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食堂は|城の中で、|もっとも|その|趣を|失っていない|部屋だった。||壁を|天井まで|覆う|彫刻入りの|羽目板の|おかげだった。||そのうえ、|部屋は|広さよりも|高さがあり、|そのために|重厚であるだけでなく、|陰鬱でもあった。||まるで|井戸の|底で|食事を|しているような|感じが|したからだ。
それぞれの|壁面には、|二つずつ|電灯が|ついていた。||蝋燭を|まねた|細長い|電灯で、|偽物の|蝋の|涙まで|ついていた。
テーブルの|中央には、|本物の|七枝の|燭台が|あり、|七本の|本物の|蝋燭が|立っていた。

サン・フィアクル伯爵と|メグレは|向かい合っていたが、|炎の|上越しに|見るために|上体を|伸ばさなければ、|互いの|顔は|見えなかった。
伯爵の|右に|神父。||左に|ブシャルドン。||偶然にも、|ジャン・メタイエは|テーブルの|一方の|端に、|弁護士は|反対側の|端に|座ることに|なった。||そして|警部の|両側には、|片方に|管理人、|もう|片方に|エミール・ゴーティエが|いた。

執事は|客に|給仕するため、|ときおり|光の中へ|進み出た。||だが|二メートルも|後ろへ|下がると、|すぐに|影の中へ|沈み、|白い|手袋を|はめた|手しか|見えなくなった。

「ウォルター・スコットの|小説の|中に|いるようだと|思いませんか?」
そう|話したのは|伯爵だった。||無関心な|声だった。||それでも|メグレは|耳を|澄ませた。||そこに|意図を|感じ、|何かが|始まろうとしていると|察したからだ。
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まだ|前菜の|最中だった。||テーブルの|上には、|白と|赤、|ボルドーと|ブルゴーニュの|ワイン瓶が|二十本ほど、|雑然と|並んでおり、|皆が|好きなように|自分で|注いでいた。

「ただ|一つ|気に|くわないことが|あります」とモーリス・ド・サン=フィアクルが|続けた。
「ウォルター・スコットなら、|あの|哀れな|老女が|上の部屋で|突然|叫び声を|あげるはずですが」
数秒の|あいだ、|誰もが|噛むのを|やめた。||そして|氷のような|隙間風が|通り抜けたように|感じられた。

「ところで、|ゴーティエ、|母は|一人きりに|してあるのか?」
管理人は|あわてて|飲み込み、|口ごもった。

「奥さまは、|はい。||伯爵夫人の|お部屋には|誰も|おりません」

「それは|寂しいだろうな」
その|瞬間、|一つの|足が|しつこく|メグレの|足に|触れた。||だが|警部には、|その|足が|誰のものか|わからなかった。||テーブルは|円形だった。||誰でも|中央に|届く|距離に|いた。||そして|メグレの|この|わからなさは|続くことになる。||その|晩の|あいだ、|小さな|足蹴りが、|しだいに|速い|間隔で|繰り返されることに|なるからだ。

「今日は|大勢が|母に|会いに|来たのか?」
母親のことを、|まるで|生きている|人間のように|話すのを|聞くのは|気まずかった。||警部は、|ジャン・メタイエが|そのことで|ひどく|動揺し、|食べるのを|やめ、|いっそう|隈の|濃くなった|目で|まっすぐ|前を|見ているのに|気づいた。

「この|地方の|小作人は|ほとんど|全員です」と、|管理人の|重い|声が|答えた。
執事は、|誰かの|手が|ボトルへ|伸びるのを|見つけると、|音もなく|近づいた。||黒い|腕が|現れ、|その|先には|白い|手袋が|あった。||酒が|注がれた。||それは|あまりにも|静かに、|あまりにも|巧みに|行われたので、|かなり|酔いの|回った|弁護士は、|感嘆しながら|三度も|四度も|同じことを|試した。
彼は|うっとりして、|自分の|肩に|かすりもしない|その|腕を|目で|追っていた。||とうとう|我慢できなくなった。

