『Brille Editor System ver.8』用の『BESファイル』を、ZIPファイルに圧縮して公開しています。(2026年4月8日現在未完成)
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自然と|そうなってしまい、|なかなか|抜け出せない|状況というものが|ある。||フェカンに|一人でいた|マリー・レオンネクは、|共通の|友人の|紹介で|メグレ夫妻に|預けられ、|一緒に|食事を|していた。
そこへ|婚約者が|現れた。||ホテルの|昼食の|鐘が|鳴った時、|四人は|浜辺に|いた。
ピエール・ル・クランシュは|一瞬|ためらい、|困った|顔で|周りを|見た。

「さあ|行こう!||一人分|食器を|増やせばいい」と|メグレが|言った。

そして|妻の|腕を|取って|防波堤を|渡った。||若い|二人が|黙って|後に|続いた。||いや、|マリーだけが|低い|声で、|しかし|きっぱりと|話していた。

「あの子が|彼に|何を|言ってるか|分かるか?」と|警部は|妻に|聞いた。

「ええ!||今朝|十回も|わたしに|繰り返して|確かめてたから。||何が|あっても|恨んでいないって|言ってるの。||女の|ことには|触れずにね。||知らないふりを|しながら、|でも|〈何が|あっても〉という|言葉に|力を|込めると|言ってた。||かわいそうに!||世界の|果てまでも|追いかけていく|子よ」

「やれやれ!」と|メグレは|溜め息を|ついた。

「どういう|意味?」

「何でもない。||僕たちの|テーブルは|あれか?」
昼食は|静かだった、|静かすぎるほど。||テーブルが|ひしめき合っていて、|大きな|声では|とても|話せなかった。
メグレは|ル・クランシュを|気楽に|させようと|あえて|観察するのを|避けていた。||しかし|無線の|様子は|やはり|気になった。||悩んだ|顔の|マリー・レオンネクも|同じように|心配していた。

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若者は|暗く|打ちのめされた|ままだった。||食べ、|飲み、|質問に|答えた。||しかし|心は|ほかのところに|あった。||何度か|後ろで|足音がすると、|危険を|感じたように|ぎくりとした。
食堂の|大きな|窓は|全開で、|太陽に|きらめく|海が|見えた。||暑かった。||ル・クランシュは|景色に|背を|向けて|座っていたが、|時々|神経質な|動きで|突然|振り返り、|水平線を|確かめた。
会話を|支えていたのは|マダム・メグレで、|主に|マリーに|話しかけ、|沈黙が|重く|なりすぎないように|他愛ない|話をしていた。
ドラマとは|無縁の|雰囲気だった。||家族向け|ホテルの|風景。||皿や|グラスの|安心できる|音。||テーブルには|ボルドーの|ハーフボトルと|ミネラルウォーターの|瓶。
デザートの時、|支配人が|近づいてきて|こう|尋ねた。

「お部屋を|ご用意しましょうか?」
彼が|見ていたのは|ル・クランシュだった。||婚約者と|嗅ぎ取ったらしい。||そして|おそらく|メグレ夫妻を|マリーの|両親と|思ったのだろう!
無線係は|午前中の|尋問の|時と|同じ|仕草を|二、三度|した。||素早く|手を|額に|当てる|動作。||ひどく|力なく、|疲れ切った|動きだった。

「これから|どう|しますか?」

食事を|終えた|客たちが|散っていった。||四人は|テラスに|立っていた。

「少し|座りませんか?」と|マダム・メグレが|提案した。
砂利浜に|ハンモック椅子が|あった。||メグレ夫妻は|腰を|落ち着けた。
若い|二人は|しばらく|ぎこちなく|立っていた。

「少し|歩きませんか?」と|マリー・レオンネクが|やっと|マダム・メグレに|向けて|曖昧な|微笑みを|浮かべながら|言った。
メグレは|パイプに|火を|つけ、|妻と|二人に|なると|ぼそっと|言った。

「今度こそ|義理の|父親に|見えたんじゃないか!」
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「どうして|いいか|分からないのよ。||二人とも|立場が|難しい」と|妻は|目で|追いながら|言った。
「見てよ。||ぎこちないわ。||違うかも|しれないけど、|マリーの方が|婚約者より|しっかりしてると|思う」
確かに|ル・クランシュは|気の毒な|様子だった。||遠くから|見ると、|連れにも|構わず|何も|言わず、|細い|体を|だらだらと|歩かせている|だけのように|見えた。||それでも|マリーは|一生懸命に|努力し、|気を|紛らわせようと|しゃべり、|明るく|見せようと|しているのが|伝わってきた。
浜辺には|ほかにも|グループが|いた。||しかし|白い|ズボンを|はいていない|男は|ル・クランシュだけだった。||普段着の|背広姿で、|余計に|暗く|見えた。

