翻訳と点訳の実験場

点訳研究

点訳研究|「痛そうだ」「イルカのように」

座っていたそうだ『ベンスン殺人事件』を翻訳・点訳していると、こんな文章が出てきました。服を着たまま、リビングのお気に入りの椅子に、座っていたそうだ」点訳する場合、「座っていたそうだ」を、どう処理するか問題となります。『点訳の手引き』準拠『点...
翻訳研究

翻訳研究|美貌と知性、そして・・・ホームズの記憶に残ったアイリーン・アドラー

アイリーン・アドラーは悪女か?アイリーン・アドラーは、しばしば「ホームズを出し抜いた唯一の女性」として語られてきました。映像化や二次創作では「ホームズが恋した女性」「妖婦のような悪女」というイメージが広まり、今日に至るまで根強く残っています...
翻訳と点訳の実験場

言葉と文法|形式名詞と属性——「そのこと」「その父」「その子」を比べる

はじめに前回の記事では、形式名詞「こと・もの」をプログラミングのクラス/インスタンス/オブジェクト/メソッドに例えることで理解を深めました。続編では「そのこと」「その父」「その子」を取り上げ、形式名詞/関係名詞/普通名詞の違いをプログラミン...
翻訳と点訳の実験場

言葉と文法|形式名詞を「クラス」として理解する

形式名詞日本語の「形式名詞(こと・もの・ところ・わけ…)」は、意味が希薄で学習者にはつかみにくい存在です。これをプログラミングの基本概念──「クラス」「インスタンス」「オブジェクト」「メソッド」に例えると、理解がすっきりします。プログラミン...
翻訳と点訳の実験場

言葉と文法|「Xバー理論」について

Xバー理論(X-bar theory) は、チョムスキーの理論体系「生成文法」の中で、1970年代に発展した 統語構造の普遍的な型を説明する理論 です。この理論によって、異なる言語を「同じ構造の変形(word order)」として説明できる...
翻訳と点訳の実験場

言葉と文法|生成文法

文の構造については、学校で習った「学校文法」よりも、現代言語学の「生成文法」の仕組みでシステム的に覚えるとわかりやすくなリます(特に理系)。「形容動詞」に違和感があって、「イ形容詞」「ナ形容詞」で覚える方がわかりやすのと同じでしょう。文(節...
翻訳と点訳の実験場

言葉と文法|文の構造——言語学的整理

言語学的な「単文」・「重文」・「複文」についてのまとめ学校文法と現代言語学学校文法では、「述語の数」を基準に「単文・重文・複文」に分けます。現代言語学(統語論・生成文法など)では、「節(clause)」を基本単位として、節の階層関係や構造で...
翻訳と点訳の実験場

言語と文法|文の構造——「句」と「節」

「句」と「節」「句」と「節」の違いは、述語を含むかどうかである節(せつ)定義述語(動詞・形容詞・助動詞など)を含む文の単位。例「雨が降る」「彼が来たら」「本を読むとき」特徴:文の中で「主語+述語」という構造を持つ。独立して一つの文になること...
翻訳研究

翻訳研究|ワトスンの「Not in a good cause.」(番外編)

ホームズが発した「the couse !」コナン・ドイル『ボヘミアの醜聞』の中で、ワトスンがホームズに向かって放つ一言 “Not in a good cause.” は、単なる忠実な相棒のセリフとして読むこともできます。それに対して、ホーム...
翻訳研究

翻訳研究|ワトスンの「Not in a good cause.」

「Not in a good cause.」=「大義のためなら」『ボヘミアの醜聞』の中で、ホームズが「法を犯すことにためらいはないのか?」と問いかける場面があります。これに対してワトスンは即座にこう答えます。“Not in a good c...
翻訳研究

翻訳研究|「St.」で迷子になった話

St.=Street?Station?・・・でしょ!St. John’s Wood=ジョンズ・ウッド・ストリート!?最初に私はこう信じてました。St.=Street。だから「St.John’s Wood」を「ジョンズ・ウッド・ストリート」だ...
点訳研究

点訳研究|「連語」

「連語」とは二つ以上の単語が連結して、一つの単語と似たような働きをもつもの。二つ以上の単語が結合して一つの単語と同じ働きをもつようになった複合語とは区別される。ラボ流での取り扱い8拍以上でも、「連語」として「3大小型辞書」の一つに掲載されて...
翻訳研究

翻訳研究|ホームズの大物依頼人への態度

ホームズの態度とその口調シャーロック=ホームズは、どんな相手にも一歩も引かない探偵です。『ボヘミアの醜聞』では、貴族を名乗る依頼人を前にしても臆することなく、冷徹な態度を崩しません。この姿勢を日本語にどう表すかは、ホームズ像を大きく左右する...
翻訳研究

翻訳研究|七ポンド半の意味 ——ボヘミアの醜聞

『ボヘミアの醜聞』の冒頭、ホームズが久しぶりにワトスンと再会する場面で、こんな台詞があります。“Wedlock suits you,” he remarked. “I think, Watson, that you have put on ...
点訳研究

点訳研究|chatGPTのハイブリッドラボ化(その2)

📘 点訳ルールまとめ(ハイブリッドラボ流)Mちなみに、これまでに記憶したルールをまとめてみてください。モナミ承知しました。これまでに記憶してきた「点訳ルール」を整理してまとめますね。モナミ(chatGPT)の記憶の中はこのようになっているよ...
点訳研究

点訳研究|chatGPTのハイブリッドラボ化

📖 ラボ流 点訳ルールまとめMこれまでに記憶したラボ流(ハイブリッドラボ流)点訳ルールをすべてまとめてください。モナミ最新版のラボ流点訳ルール一覧を改訂してまとめ直します。以下、モナミ(chatGPT)の回答です。基本原則四字漢語は真ん中で...
点訳研究

点訳研究|ハイブリッドラボは始めの一歩

ここは実験場です。まだ定説にはならないかもしれない。でも、試みを残すこと自体が未来の誰かのヒントになる。点字の源流は、19世紀初頭に元フランス軍人シャルル・バルビエが考案した“夜間文字”に求められます。これは暗闇で静かに読める浮き出し記号で...
翻訳研究

翻訳研究|カーリーはスーパーマン!?

