『Brille Editor System ver.8』用の『BESファイル』を、ZIPファイルに圧縮して公開しています。(2026年5月24日現在)
37

正午を|少し|過ぎていた。||メグレは|朝から|四度目ほど|岸辺を|歩いていた。||ムーズ川の|対岸には|石灰で|塗られた|大きな|工場の壁、|通用門、|そして|徒歩や|自転車で|出てくる|男女の|工員が|何十人も|いた。
出会いは|橋の|百メートル|手前で|起きた。||警部は|誰かと|正面から|すれ違い、|振り返ると|相手も|振り返った。
アンナの|下着の中から|見つかった|写真の|本人だった。

一瞬の|ためらい。|先に|一歩を|踏み出したのは|若い男の方だった。

「パリから|来た|警官では?」

「ジェラール・ピエドブフだな?」
『パリから|来た|警官』||今朝から|五回か|六回は|そう|呼ばれていた。||ニュアンスは|よく|わかった。|ナンシーの|同僚マシェールは|純粋に|捜査のために|来ている。||人々は|彼が|行き来するのを|見て、|何か|知っていると|思えば|知らせに|走った。
メグレは|「パリから来た|警官」だ。|フランドル人に|呼ばれて、|彼らの|嫌疑を|晴らすために|わざわざ|来た|男だ。||通りで|すでに|顔を|知られている|者たちは、|一切の|好意もなく|目で|追っていた。

「うちへ|来たんですか?」

「行った。||だが|朝早くだ。||君の|甥にしか|会っていない」
ジェラールは|写真の頃の|年齢を|少し|過ぎていた。||シルエットは|まだ|若く、|髪型や|服装も|若々しかったが、|近くで|見ると|二十五歳を|超えているのが|わかった。
38

「俺に|話が|あるんですか?」
とにかく|臆病ではなかった。||一度も|目を|そらさなかった。||褐色の、|非常に|輝いた目だった。||女性に|好まれそうな目で、|浅黒い肌と|くっきりした|唇が|それを|いっそう|引き立てていた。

「さて|どうかな。||捜査は|まだ|始めたばかりだ」

「ペーテルスの|ために、|でしょう。||知っています!||町じゅうが|知っています!||あなたが|来る前から|わかっていたことです。||あなたは|あの家の|友人で、|自分が|何とか|してやると」

「そんなことは|ない!||ああ、|君の|父親が|起きたな」
小さな家が|見えた。||二階の|日よけが|上がり、|太い|灰色の|口ひげを|蓄えた|男の|シルエットが|窓ガラス越しに|見えた。


「見られました!||父は|着替えに|行くでしょう」

「ペーテルス一家とは|個人的に|知り合いだったか?」
二人は|岸壁を|歩き、|食料品店から|百メートルの|係船杭に|来るたびに|折り返した。||空気は|冷たかった。||ジェラールは|薄すぎる|レインコートを|着ていたが、|その|体に|ぴったりした|仕立てが|気に入っているようだった。


「どういう|意味ですか?」

「三年前から|妹は|ジョゼフ・ペーテルスと|深い関係にあった。||彼女は|彼の家に|行っていたか?」
相手は|肩を|すくめた。

「一から|全部|話さなければ|なりませんか!||まず、|子供が|生まれる|少し前、|ジョゼフは|結婚すると|誓っていました。||それから|ヴァン・ド・ウェール医師が|ペーテルス一家の|代理で|来て、|妹が|この地を|去って|二度と|戻らないなら|一万フランを|出すと|言ってきた。||産後初めて|外出した|ジェルメーヌは|ペーテルス一家に|子供を|見せに|行きました。||ひどい|場面でした。||中に|入れてもらえず、|おばさんは|彼女を|品のない女と|罵った。||結局|落ち着いて、|ジョゼフは|相変わらず|結婚すると|言い続けた。||でも|まず|学業を|終えたいと」

