草の紙を破いていた。

「君の息子がいるのに、彼女は結婚を承知しているのか」

「養子にしたいと言ってます
94
顔の表情は変わらなかった。だが、嫌悪か、疲労のために気分が悪くなっているのが感じられた。彼はメグレを横目でうかがいながら、また新たに質問されるのを恐れていた。

「君の家では、みんな結婚は近いうちに行われるものと考えているようだな。マルグリットは君の愛人なのか」
彼は唸るような低い声で答えた。

「違います」

「彼女が拒んだのか」

「彼女ではありません。僕です。そんなことは一度も考えたことがありません。あなたにはわかりません」
そして突然怒りをこめて言った。

「僕はどうしても彼女と結婚しなければならないんだ!必要なことなんだ!それだけです!」
二人の男はなおも互いを見ていなかった。外套を着ていなかったメグレは、寒さを感じ始めていた。
その時、店の扉が開いた。警部にはもう聞き慣れた呼び鈴の音がした。ついで、甘すぎるほど柔らかく、包みこむようなマルグリットの声が聞こえた。

「ジョゼフ。何をしているの?」
ペーテルスの視線がメグレの視線と交わった。それは、まるでこう繰り返しているようだった。
『それだけです!』
その間も、マルグリットは続けていた。

「風邪をひくわよ。みんな食卓についているのに。どうしたの?顔色が悪いわ」
一瞬黙った。彼は食料品店からは見えない、ピエドブフの家の建つ路地の角を眺めていた。
アンナはタルトを切り分けていた。
ペーテルス夫人はあまり話さなかった。まるで自分の立場の弱さをわかっているようだった。そのかわり、子どもたちの誰かが話すと、微笑んだりうなずいたりしていた。

「私の立ち入った質問をお許しください、警部さん。もしかすると、馬鹿なことを言うかもしれません」

そう言って、彼女はメグレの皿に米のタルトを大きく一切れ載せた。
95

「エトワール・ポレールの船内で何か見つかって、船乗りが逃げていると聞きました。あの男は何度もここへ来ました。私は外へ追い出していました。というのも、何でもツケにしたがるし、それに加えて、朝から晩まで酔っているからです。でも、私が言いたかったのはそのことではありません。逃げているならそれは有罪でしょう。この場合捜査は終わりではありませんか?」
アンナはメグレを見もせず、無関心に食べていた。
マルグリットはジョゼフに言っていた。

「少しだけでも食べて。お願い。私のためにそうして」
そしてメグレは、口いっぱいに食べながら、ペーテルス夫人に言った。

「俺が捜査を指揮しているなら、答えられる。だが、そうじゃない。忘れないでくれ。あなた方の無実を証明してくれと私をここへ呼んだのは、あなたの娘だ」
ヴァン・ド・ウェールトは、何か言いたいのに一言も挟ませてもらえない男のように、椅子の上で落ち着かなくなっていた。


「しかし、それにしても」

「マシェール警部補がこの場を取り仕切っている。だから」

「しかし、警部さん、それにしても階級というものがあるでしょう。彼はただの警部補で、あなたは」

「ここでは、私は何者でもない。いいですか。たった今でも、私があなた方の誰かに質問したいと思ったところで、その人には答えない権利がある。私が艀に乗り込んだのは、船乗りがそれを許したからだ。偶然、私は凶器と、被害者が着ていた小さなコートを見つけた」

「しかし、それで」

「それだけだ!彼らはその男を捕まえようとしている。今ごろは、もう捕まっているかもしれない。ただし、あの男は弁明できる。たとえば、その服とハンマーを拾っただけで、それが何を意味するかも知らずに取っておいたと言える。怖くなって逃げたとも言える。あの男は以前にも裁判沙汰を起こしているから、自分はほかより信用されないとわかっているんだ」

「そんな話は筋が通りません」

「告発というものは、ほとんどいつも筋が通らない。弁護も同じだ。ほかの人間を告発することだってできる。今日の昼に私が何を知ったか、わかりますか?ジェルメーヌの兄のジェラールは、この一か月、自分が陥った苦境からどう抜け出すかもわからずにいた。あちこちに借金がある。それどころじゃない!金庫から金を取ったことまで突き止められ、その額に達するまで、毎月、給料の半分を差し押さえられている」
96

「本当ですか?」

「だからといって、妹を消して、賠償金を取ろうとしたと言うのも」

「ひどいことですわ!」と、この話のせいで食事どころではなくなっていたペーテルス夫人がため息をついた。

「君は彼をかなりよく知っていたな」と、メグレはジョゼフのほうへ向き直って言った。

「昔、少し付き合いがありました」

「子どもが生まれる前だな?何度か一緒に日帰り旅行へ行っている。間違っていなければ、君の姉さんも一緒にどこかの洞窟へ行ったはずだが」

「本当なの?」と、ペーテルス夫人は驚いて、娘のほうへ向き直った。
「そんなこと、知りませんでした」

「覚えていません」と、アンナは食べる手を止めず、視線を警部に据えたまま言った。

「まあ、どうでもいいことだ。ところで、何を言ってかな?タルトを一切れくれませんか、マドモワゼル・アンナ?いや、果物のではない。あなたの見事なライスタルトが気にいってる。これはあなたが作ったのですか?」