「見事ですな。||執事さん。||あなたは|名人だ。||もし|私が|城を|買える|身分なら、|ぜひ|あなたを|雇いたいものです」

「ふん。||城など、|もうすぐ|安く|売りに|出ますよ」
この|ときばかりは、|メグレも|眉を|ひそめて、|そう|言った|サン・フィアクルを|見た。||その|声は|妙に|無関心で、|どこか|綱渡りめいた|調子だった。||それでも、|その|受け答えには|きしむような|ものが|あった。||ついに|神経が|限界まで|張りつめたのか。||それとも、|不吉な|冗談の|つもりなのか。
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「鶏の|ドゥミ・ドゥイユ1です」と、|執事が|実際に|トリュフ入りの|鶏料理を|運んできたとき、|彼は|告げた。
そして|間を|置かず、|同じ|軽い|声で|言った。

「犯人も|ほかの|者たちと|同じように、|鶏の|ドゥミ・ドゥイユを|食べるわけです」
給仕頭の|腕が、|客たちの|あいだを|滑り込んでいた。||管理人の|声が、|こっけいなほど|沈んだ|調子で|言った。
「そんな!||伯爵さま」

「いや、|そうですとも。||それの|何が|珍しいのです?||犯人は|ここに|います。||それは|疑いありません。||ですが、|それで|食欲を|なくさないでください、|神父さま。||死体も|この|家の|中に|ありますが、|それでも|私たちは|食事を|している。||アルベール、|神父さまに|少し|ワインを」
また|足が|メグレの|くるぶしに|触れた。||メグレは|ナプキンを|落とし、|テーブルの|下へ|身を|かがめたが、|遅すぎた。||彼が|身を|起こした|とき、|伯爵は|鶏を|食べるのを|やめずに|言っていた。

「先ほど|ウォルター・スコットの|話を|したのは、|この|部屋に|漂う|雰囲気の|ためでも|ありますが、|それ以上に、|犯人の|ためです。||要するに、|これは|通夜の|席なのです。||葬儀は|明日の|朝ですし、|おそらく|それまで|私たちは|別れずに|いることに|なるでしょう。||ムッシュー・メタイエには、|少なくとも|酒蔵を|上等な|ウイスキーで|満たしてくれた|功績が|あります」
メグレは、|サン・フィアクルが|何を|どれほど|飲んだかを|思い出そうとしていた。||少なくとも、|医者ほど|飲んでいなかった。||その医者が|声を上げた。

「素晴らしい!||まったく。||私の|患者は|葡萄農家の|孫に|なりますから」

「そうでした。||何を|言いかけたかな。||ああ、|そうだ。||アルベール、|神父さまの|グラスを|満たしてくれ。
犯人が|ここに|いる以上、|ほかの|者たちは|いわば|裁く|側に|立っているのだ、|と|言っていたのです。||だからこそ、|この|集まりは|ウォルター・スコットの|一章に|似ているのです。
もっとも、|実際には、|その|犯人は|何の|危険も|冒していません。||そうでしょう、|警部?||ミサ典書に|紙切れを|一枚|挟むことは、|犯罪では|ありませんから。
ところで、|先生。||母の|最後の|発作は、|いつ|起きましたか?」
医師は|唇を|ぬぐい、|不機嫌そうに|あたりを|見回した。

「三か月前です。||あなたが|ベルリンから、|ホテルの|部屋で|病気だと|電報を|打ってきて、|それで」

「金を|せびっていた。||そういうことです」
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「そのとき、|私は|次に|激しい|感情の|衝撃を|受ければ、|命取りに|なると|告げました」

「とすると、|さて、|誰が|それを|知っていたのか?||ジャン・メタイエは|もちろん。||私も|当然。||ほとんど|家の|者同然の|父ゴーティエ。||それから|あなたと、|神父さまです」
彼は|プイィ2を|グラスいっぱいに|飲み干し、|顔を|しかめた。

「つまり、|理屈だけで|言えば、|私たちは|ほとんど|全員、|犯人の|候補と|見なすことが|できる、|ということです。||それが|おもしろいと|考えるなら」
まるで|わざと|いちばん|人を|傷つける|言葉を|選んでいるようだった。