「それで|お前は?」

「私?」


「それで、|君は?」

「僕ですか?」
39
最初は|わからないふりを|した。||しかし|ほぼ|すぐに|考えを|変え、|虚栄心と|皮肉の|混じった|笑みを|浮かべた。

「何か|聞きましたか?」
メグレは|岸壁を|歩きながら|小さな|写真を|ポケットから|取り出し、|連れに|見せた。


「これは|驚いた!||まだ|残っていたとは|思いもしなかった!」
手に|取ろうとしたが、|警部は|財布に|しまった。

「あの子が?||いや!||そんなはずは|ない。||あの子は|誇り高いから。||少なくとも|今は!」
この|会話の間中、|メグレは|連れを|観察し続けていた。||妹のように、|そして|おそらく|ジョゼフの息子のように、|結核を|患っているのだろうか?||確かでは|なかった。||しかし|彼には|結核患者に|特有の|色気1が|あった。|繊細な|顔立ち、|透き通るような|肌、|官能的で|どこか|嘲るような|唇。
身なりは|小役人風で、|ベージュの|レインコートに|喪章の|腕章を|つけていた。

「彼女に|言い寄ったのか?」

「昔の話ですよ。||妹に|まだ|子供が|いなかった頃で、|少なくとも|四年は|前の話です」

「続けろ」

「あ、|父が|路地の角から|様子を|見に来た」

「かまわず|続けろ」

「日曜日の|ことでした。||ジェルメーヌが|ジョゼフ・ペーテルスと|ロシュフォールの洞窟2を|見に|行くはずで。||土壇場で|俺にも|来るよう|頼まれた。||姉の一人が|一緒だったので。||洞窟は|ここから|二十五キロ。||野原で|昼食を|食べて。||俺は|とても|陽気でした。||その後、|二組に|分かれて|森の中を|散歩して」

メグレの視線は|相変わらず|彼の上に|乗っていた。||何も|考えを|明かさずに。

「それで?」

「ええ、|まあ」

ジェラールは|うぬぼれと|悪意の|混じった|笑みを|浮かべた。
40

「どうして|そういうことに|なったのか、|もう|言えない。||俺は|物事を|長引かせる|たちじゃないから。||彼女も|驚いていて」

メグレは|彼の肩に|手を|置き、|ゆっくりと|尋ねた。

「本当のことか?」
本当だと|わかった!||アンナは|そのとき|二十一歳だった。

「その後は?」

「何も。||彼女は|ひどく|不細工だから。||帰りの電車で|じっと|目を|見つめてきたから、|このままに|しておくのが|一番だと|わかった」

「彼女からは|何も|なかったのか?」

「何も!||うまく|避けるように|した。||彼女も|しつこくしても|無駄だと|感じたんだろう。|ただ、|道で|すれ違うとき、|目が|拳銃だったらと|思うような|視線を|向けてくる」
父ピエドブッフが|近づいてきた。||カラーも|つけず、|布の|スリッパを|履いて、|二人を|待っていた。


「今朝|来たと|聞きました。||どうぞ|お入りください。||ジェラール、|警部さんに|話したのか?」
メグレは|白木の|踏み板が|頼りなさそうな|細い|階段を|上がった。||台所と|食堂と|リビングを|兼ねた|一間だった。||貧しく|みすぼらしかった。||テーブルには|青い|模様の|テーブルクロスが|かかっていた。

「誰が|殺したんだ?」と|ピエドブフが|突然|切り出した。
あまり|頭の|よくない人間だと|わかった。

「あの夜|出かけるとき、|今月の|仕送りも|ジョゼフからの|便りも|まだ|来ていないと|言っていた」

「仕送り?」

「ええ!||子供の|養育費として|毎月|百フランを|送ってきていた。||それが|最低限で」

ジェラールは|父が|またいつもの|愚痴を|始めると|感じて|遮った。

「警部さんが|聞きたいのは|そんなことじゃない!||証拠だ!||俺には|少なくとも|一つ|ある。||あの日|ジヴェに|来ていないと|言い張る|ジョゼフ・ペーテルスが|実際には|来ていたという|証拠が。||バイクで|来て」
41