「この子です!」と、母親が急いで言い添えた。
そして、突然沈黙が訪れた。メグレが黙ったので、誰も口を開く勇気がなかったのだ。食べる音が聞こえた。警部はフォークを床に落とし、拾うためにかがまないといけなかった。その動きの中で、彼は、上品な靴を履いたマルグリットの足が、ジョゼフの足の上に置かれているのが見えた。


「マシェール警部補はなかなか抜け目のない男だ」

「あまり頭がよさそうには見えません」と、アンナがゆっくり答えた。
メグレは彼女に、共犯者めいた笑みを向けた。

「頭がよさそうに見える人間なんて、そう多くはない。私などは、たとえば、犯人かもしれない相手を前にすると、わざと馬鹿のふりをすることにしている」
97
メグレが内緒話と思われることを口にしたのは、たぶんこれが初めてだった。

「でも、おでこは変わりませんよ!」と、ドクター・ヴァン・デ・ウェールトがあわてて丁寧に言った。
「それに、骨相学を少しでもかじった者なら。ほら、あなたはひどく短気な方だと確信しています」
ようやくお茶の時間が終わろうとしていた。警部は真っ先に椅子を引いて、パイプをてにとって、タバコを詰め始めた。

「マドモワゼル・マルグリット、こうしたらどうだ。ピアノの前に座って、『ソルヴェイグの歌』を弾いてくれないか」
彼女はためらい、ジョゼフのほうを見て、どうすればよいか尋ねるようにした。そのあいだにペーテルス夫人がつぶやいた。

「あの子はとても上手なんです。歌も歌います」

「一つだけ残念なのは、マドモワゼル・マリアが捻挫のせいで、ここにいないことだ。私の最後の日に」
アンナがすばやく彼のほうへ顔を向けた。

「もうお発ちになるのですか?」

「今夜だ。こっちは金利生活者ではない。それに、妻もいるし、待ちくたびれている」

「マシェール警部補は?」

「彼がどうするかは知らん。たぶん」
店の呼び鈴が鳴った。あわただしい足音が聞こえ、それから扉を叩く音がした。
マシェール本人だった。ひどく動揺していた。

「警部はこちらに?」

彼は、家族の集まり真っ最中に飛び込んだことに驚いて、すぐにはメグレに気づかなかった。

「何だ?」

「お話ししたいことが」

「失礼」
そしてメグレは警部補を店の方に連れて行き、カウンターに肘をついた。

「あの連中がどれほど嫌いか、自分でもいやになるくらいです!」
マシェールは苛立って、食堂の扉を顎で示した。
98

「あのコーヒーとタルトの匂いだけでも」

「それを言いに来たのか?」

「違います。ブリュッセルから知らせがありました。列車は予定どおり到着しました」

「だが、船乗りはもういなかったんだろう!」

「もうご存じでしたか?」

「見当はついていた。あいつを馬鹿だとでも思ったのか?俺は思わない!小さな駅で降りて、別の列車に乗り変えたはずだ。さらにまた別の列車に。今夜にはドイツかもしれんし、アムステルダムかもしれん。ひょっとするとパリかもしれん」
だが、マシェールはにやにやしながらメグレを見ていた。

「金を持っていれば!」

「どういうことだ?」

「調べました。男の名はカサンです。昨日の朝には、ビストロでつけを払うこともできず、酒を出すのを断られていました。それだけではありません。あちこちに借金があったんです。商人たちは、あの船を出航させまいと決めていたほどです」
メグレはまったく関心なさそうに相手を見ていた。

「それで?」

「そこで終わりにはしませんでした。大変でしたよ。今日は日曜で、たいていの人が家にいませんから。映画館まで行って、何人かに聞き込みました」
メグレはパイプをふかしながら、秤の二つの皿に分銅を載せ、釣り合いを取ろうとして遊んでいた。


「ジェラール・ピエドブフが昨日、二千フランを借りたことがわかりました。自分の署名では誰も相手にしないので、父親を保証人にしていました」

「二人は会ったのか?」

「まさにそこです!税関員が、ジェラール・ピエドブフとカサンが、ベルギー税関のほうの川岸を一緒に歩いているのを見ています」


「何時ごろだ?」

「だいたい二時ごろです」
99

「よし!」

「何がよしなんですか?ピエドブフが船乗りに金を渡したとしたら」

「結論には気をつけろ、マシェール!結論を出したがるのは、本当に危険なんだ」

「とはいえ、朝には一文なしだった男が、午後には列車で発ち、しかも懐に金を持っていたんです。駅へ行ってきました。あの男は千フラン札で切符を払っています。ほかにも持っていたらしいです」