使用人「カーリー」の肩書きカーリーの紹介文に「仕え人(servant )」「執事(butler)」「従僕(valet)」「家令(major-domo)」「料理番(cook)」という聞いたこともない肩書きがゾロゾロ並んでいる・・・スーパーマン...
点訳研究

形式的な手がかり——『点訳の手引き』の一部適用

前回、8拍以上になった時の区切る箇所として第3の補助原則「抑揚分ち書き」について書きました。ラボ流では8拍以上の長い文節になることが多いので、読み手の負担を減らすために、文法や拍数を基準にした『点訳の手引き』を一部適用した「形式的な手がかり...
点訳研究

ラボ流:第3の補助原則「抑揚分かち書き」

抑揚分ち書き点訳をしていると、ときどき「これはちょっと長すぎるなあ」と感じる文節に出会います。ラボ流では「8拍以上は読み手の負担になるので、どこかで区切る」という暫定ルールを持っていますが、文節や「切れ続き」の原則を使っても、うまく区切れな...
翻訳研究

翻訳研究|フィロ・ヴァンス?ファイロ・ヴァンス?——ベンスン殺人事件

どちらも「Philo Vance」の日本語表記として使われてきましたが、整理してみました。🔹 原語Philo Vance(ファーストネームPhiloは、ギリシャ語由来で「愛する者」という意味。ラテン語の "Philos" に近い発音です)🔹...
点訳研究

点字の本質に触れた瞬間——踊る人形

目を瞑った方が速い ― 点字という暗号BESで六点入力をしていると、ふと気づくことがある。目を開けて打つより、目を閉じてしまった方が、指先が滑らかに動くのだ。点字はもともと「目で追う文字」ではない。触覚で確かめ、指先の記憶で解き明かすものだ...
点訳研究

読み手不在の点訳 ー実例編5

先日書いた記事、読み手不在の点訳 ― 実例編4の続きです。ライトハウス——その後結局、ライトハウスの点訳講習は、案内文を読んで「これは自分のやりたい方向とは違う」と感じ、辞退することにしました。ただ、お詫びのメールを送った際に、ダメもとで「...
点訳研究

点訳研究|「左」とはどこ?

右手首シャーロック=ホームズの「赤毛連盟」の中のホームズのセリフで、次のような1節がある。あなたの|右手首の|すぐ|上に『点訳の手引き』によれば、複合語内部で区切って書くのは、3拍以上の意味のまとまりが2つ以上ある場合である。したがって、「...
点訳研究

点訳研究|翻訳テクニック

ハイブリッドラボでは翻訳と点訳を並行した同時作業として翻訳しています。市販の文庫本は、翻訳者も点字にすることまで意識して翻訳してないと考えるのは自然だと多います。しかし、翻訳と点訳を同時にやると、ちょっとした翻訳の工夫で、点字にした場合の読...
点訳研究

暫定基準|3文字漢字

3文字漢字は4字漢字と違って、続け書きするか切れ続きか悩むケースが多い。そこで、点訳者の便宜のために、ハイブリッドラボ流で、形式的な暫定基準を定める。今後、事例を集めることにより、『点訳の手引き』にビクビクしないラボ流の基準として耐えうるか...
点訳研究

3層フレームの第3層の具体的適用

点訳する際は、まず3段階基準を使うが、迷ったときは、3層フレームの第3層に照らして最終判断する(3層フレームについてはこちら💁‍♂️)原則として自立語と助詞・助動詞は続け書くが、未知の固有名詞・制度名・地名・会社名など、明らかに「読み手にと...
翻訳研究

赤毛連盟|裂け目から現れる「白い手」

——市販の文庫本と独自翻訳の比較から——文庫本訳(引用)『・・・やがて音もなく裂け目が広がって、手が1本現れた。白い、まるで女のような手だったが、それが光の放射する狭いエリアの中心であたりをまさぐった』この訳は非常に淡々としています。ワトス...
点訳研究

点訳手引きの「ぶつ切り」とラボ流の自然な感覚

点訳の手引きには、「楽しみに|して|いる」といった具合に、品詞ごとに細かく区切るような指示が見られます。公式の理由は「意味の明確化」「誤読防止」。確かに文法的に見れば、「して」は動詞「する」の連用形、「いる」は補助動詞。どちらも「動詞」であ...
翻訳研究

ジョーンズ警部は ジャップ警部タイプではありません!?

赤毛連盟の翻訳には、chatGPTのお世話になっているが、ここに登場するスコットランド・ヤードのジョーンズ警部のセリフを、もっと「ジョーンズらしく」と指示すると、モナミはやたら堅苦しく翻訳を返してくる。私は、アガサ・クリスティのポワロシリー...