「彼は|いくつ?」と|マダム・メグレが|聞いた。
夫は|椅子に|もたれ、|目を|細めて|答えた。

「十九歳。||まだ|子どもだ。||猫に|狙われた|鳥(まな板の上の鯉)1|みたいなもんだ」

「どうして?||無実じゃないの?」

「殺してはいないと|思う。||断言できる。||それでも|あいつは|もう|助からないだろう。||見てみろ!||あの子も|見ろ!」

「まあ!||二人きりに|なれば|キスくらい|するでしょう」

「そうかもしれない」
メグレは|悲観的だった。

「彼女は|彼より|少し|年上なだけだ。||彼を|愛している。||いい|妻に|なろうとしている。||だが……」

「なぜ|そう|ならないと|思うの?」

「直感だ。||若くして|死んだ人の|写真を|見たことが|あるか?||まだ|健康だった|頃に|撮られた|写真なのに、|どこか|暗い|ものが|漂っていると|いつも|感じる。||悲劇の|犠牲に|なる|運命を|持つ者は、|その顔に|すでに|刻み込まれて|いるように|見える」

「あの子が|そうだと?」

「ずっと|暗い|男だ!||生まれた時から|ずっとそうだ!||貧しく|生まれ、|貧しさに|苦しみ、|流れに|逆らって|泳ぐように|必死で|働いてきた!||自分より|上の階層の|素敵な|娘と|婚約まで|こぎつけた。||でも|信じられない。||見てみろ。||二人とも|もがいている。||楽観的に|なろうとしている。||自分たちの|人生を|信じようと|している」
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メグレは|きらめく|海を|背景に|浮かび上がる|二つの|シルエットを|目で|追いながら、|低く|静かな|声で|話した。

「表向き|捜査の|指揮を|執っているのは|誰なの?」

「ジラール、|ル・アーヴル|機動捜査隊の|警部だ。||君は|知らないと|思うが。||頭の|切れる|奴だ」

「彼は|有罪だと|思っているの?」

「いや!||それに|証拠も|真剣な|推定も|何も|ない」

「あなたは|どう|思ってるの?」
メグレは|家並みに|隠れて|見えない|トロール船を|見ようとするように|振り返った。

「少なくとも|二人の|男にとって|悲劇的な|航海だったと|思う。||帰港後|ファリュ船長が|もはや|生きて|いられなくなるほど、|無線係が|普通の|生活に|戻れなくなるほど|悲劇的だった」

「一人の|女のために?」
彼は|直接|答えずに|続けた。

「そして|ほかの|者たち、|ドラマの|外にいた者たち、|機関室の|男たちまでが、|知らぬうちに|影響を|受けた。||みな|険悪で|不安な|様子で|帰ってきた。||三か月間、|二人の男と|一人の女が|後部の|船室の|まわりを|うろついた。||舷窓の|開いた|暗い|隔壁が|いくつか。||それだけで|十分だった」

「ある事件に|あなたが|こんなに|心を|動かされるのは|珍しいわね。||三人の|登場人物と|言うけど|大海原の|真ん中で|何を|したというの?」

「そうだ。||何を|したのか?||ファリュ船長を|死に|追いやるほどの|何かを!||今も|なお|あの二人を|打ちのめすほどの|何かを。||砂利浜で|壊れた|夢の|かけらを|探しているように|見える」
二人は|腕を|ぶらぶらさせながら|近づいてきた。||礼儀上|メグレ夫妻の|ところに|戻るべきか、|遠慮して|離れていた方が|いいか|判断できずにいた。

散歩の|間に|マリー・レオンネクは|すっかり|気力を|失っていた。||彼女は|マダム・メグレに|失望した|目を|向けた。||彼女の|あらゆる|試み、|あらゆる|働きかけが|絶望か|無気力の|壁に|跳ね返されたことが|見てとれた。
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マダム・メグレは|おやつを|食べる|習慣が|あった。||四時頃、|四人は|ホテルの|テラスに|陣取り、|縞模様の|パラソルの|下に|座った。||パラソルが|場に|表向きの|明るさを|与えていた。
二つの|カップから|ホットチョコレートの|湯気が|立っていた。||メグレは|ビールを、|ル・クランシュは|ブランデーの|水割りを|注文していた。
クワンペールの|小学校教師で、|無線係の|ために|メグレに|助けを|求め、|マリー・レオンネクを|連れてきた|ジョリサンの|話をしていた。||当たり障りのない|言葉を|交わしていた。

「地球上で|一番|いい人です」
確信もなく|このテーマを|繰り返した。||話さなければ|ならなかったから。||突然|メグレの|目が|防波堤沿いを|歩いてくる|カップルに|向いて|点滅した。
アデルと|ガストン・ビュジエだった。||ビュジエは|ひょろりとして|ポケットに|手を|突っ込み、|麦わら帽を|後ろに|ずらして|のんびりした|足取りで|歩いていた。||アデルは|いつも通り|はつらつと|挑発的だった。

『気づかなければ|いいが!』と|警部は|心の中で|思った。

その瞬間、|アデルの|視線が|彼と|交わった。||女は|立ち止まり、|止めようとする|男に|何か|言った。
手遅れだった!||彼女は|通りを|渡った。||テラスの|テーブルを|一つ一つ|検分し、|メグレたちに|一番|近い|席を|選んで、|マリー・レオンネクが|真正面に|なるように|腰を|下ろした。
男は|肩を|すくめながら|後に|続き、|警部の|前を|通る|時に|帽子の|ふちに|手を|触れ、|椅子に|またがった。