「もう一枚か?」

「ほかにもあったのか、もう一枚だけか。あなたなら、どうしますか?」

「俺が?」

「はい」
メグレはため息をつき、パイプを踵に叩きつけて中身を空にし、食堂の扉を指した。

「うまいジェニヴァを一杯飲みに行く。何しろ、これからピアノを一曲弾いてもらえるんだ」

「それだけですか」

「行くぞ!来い。この時間になって、町でまだやることもないだろう。ジェラール・ピエドブフはどこだ?」

「スカラ映画館です。工場の女工と一緒に」

「きっと特等席を取っているぞ!」
そしてメグレは、声を立てずに笑いながら、同僚をリビングへ押し込んだ。そこは薄暗くなり輪郭をぼかし始めていた。ヴァン・デ・ウェールトの肘掛け椅子からは、細い煙がゆっくりたちのぼっていた。ペーテルス夫人は台所にいて、食器を片づけていた。マルグリットはピアノの前で、鍵盤の上を指に任せてのんびりと行き来させていた。

「本当に弾いてほしいのですか?」

「弾いてくれ。ここに座れ、マシェール」

ジョゼフは立っていて、右肘を暖炉に預け、青白くなった窓を見つめていた。
冬は過ぎ去ってもいい、
いとしい春も、
流れ去ってもいい。
秋の木の葉も――
100
夏の果実も、
すべては過ぎ去ってもよい……
声には力がなかった。マルグリットは最後まで弾ききろうと努力していた。二度、和音を弾きそこねた。
けれどもあなたは私のもとへ戻ってくる、
ああ、私の美しい婚約者よ、
もう二度と私を離れぬために……
アンナはもうそこにいなかった。台所にもいなかった。そこではペーテルス夫人が、音楽への遠慮から、できるだけ音を立てずに行き来しているのが聞こえていた。
……私はあなたに心を捧げた……
マルグリットには、煙草を消えるに任せているジョゼフの陰気な姿は見えなかった。
夜がふけてくると、石炭の火はあらゆる物に紫がかった照り返しを投げていた。とりわけ、テーブルの磨かれた脚にそれが映えていた。
マシェールがひどく驚き、動くこともできずにいるあいだに、メグレはあまりに気配のない動きで出ていったため、誰にも気づかれなかった。彼は階段を一段もきしませずに上がり、閉じた二つの扉の前に立った。
踊り場はすでにほとんど真っ暗だった。ただ、扉の取っ手だけが二つの白っぽい染みのように見えていた。磁器製の取ってだったからだ。
やがて警部は、火のついたままのパイプをポケットに入れ、片方の取っ手を回し、中へ入り、後ろ手に扉を閉めた。
アンナはそこにいた。カーテンのせいで、部屋は食堂よりも暗かった。灰色の埃のようなものが空気の中に漂っているようで、ところどころ、とくに隅ではいっそう濃く見えた。
アンナは動かなかった。何も聞こえなかったのだろうか。

彼女は窓の前に立ち、逆光の中で、顔を夕暮れのムーズ川の景色へ向けていた。対岸では灯がともされ、薄明かりの中へ鋭い光の筋を投げていた。
101
後ろ姿から、アンナは泣いているように見えた。彼女は背が高かった。これまでにないほど力強く、いっそう「彫像」のように見えた。
そして灰色の服は、文字どおりその場の空気に溶けこんでいた。
床板が一枚、たった一枚だけ、メグレが若い女のすぐ一歩後ろまで来たときにきしんだ。しかしそれでも彼女はびくりともしなかった。
そこで彼は、驚くほどやさしく彼女の肩に手を置いた。それと同時に、相手がようやく秘密を打ち明けざるを得ない男のようにため息をついた。

「そうだな!」
彼女は身体ごとくるりと彼のほうを向いた。落ち着いていた。その厳しい顔立ちの調和を乱す皺は一本も浮かんでいなかった。
ただ首だけが、内側からの不思議な圧力を受けているように、ゆっくりと少しふくらんでいた。
ピアノの音ははっきりと届いてきた。『ソルヴェイグの歌』の一つ一つの音節まで聞き分けられた。
神がなおも、
その大いなる慈しみによって、
あなたを守ってくださいますように……
そして明るい二つの眼が、メグレの眼を探っていた。一方で、いまにも泣き声をこぼしそうに持ち上がりかけた唇は、アンナの全身と同じ硬さを帯びていった。
- 1930年代には|缶入りのタバコが|一般的でした。
・缶入り刻みタバコ|→|パイプ用|最も一般的
・紙巻きタバコ(シガレット)|→|紙の箱や|缶
・葉巻(シガー)|→|木箱
パイプ用タバコの缶
・金属製の|丸い缶
・蓋を|開けると|刻みタバコが|入っている
・湿気を|保つために|缶が|適していた
・今でも|パイプ用タバコは|缶入りが|多い
窓枠に|パイプと|一緒に|タバコの缶が|置いてあるのは|ごく|自然な|光景です。
・ ↩︎