「おもしろいと|考えるなら、|一人ずつ|その場合を|調べていきましょうか。||まずは|神父さまからです。||神父さまには、|母を|殺す|利益が|あったのか。||答えは|見かけほど|単純では|ないと|おわかりに|なるでしょう。||金の|問題は|脇へ|置きます」
神父は|息を|詰まらせ、|立ち上がろうかと|迷っていた。
「神父さまには|得るものは|何も|ありませんでした。||けれど、|この方は|神秘家であり、|使徒であり、|ほとんど|聖人です。||その|教区には、|振る舞いで|醜聞を|起こす|妙な|信徒が|いる。||あるときは|もっとも|熱心な|信者のように|教会へ|駆け込み、|また|あるときは|サン・フィアクルに|醜聞を|まき散らす。||いや、|そんな|顔を|しないでください、|メタイエ。||ここは|男同士です。||言うなれば、|高度な|心理学を|しているのです。
神父さまには|強い|信仰が|あります。||その|信仰が、|ある|極端な|ところまで|この方を|押しやることも|ありえます。||罪人を|清めるために|火あぶりに|した|時代を|思い出してください。||母は|ミサに|来ている。||聖体拝領を|済ませたばかりだ。||恩寵の|状態に|ある。||だが|まもなく、|また|自分の|罪へ|戻り、|ふたたび|醜聞の|種に|なる。
もし|母が|そこで、|自分の|席で、|聖らかに|死ぬなら」

「しかし」と、|神父が|言いかけた。||目には|大粒の|涙が|浮かび、|落ち着きを|保つために|テーブルに|すがっていた。

「お願いします、|神父さま。||私たちは|心理学を|しているのです。||私は、|もっとも|厳格な|人々でさえ、|最悪の|残虐行為を|疑われうるのだと|証明したいのです。||医者の|場合に|移ると、|少し|困ります。||この方は|聖人では|ありません。||そして|この方を|救っているのは、|学者ですらないということです。||もし|学者だったなら、|病んだ|心臓が|どこまで|耐えられるかを|実験するために、|ミサ典書に|紙切れを|挟むという|手を|使えたでしょうから」
フォークの|音は|しだいに|遅くなり、|ほとんど|消えかけていた。||人々の|視線は|一点に|据えられ、|不安げで、|うつろに|近いものさえ|あった。||ただ|執事だけが、|メトロノームのように|規則正しく、|黙って|グラスを|満たしていた。
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「皆さん、|陰気ですね。||本当に、|知性ある|人間同士で、|ある種の|話題に|触れることも|できないのですか。
次の|料理を|出してくれ、|アルベール。||さて、|医者は|脇へ|置きましょう。||学者とも|研究者とも|見なせないからです。||この方を|救っているのは、|その|凡庸さです」
彼は|小さく|笑い、|管理人|ゴーティエの|方を|向いた。

「次は|あなたです。||もっと|込み入った|場合です。||私たちは|相変わらず、|シリウスの|視点3から|見ているのですよね。||二つの|可能性が|あります。||まず、|あなたは|模範的な|管理人です。||主人たちに、|そして|自分を|生んだ|城に|一生を|捧げる、|まっすぐな|人間です。||もっとも、|城は|あなたを|生んでは|いませんが、|それは|どうでも|いい。||この|場合、|あなたの|立場は|はっきりしません。||サン・フィアクルには|男の|相続人が|一人しか|いない。||ところが、|その|相続人の|目の|前で、|財産が|一つずつ|流れ出している。||伯爵夫人は|正気とは|思えない|振る舞いを|している。||残ったものを|救う|時では|ないのか。
これは|ウォルター・スコット風に|高尚な|話です。||そして|あなたの|場合は、|神父さまの|場合に|似ています。
しかし、|逆の|場合も|あります。||あなたは|もはや、|城が|生んだ|模範的な|管理人では|ない。||何年もの|あいだ、|主人たちの|弱さに|つけ込み、|それを|食い物に|してきた|悪党です。||売らねばならない|農場は、|あなたが|裏で|買い取っている。||抵当権も、|あなたが|押さえている。||怒らないでください、|ゴーティエ。||神父さまは|怒りましたか。||しかも、|まだ|終わりでは|ありません。
あなたは|ほとんど、|城の|本当の|持ち主です」

「伯爵さま!」

「遊び方も|ご存じないのですか。||これは|遊びだと|言っているでしょう。||よろしければ、|隣に|いる|警部のように、|みんなで|警部に|なって|遊んでいるのです。||伯爵夫人が|行き詰まり、|すべてを|売ることになり、|その|状況を|利用していたのが|あなたなのだと|知られる|時が|来た。||それなら、|伯爵夫人は|静かに|死んだほうが|よかったのでは|ありませんか。||そのうえ、|貧しさを|知ることも|避けられるのですから」
そして|彼は、|影の|中の|影、|白墨のように|白い|二つの|手を|持つ|悪魔のような|執事の|方へ|向いた。