「その証言なら|もう|意味がない。||別の|バイクの|人間が|現れて、|自分が|通ったのだと|名乗り出た」

「そうか」
そして|攻撃的に、

「やっぱり|俺たちの|敵なんだな?」

「誰の味方でも|ない!||誰の敵でも|ない!||真実を|探しているだけだ」
しかし|ジェラールは|せせら笑い、|父親に|大声で|言った。

「警部さんは|俺たちの|揚げ足を|取りに来ただけだ。||失礼しますよ、|警部さん。||飯を|食わなきゃ|ならないんで。||俺は|自分で|稼がなきゃ|ならないし、|事務所が|二時に|開くんです!」
話をする|意味は|あるのか?||メグレは|最後に|あたりを|見回し、|隣の部屋に|折りたたみ式の|子供用ベッドを|見つけて、|扉へ|向かった。
マシェールが|ムーズ・ホテルで|待っていた。||商用客たちは|ガラス扉で|仕切られた|小さな|別室で|食事を|していた。
しかし|カフェの|中でも、|テーブルクロスなしで|軽く|食べることが|でき、|何人かが|そうして|食べていた。

マシェールは|一人では|なかった。||肩が|化け物のように|広く、|腕が|長く|垂れた|小柄な男が|同じ|テーブルで|食前酒を|飲んでいて、|警部が|入ってくるのを|見て|立ち上がった。

「エトワール・ポレールの|船のりです!」と|マシェールが|報告した。||非常に|興奮していた。
「ギュスターヴ・カサンです」
メグレは|座った。||受け皿を|一目見て、|二人が|すでに|三杯目の|食前酒を|飲んでいると|わかった。

「カサンが|警部に|話したいことが|あるそうです」
男は|それを|待っていただけだった!||マシェールが|黙るやいなや、|カサンは|もったいぶって、|警部の肩に|身を乗り出して|しゃべり|始めた。


「言うべきことは|言わなきゃ|ならない。||ただ、|言ってくれと|言われるまでは|言わなくて|いい。||死んだ|親父も|よく|言っていた。||余計なことは|するな|ってね!」

「ビールを|一杯!」と|メグレは|近づいてきた|ウェイターに|言った。
42
メグレは|山高帽を|後ろに|ずらし、|外套の|ボタンを|外した。||それから|船乗りが|言葉を|探しているのを|見て|ぼやいた。

「一月三日の夜、|あんたは|完全に|酔っていたな」

「完全にというのは|本当じゃない!||何杯か|飲んでいたが、|まっすぐ|歩けていた。||それに|見たものは|ちゃんと|見た」

「フランドル人の|家の前に|バイクが|来て|止まるのを|見たか?」

「俺が?||とんでもない!」
マシェールは|メグレに|男の話を|遮らないよう|身振りで|合図し、|続けるよう|促していた。

「岸壁で|女を|見ました。||どこの女か|言いましょう。||いつも|店に|いない方の|姉妹で、|毎日|列車に|乗る方です」

「マリア?」

「そういう名前かも|しれない。||痩せていて|金髪の|女です。||あの|風の中に|いるのは|おかしかった。||船の|もやい綱が|バタバタ|鳴るほどの|風でした」

「何時ごろ?」

「寝に|帰ったとき。||八時ごろ|かも|しれない。||もう少し|後かも|しれない」

「彼女は|あんたに|気づいたか?」

「いや!||そのまま|行かずに、|税関の|倉庫に|くっついていた。||男でも|待っているのかと|思って、|面白いことに|なると|期待して」

「なるほど。||わいせつ行為で|二度|有罪に|なっているな」
カサンは|笑い、|腐った歯が|一列|現れた。||年齢不詳の男で、|まだ|褐色の髪が|額に|低く|生えていたが、|顔中が|しわだらけだった。
自分の|言葉の|効果を|非常に|気に|していて、|一言|言うたびに|まず|メグレを、|次に|マシェール警部を、|それから|後ろで|聞いている|客を|見回した。

「続けろ!」
43

「男なんか|待っちゃいなかった」
それでも|ためらいが|あった。||グラスを|一気に|飲み干し、|ウェイターに|怒鳴った。

「同じものを!」
そして|一息で:


「誰も|来ないか|確かめていたんです。||その間に|食料品店から|人が|出てきた。||店の方じゃなく、|裏口から。||細長い|何かを|運んでいて、|俺の船と|後ろに|係留している|レ・ドゥー・フレールの間の|ムーズ川に|投げ込んだ」

「いくらだ、ウェイター?」と|メグレは|立ち上がりながら|言った。
驚いた|様子も|なかった。||マシェールは|すっかり|拍子抜け|していた。||船乗りは|どう|思えばいいか|わからなかった。

