政治経済|個人の自由を縛る日本の戸籍制度

日本

日本の戸籍制度、国民はあたりまえのように受け入れているが、世界標準からみると極めて特異な制度であることをご存じだろうか。

戸籍制度は、家族という枠組みで個人を管理する制度であり、現在も存続しているのは日本・韓国・台湾など、ごく少数の国・地域に限られる。大半の国が採用する「個人登録制」とは根本的に異なる発想に基づいている。

戸籍制度が、戦前から続く「家主義」「家族主義」に根差すものであることは、多くの方がご存じだと思う。戦後、制度は大きく改正された。しかしその内容は、「戸主」という概念を撤廃し、結婚した個人が新しい戸籍を「作ることができる」から「作ることが義務になった」というものにすぎない。一見、個人が家制度から解放されたように見えるが、実態は「筆頭者」という形で家族主義の構造が温存されたままである。

私がさらに疑問に思うのは、戸籍制度の廃止を正面から掲げる政党が現在も存在しないことだ。日本の野党の多くは、保守・自民党への対抗という文脈でリベラルを標榜するが、個人の自由や権利を制度の根幹から問い直すという意味での、真のリベラリズムの理念が希薄なのではないか。そして、それを多くの国民が自明のものとして受け入れていることこそ、この問題の本質だと感じている。

この制度への違和感は、私自身のいくつかの経験と問題意識から生まれた。まだ勉強不足の部分も多いため、今回はアジェンダの紹介にとどめ、今後それぞれについて詳しく書いていきたいと思う。

なお結論だけ先に述べておけば、マイナンバーの普及と行政のデジタル化が進めば、戸籍制度は廃止または形骸化され、世界標準の個人登録制へと移行するだろうと期待している。ただし、「失われた30年」以上の停滞を経た日本では、その実現にはかなりの時間がかかることも覚悟している。


今後取り上げるテーマ(アジェンダ)

  1. 自民党の憲法改正草案に見る「家族主義」の現在
    • 「家族は互いに助け合わなければならない」という条文の意味
  2. 父親死亡時の不動産相続手続き(経験談)
    • 出生時までさかのぼる戸籍収集の実態
  3. 母親死亡時の相続手続き(経験談)
    • 郵便貯金手続きにおける窓口担当者の裁量問題
  4. 女性のセンシティブ情報と国家管理
    • 制度に内在する根源的な男女差別
    • 無戸籍児問題の本質
    • マイナンバーへの国民の反発との比較
  5. 介護・扶養義務と道徳・法制度の関係
    • 介護疲れ、高齢者の孤独死、生活保護運用への影響
  6. イギリスの事例とポワロの捜査から学ぶ個人登録制
    • 出生証明と婚姻証明の別管理という考え方
  7. 日本で戸籍制度が存続する理由
    • 行政効率化という「メリット」の実像