「アルベール。||父の|拳銃を|取ってきなさい。||まだ|残っているならですが」
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彼は|自分と|両隣の|二人に|酒を|注ぎ、|瓶を|メグレへ|差し出した。

「そちら側は|お願いできますか。||ふう。||これで|われわれの|遊びも、|だいたい|半分まで|来ました。||しかし|アルベールを|待ちましょう。||ムッシュー・メタイエ。||あなたは|お飲みにならない」
絞り出すような|「ありがとう」が|聞こえた。

「では、|先生は?」
すると|弁護士は、|口いっぱいに|ものを|入れ、|舌の|回らない|声で|言った。

「結構です。||結構。||私は|もう|十分|いただいております。||いやはや。||あなたは|立派な|検事総長に|なれますな」
笑っているのは|彼だけだった。||彼だけが|見苦しいほどの|食欲で|食べ、|グラスを|重ね、|ブルゴーニュを|飲んだかと|思えば|ボルドーを|飲み、|その|違いにも|気づいていなかった。
教会の|細い|鐘が、|夜の|十時を|告げるのが|聞こえた。||アルベールが|大きな|回転式拳銃を|伯爵に|差し出し、|伯爵は|弾が|入っているかを|確かめた。

「結構。||これを|ここに|置きます。||丸い|テーブルの|中央です。||皆さん、|ご覧の|通り、|全員から|等しい|距離に|あります。||三つの|場合を|検討しました。||これから|さらに|三つを|検討します。||その前に、|一つ|予言を|お許し願えますか。||では、|ウォルター・スコットの|伝統と|調子に|従って、|申し上げます。||真夜中までに、|母の|犯人は|死にます」
メグレは|テーブル越しに|鋭い|視線を|投げた。||サン・フィアクルの|目は|あまりにも|光っていて、|まるで|酔っているようだった。||その|同じ|瞬間、|また|一つの|足が|彼の|足に|触れた。

「さて、|続けましょう。||しかし、|サラダを|召し上がってください。||警部、|あなたの|左隣に|移ります。||つまり、|エミール・ゴーティエです。||真面目な|青年、|働き者。||表彰式で|よく|言われるように、|自分自身の|価値と|粘り強い|努力だけで|身を|立てた|男です。
彼に|殺せたか。
一つの|仮説。||彼は|父親のために、|父親と|示し合わせて|動いた。
彼は|毎日|ムーランへ|行く。||一家の|財政状態を|いちばん|よく|知っているのは|彼です。||印刷屋や|活版工に|会うことも、|いくらでも|できる。
先へ|進みましょう。||第二の|仮説です。||メタイエ、|もし|まだ|ご存じなければ|失礼しますが、|あなたには|ライバルが|いました。||エミール・ゴーティエは|美男子では|ありません。||とはいえ、|あなたが|あれほど|巧みに|占めていた|場所を、|あなたより|前に|占めていたのです」
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「それは|数年前の|ことです。||彼は|何か|期待を|抱いたのでしょうか?||それ以来、|母の|あまりにも|感じやすい|心を、|ふたたび|動かすことが|あったのでしょうか?
いずれにしても、|彼は|母の|公然たる|庇護を|受けていました。||あらゆる|野心を|許されていたのです。
そこへ|あなたが|来た。||そして|勝った。
伯爵夫人を|殺し、|同時に|疑いを|あなたへ|向ける」
メグレは|靴の|中で|足の|指まで|落ち着かなくなっていた。||何もかもが|忌まわしく、|冒瀆的だった。||サン・フィアクルは|酔った男の|高ぶりで|話していた。||そして|ほかの者たちは、|最後まで|耐えられるのか?||この|場に|残って|この|光景を|受け続けるべきなのか?||それとも|立ち上がって|出ていくべきなのかと|思っていた。