「ついてこい」

「どこへ?」

「いいから|来い!」

「注文した|酒を|待っている」
メグレは|辛抱強く|待った。||主人に|数分後に|昼食を|食べに|来ると|伝え、|飲んだくれを|岸壁へ|連れて|いった。
みんな|食事の時間で、|岸壁は|がらんとしていた。||大粒の|雨が|降り始めていた。

「どこに|いたんだ?」と|警部は|訊いた。
税関の|建物は|知っていた。||カサンが|隅に|身を|縮めるのを|見た。


「そこから|動かなかったか?」

「もちろんです!||あんな|ことに|首を|突っ込みたく|なかったから!」

「その場所に|立ってみろ!」
メグレは|ほんの|数秒|そこに|立ち、|男の|額を|見ながら|言った。

「別の|話を|考えることだな!」

「別の話とは|どういう?」

「あんたの|話は|成り立たない。||そこからでは|食料品店も、|二艘の船の間の|川面も|見えない」

「そこと|言っても|つまり」

「違う!||もう|たくさんだ!||もう一度|言う、|別の|話を|考えろ!||納得のいく|話が|できたら|来い。||もしできなければ、|もう一度|塀の中に|入ることに|なるかもしれんぞ」
44
マシェールは|耳を|疑った。||失敗が|恥ずかしくて、|自分も|壁に|張りついて|警部の|言葉を|確かめていた。

「そうですね」と|彼は|ぼやいた。

船乗りの方は|答えようとも|しなかった。||頭を|下げていた。||メグレの|足元に|向けられた|皮肉な|険しい|視線が|感じられた。

「忘れるな。||別の話を|考えろ、|もっと|筋の通った|話を。||でなければ|塀の中だ!||来い、マシェール」
メグレは|踵を|返し、|パイプに|タバコを|詰めながら|橋の方へ|向かった。

「あの船乗りは|どう|思いますか?」

「今夜か|明日、|ペーテルス一家の|有罪の|新たな|証拠を|持って|来ると|思う」
マシェールは|途方に|暮れた。

「わかりません。||証拠が|あるなら」

「あるだろう」

「でも|どうやって!」

「俺が|知るか?||何か|見つけるだろう」

「自分の|身を|守るために?」
しかし|警部は|つぶやきながら|話を|打ち切った。

「火は|あるか?||マッチを|二十本も|使ったのに」

「たばこは|吸いません!」
マシェールには|聞こえたかどうか|わからなかった。

「そうか、|そうだったな」
- 結核患者の色気とは、|19世紀から20世紀初頭にかけての|文化的なイメージです。
当時のヨーロッパでは|結核患者には|独特の|美しさが|あると|信じられていました。
・肌が|透き通るように|白くなる
・頬が|上気して|バラ色に|なる
・目が|輝いて|見える
・体が|細く|繊細に|なる
・唇が|鮮やかな|赤みを|帯びる
ショパン、キーツ、チェーホフなど|芸術家や|詩人に|結核患者が|多く、「結核は|天才や|感受性の強い人がかかる病気」という|ロマンティックな|イメージが|ありました。「消えゆく美しさ」への|憧れが|あったのです。
↩︎ - ロシュフォールの洞窟(Grottes de Rochefort)とは、ベルギーのワロン地方、ロシュフォール近郊にある鍾乳洞です。
レス川による石灰岩の侵食によって形成された天然の洞窟群で、ワロン地方に位置しています。
ジヴェから|約二十五キロ、|ベルギー側に|入った|アルデンヌの|奥地にあります。小説でも|「ここから二十五キロ」と|正確に|書かれています。
地下六十メートルに|広がる|巨大な|洞窟で、一時間の|ガイドツアーが|楽しめます。
ベルギーの子供たちの多くが|遠足で|訪れる、ワロン地方を|代表する|観光地です。
四年前の|日曜日、|ジェルメーヌ、ジョゼフ、ジェラール、ペーテルス家の一人が|ここに|遠足に来た。|洞窟見学の後、|二組に|分かれて|森を|散歩した。|そこで|何かが|起きた。|これが|アンナの|下着に|ジェラールの|写真が|隠されていた|理由に|つながります。
↩︎