「おわかりでしょう、|われわれは|まさに|詩の|中を|泳いでいるのです。||気づいてください。||上に|いる|伯爵夫人自身でさえ、|もし|話せたとしても、|この|謎の|鍵を|われわれに|渡すことは|できないでしょう。||犯人だけが、|自分の|罪を|厳密に|知っているのです。||食べなさい、|エミール・ゴーティエ。||父上のように、|今にも|倒れそうな|様子に|なる必要は|ありません。
アルベール。||棚の|どこかに、|まだ|ワインが|何本か|残っているはずだ。
次は|あなたです、|若い方」
そして|彼は|メタイエの|方へ|微笑みながら|向いた。||メタイエは|反射的に|立ち上がった。

「ムッシュー、|私の|弁護士が」

「座りなさい、|まったく。||その|年で、|冗談が|わからないなどと|思わせないでください」
メグレは|伯爵が|そう|言う|あいだ、|彼を|見つめていた。||そして|伯爵の|額が|大粒の|汗で|覆われているのに|気づいた。

「われわれは|誰も、|自分を|実物以上に|よく|見せようとは|していませんね。||よろしい。||わかり始めたようですね。||果物を|取りなさい。||消化に|いいですよ。
耐えがたい|暑さだった。||メグレは、|誰が|電灯を|消し、|テーブルの|蝋燭だけを|残したのだろうと|思った。

「あなたの|場合は|あまりに|単純で、|かえって|興味が|ありません。||あなたは|あまり|愉快ではない|役を|演じていました。||長くは|演じていられない|役です。||要するに、|あなたは|遺言状の|上に|寝そべっていた。||その|遺言状は、|いつ|変更されても|おかしくなかった。||突然の|死。||それで|すべて|終わりです。||あなたは|自由になる。||あなたの、|あなたの|犠牲の|実りを|収穫する。||そして、|まあ、|あなたの|土地に|目を|つけている|若い|娘でも|娶るのでしょう」
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「失礼」と、|弁護士が|口を|挟んだ。
その様子が|あまりに|こっけいだったので、|メグレは|笑いを|抑えきれなかった。

「黙れ。||飲んでいろ」
サン・フィアクルは|断固としていた。||酔っていることは、|もはや|疑いようが|なかった。||彼には|酔っ払い特有の|雄弁さが|あった。||粗暴さと|繊細さ、|なめらかな|話しぶりと|言葉の|抜け落ちが|混じり合っていた。

「残るのは|私だけだ」
彼は|アルベールを|呼んだ。

「なあ、|おまえ。||上へ|行ってくれ。||母が|一人きりで|いるのは、|さぞ|哀れだろうから」
メグレは、|執事の|問いかけるような|視線が|老ゴーティエに|向けられるのを|見た。||ゴーティエは|まぶたを|動かして|うなずいた。

「待て。||まず|ボトルを|食卓に|置いていけ。||ウイスキーもだ。||作法を|気にする|者など、|ここには|いないだろう」
彼は|懐中時計で|時刻を|見た。

「十一時十分。||私は|しゃべりすぎて、|神父さまの|教会の|鐘も|聞こえませんでしたよ」
執事が|ウイスキーの|ボトルを|食卓に|置く|拍子に、|拳銃を|少し|押したので、|伯爵が|口を|挟んだ。

「気を|つけろ、|アルベール!||それは|全員から|等しい|距離に|置いておかなければ|ならない」
彼は|扉が|閉まるのを|待った。

「さて」と、|彼は|結んだ。
「残るのは|私だけです。||私が|これまで|何一つ|まともなことを|してこなかったと|言っても、|皆さんには|新しい|話では|ないでしょう。||父が|生きていた|ころは、|少しは|別だったかもしれません。||しかし|父は、|私が|十七歳の|ときに|死にましたから。
私は|すっからかんです。||誰でも|知っていることです。||週刊の|小新聞などは、|遠回しに|そのことを|書きたてています。
不渡り小切手。||私は|できるだけ|母から|金を|せびる。||数千フランを|手に|入れるために、|ベルリンで|病気だと|作り話を|する。
考えてみれば、|これは|ちょっとした|ミサ典書の|手口と|同じです。
ところで、|何が|起きているのか。||本来|私に|残されるべき|金が、|メタイエのような|小悪党どもに|使われている。||失礼、|あんた。||われわれは|相変わらず、|超越的な|心理学を|やっているのです」
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「まもなく|何も|残らなくなる。||不渡りの|小切手の|せいで、|私が|牢屋へ|入ることに|なりそうな|時に、|私は|母へ|電話する。||母は|支払いを|拒む。||そのことは|証言で|証明できるでしょう。
つまり、|このまま|続けば、|数週間の|うちに、|私の|相続財産は|何も|残らなくなる。
エミール・ゴーティエの|場合と|同じく、|仮説は|二つです。||第一の|仮説は」
メグレは、|これまでの|職歴で、|これほど|居心地の|悪い|思いを|したことが|なかった。||そして|おそらく|初めて、|自分が|状況に|及ばないという|はっきりした|感覚を|覚えていた。||出来事が|彼を|超えていた。||わかりかけたと|思った|瞬間、|サン=フィアクルの|一言が|すべてを|覆すのだ。
そして|あの|しつこい|足は、|相変わらず|彼の|足に|触れていた。

「別の|話を|しませんか」と、|すっかり|酔った|弁護士が|思い切って|口を|出した。

「皆さん」と、|神父が|言いかけた。

「失礼。||少なくとも|真夜中までは、|皆さんの|時間を|私に|貸していただきます。||第一の|仮説を|言いかけてました。
まあ、|よろしい!||話の|筋を|見失いました」
そして|それを|取り戻すかのように、|彼は|ウイスキーを|グラスいっぱいに|注いだ。

「私は|母が|たいへん|感じやすいことを|知っている。||私は|母を|怖がらせ、|その|結果として|心を|動かすつもりで、|紙を|ミサ典書に|挟む。||翌日|戻ってきて|必要な|金を|頼む。||母が|少しは|折れやすく|なっていることを|期待したのです。
だが、|第二の|仮説も|あります。||なぜ|私だって|殺そうと|思わないと|言えるのです?
サン・フィアクルの|金が|すべて|食い尽くされたわけでは|ありません。||まだ|少しは|残っている。||そして|私の|立場では、|わずかな|金でも、|どれほど|わずかでも、|それが|救いに|なるかもしれない。
私は、|メタイエが|遺言書に|名前が|あることは|漠然と|知っている。|しかし|殺人犯は|遺産を|受け取れない。||この|犯罪で|疑われるのは、|彼では|ないか?||ムーランの|印刷所で|時どき|時間を|過ごしている|彼だ!||城で|暮らし、|いつでも|好きなときに、|ミサ典書へ|紙を|挟める|彼ではないか?
私は|土曜の|午後に|ムーランへ|着いたのではないか?||そして|あちらで、|愛人と|一緒に、|この|仕掛けの|結果を|待っていたのではないか?」
彼は|グラスを|手に|立ち上がった。

「皆さんの|ご健康を。||皆さん|暗いですね。||残念です。||この|数年、|哀れな|母の|人生は|ずっと|暗かった。||そうでしょう、|神父さま?||せめて|母の|最後の|夜くらい、|少しの|明るさを|添えてやるのが|当然では|ありませんか」
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彼は|警部の|目を|まっすぐ|見た。

「あなたの|ご健康を、|ムッシュー・メグレ」
彼は|誰を|からかっているのか?||メグレをか?||皆んなをか?
メグレは|太刀打ちの|できない|力の前に|いることを|感じていた。|||ある|人間には、|人生の|ある|瞬間に、|こういう|充実の|一時が|訪れることが|ある。||その|一時、|彼らは|いわば|ほかの|人間たちの|上に、|そして|自分自身の|上にさえ|置かれるのだ。
それは、|モンテカルロで、|何を|しても|勝ち続ける|賭博師の|場合である。||それは、|それまで|無名だった|野党の|議員が、|演説によって|政府を|揺るがし、|倒してしまい、|本人が|いちばん|驚く|場合でもある。||その|議員は、|ただ|『官報』に|数行|載ることを|望んでいただけなのだから。
モーリス・ド・サン・フィアクルは、|自分の|一時を|生きていた。||彼の|中には、|彼自身も|気づいていなかった|力が|あった。||そして|ほかの|者たちは、|ただ|頭を|下げるしか|なかった。
しかし|それは|酔いが|彼を|そこまで|運んでいたのでは|ないか?

「皆さん、|まだ|真夜中には|なっていませんから、|われわれの|話の|出発点に|戻りましょう。||私は、|母の|犯人は|この|中に|いると|言いました。||それが|私でも、|あるいは|あなた方の|一人でも|ありうることを|示しました。||おそらく|警部と|医者だけは|別ですが。
もっとも、|それも|確かでは|ありません。
そして|私は、|その|犯人の|死を|予告しました。
もう一度、|仮説の|遊びを|お許しいただけますか。||犯人は、|法律が|自分に|何も|できないことを|知っている。||しかし|同時に、|われわれの|うちの|何人かが、|いや、|少なくとも|六人は、|自分の罪を|知ったまま|生き残ることも|知っている。
ここでも|また、|いくつかの|解決が|考えられます。
第一は、|もっとも|ロマンティックで、|もっとも|ウォルター・スコットに|ふさわしいものです。
しかし|その前に、|もう一つ|補足を|しなければなりません。||この|犯罪の|特徴は|何か。||伯爵夫人の|まわりには、|少なくとも|五人の|人間が|まとわりついていたということです。||その|五人は|夫人の|死によって|利益を|得る|立場に|あり、|おそらく|それぞれが|それぞれの|やり方で、|その|死を|引き起こす|手段を|考えたことが|あった。
ただ|一人だけが|踏み切った。||ただ|一人だけが|殺したのです」
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「なるほど!||その人物が、|この晩を|利用して、|ほかの連中に|復讐|しようとするのは、|私にも|よく|わかります。||もう|おしまいだ!||ならば、|私たちを|皆|まとめて|みちづれにしない|理由が|あるでしょうか?」
そして|モーリス・ド・サン・フィアクルは、|相手が|拍子抜けするような|微笑を|浮かべて、|一人ひとりを|順に|見回した。

「どうです、|十分に|胸躍る|話では|ありませんか。||古い|城の|古い|食堂、|蝋燭、|ボトルで|いっぱいの|食卓。||そして|真夜中には|死。||しかも、|それは|同時に|スキャンダルの|消滅でも|ある。||明日、|人々が|駆けつけてきても、|何が|何だか|わからない。||人は|運命の|いたずらだとか、|あるいは|アナーキストの|襲撃だとか|言うでしょう」
弁護士は|椅子の上で|もぞもぞし、|不安そうに|あたりを|見回した。||テーブルから|一メートルも|離れると|もう|暗闇だった。

「もし|私が|医者であることを|思い出していただけるなら」と、|ブシャルドンが|ぶつぶつ|言った。
「皆さんに|真っ黒な|コーヒーを|一杯ずつ|すすめますな」

「そして|私は」と、|神父は|ゆっくり|言った。
「この|家には|死者が|いると|申し上げます」
サン・フィアクルは|一瞬|ためらった。||足が|メグレの|くるぶしに|触れたので、|彼は|急に|身を|かがめたが、|またしても|遅すぎた。

「私は|真夜中までと|お願いしました。||私は|まだ|第一の|仮説しか|検討していません。||第二の|仮説も|あります。||犯人は、|追いつめられ、|取り乱して、|自分の|頭に|弾を|撃ち込む。||だが、|私は|犯人が|自分から|そうするとは|思いません」

「喫煙室へ|移ることを|お願いします」と、|弁護士は|悲鳴のような|声を|上げて|立ち上がり、|倒れないように|椅子の|背に|すがりついた。

「そして|最後に、|第三の|仮説が|あります。||家の|名誉を|重んじる|誰かが、|犯人の|手助けをする。||ただし、|問題は|もっと|複雑です。||醜聞を|避けるべきでは|ないのか。||犯人が|自殺するのを|助けるべきでは|ないのか。

「拳銃は|ここに|あります、|皆さん。||すべての|手から|等しい|距離の|ところに。||真夜中まで|あと|十分です。||私は|繰り返します。||真夜中には|犯人は|死んでいます」
そして|今度は|その|調子が|あまりに|異様だったので、|誰もが|言葉を|失った。||呼吸さえ|止まったようだった。

「犠牲者は|上に|いる。||執事が|見守っている。||犯人は|ここに|いる。||七人の|人間に|囲まれて」
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サン・フィアクルは|グラスの|中身を|一息に|飲み干した。||そして|あの|正体の|知れない|足は、|なおも|メグレの|足に|触れ続けていた。

「真夜中まで|あと|六分。||どうです、|これで|十分に|ウォルター・スコット風でしょう。||震えるがいい、|犯人さん」
彼は|酔っていた。||しかも|まだ|飲み続けていた。

「少なくとも|五人は、|夫も|愛情も|ない|老女から|奪い取る。||だが、|実際に|やってのけたのは|一人だけ。||皆さん、|爆弾か|拳銃です。||われわれを|みな|吹き飛ばす|爆弾か、|あるいは|犯人だけを|撃つ|拳銃か。||真夜中まで|あと|四分」
そして|冷ややかな|声で|言った。

「誰も|知らないということを、|忘れないでください」
彼は|ウイスキーの|瓶を|つかみ、|メグレの|グラスから|始めて、|エミール・ゴーティエの|グラスで|終えながら、|一同に|注いで回った。
自分の|グラスには|注がなかった。||もう|十分に|飲んだのだろうか。||一本の|蝋燭が|消えた。||ほかの|蝋燭も|あとに|続こうとしていた。

「私は|真夜中と|言いました。||真夜中まで|あと|三分」
彼は|競売人のような|そぶりを|していた。

「あと|三分。||あと|二分。||犯人は|死にます。||神父さま、|祈りを|始めてくださっても|かまいません。||それから|先生、|少なくとも|往診かばんは|お持ちですか。||あと|二分。||あと|一分半」
そして|あの|しつこい|足は、|相変わらず|メグレの|足に|触れていた。||彼は|もう|あえて|身を|かがめることは|しなかった。||また|別の|場面を|見損なうのを|おそれたのだ。

「私は|帰るぞ!」と、|弁護士が|立ち上がりながら|叫んだ。
皆んなの|視線が|彼に|向いた。||彼は|立っていた。||椅子の|背を|しっかり|握っていた。||扉まで|行くための|危うい|三歩を|踏み出そうかどうか、|ためらっていた。||しゃっくりのような|声を|もらした。
そして|その|同じ|瞬間に、|銃声が|鳴り響いた。||一秒、|あるいは|二秒ほど、|その場は|完全に|静まり返った。
二本目の|蝋燭が|消えた。||それと|同時に、|モーリス・ド・サン・フィアクルは|ふらつき、|肩で|ゴシック風の|椅子の|背に|ぶつかり、|左へ|傾いた。||右へ|持ち直そうと|一度|はずみを|つけたが、|そのまま|力なく|倒れ、|頭を|神父の|腕の上に|のせた。
- ドゥミ・ドゥイユは、フランス語の demi-deuil で、直訳すると 「半喪」 です。
deuil は「喪」(黒)。
demi は「半分の」。
つまり、完全な喪服の黒ではなく、黒と白、あるいは灰色を混ぜたような 喪の中間段階 を指します。
料理名の poulet demi-deuil は、普通は 鶏肉に黒いトリュフを差し込んだ料理 です。白い鶏肉の下に黒いトリュフが透けて見えるので、黒と白の取り合わせから、半分「deuil(喪)」と呼ばれるのです。
「半喪」という言葉自体は日本語では使いませんが、フランス語の伯爵の「半喪」という言葉にはかなり不吉な皮肉があります。
↩︎ - プイィは、ブルゴーニュ地方産の白ワインです。
正確には「プイィ・フュイッセ(Pouilly-Fuissé)」あるいは「プイィ・ロシェ(Pouilly-Loché)」などの産地のワインで、シャルドネ種から作られる辛口の白ワインです。フランスでは高級白ワインの代名詞のひとつです。
伯爵が顔をしかめたのは、ワインが不味かったからではなく、自分が今置かれている状況——母の死、無一文、犯人を前にした夕食——への苦さを体で表したのかもしれません。
↩︎ - シリウスの視点とは、フランス語の慣用表現「se placer du point de vue de Sirius」です。
シリウスは夜空で最も明るい星で、地球から非常に遠い場所にあります。そこから見れば、地上の人間の営みはあまりにも小さく、感情も利害も関係なく見える——そこから転じて「完全に超然とした、客観的な視点から」という意味になります。
つまり伯爵は「感情を抜きにして、冷静に、まるで神のような高みから各人の動機を分析してみましょう」と言っているわけです。ものごとを俯瞰して考えるという意味の、フランス語らしい表現です。
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