「何に|する?」

「チョコレートなんて|もちろん|御免だわ!||キュメルを|もらう!」
これは|すでに|宣戦布告では|なかったか?||チョコレートの|話を|しながら、|彼女は|マリー・レオンネクの|カップを|じっと|見ていた。||メグレは|マリー・レオンネクが|ぎくりと|するのを|見た。
彼女は|アデルを|一度も|見たことが|なかった。||でも|気づいたのでは|なかったか?||ル・クランシュを|見ると、|彼は|顔を|そむけていた。
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マダム・メグレは|夫の|足を|二度|つついた。

「四人で|カジノまで|行かない?」
彼女も|気づいていた。||しかし|誰も|返事を|しなかった。||隣の|テーブルでは|アデルだけが|しゃべり、|ため息を|ついた。

「暑い!||ジャケットを|持ってて、|ガストン」
そして|スーツの|上着を|脱いで、|ピンクの|シルクの|ブラウス姿を|さらした。||豊かな|肉体、|むき出しの|腕。||視線は|一瞬も|娘から|離れなかった。

「グレーが|好きなの?||海辺で|そんな|暗い|色を|着るのは|禁止に|すべきじゃないかしら?」
馬鹿げた|挑発だった。||マリー・レオンネクは|グレーを|着ていた。||アデルは|どんな|手を|使っても|すぐに|攻撃しようとしていた。

「ねえ、|ボーイさん!||いつに|なったら|来るの?」
甲高い|声だった。||わざと|下品さを|誇張しているように|見えた。
ガストン・ビュジエは|危険を|嗅ぎとった。||アデルの|性格を|知っていた。||小声で|何か言った。||しかし|彼女は|大声で|言い返した。

「それが|どうしたの?||テラスは|みんなの|ものでしょ?」
マダム・メグレだけが|背を|向けていた。||メグレと|無線係は|横顔を、|マリー・レオンネクは|正面を|向けていた。

「みんな|同じよね?||二人きりの|時は|足元に|すがりつくくせに、|連れがいると|挨拶も|しない人が|いるのよ!」
そして|笑った!||不快な|笑いだった!||真っ赤に|なった|娘を|じっと|見つめた!

「いくらですか?」と|ビュジエは|早く|終わらせようと|ボーイに|聞いた。

「まだ|急がなくて|いいわ!||同じものを|もう一杯。||それから|ピーナッツを|持ってきて」

「ございません」

「探して|きなさいよ。||そのために|給料を|もらってるんでしょ?」
ほかの|テーブルも|二つ|埋まっていた。||視線が|見過ごせない|新しい|カップルに|集まっていた。||メグレは|心配していた。||メグレは|心配そうだった。||まずい|ことに|なりかねない|この|場面を|切り上げたいと|思っていたに|違いない。
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しかし|一方で、|目の前に|ルクランシュがいた。||視線の下で|震えている|彼を|とらえていた。
解剖のように|興味深かった。||ル・クランシュは|動かなかった。||女の|方を|向いては|いなかったが、|左側に|ぼんやりと|彼女が|見えているはずだった。||少なくとも|ブラウスの|ピンクの|染みは|目に|入っているはずだった。
瞳は|虚ろで|くすんだ|灰色だった。||テーブルに|置かれた|手が|ゆっくりと、|ゆっくりと|海の|生き物の|触手のように|閉じていった。
まだ|何も|予測できなかった。||立ち上がって|逃げるのか?||しゃべり続ける|女に|飛びかかるのか?||それとも……
違う!||そのどれでも|なかった!||百倍も|衝撃的な|別のことが|起きた。||閉じていったのは|手だけでは|なかった。||彼の|全存在が。||縮んでいった。||自分の|中に|閉じこもっていった。
目が|顔色と|同じ|灰色に|なっていった。
動かなかった。||息を|していたか?||ふるえ一つ|なかった。||引きつり一つ|なかった。||しかし|この|ますます|完全に|なっていく|静止が|幻惑的だった。

「妻子ある|別の|愛人の|ことを|思い出すわ。||三人の|子どもが|いたの」
マリー・レオンネクは|必死に|息を|して、|気持ちを|保つために|チョコレートを|一息に|飲んだ。

「地上で|一番|情熱的な|男だったわ。||会いに|来なくていいと|言うと、|踊り場で|すすり泣くの。||ほかの|住人が|みんな|大喜びするほどね。||『アデルちゃん、|かわいい|僕の|宝物‥‥』||まあ、|そんな|調子よ!||ある日曜日、|奥さんと|子どもたちと|散歩|しているところに|ばったり。||奥さんが|聞いたの。
『あの女は|誰なの?』
すると|彼が|まじめな|顔で|言うの。
『どう見ても|売春婦だよ!||あんな|おかしな|服の|着方を|見れば|分かる!』」
アデルは|笑った。||人に|見せるために|ポーズを|とっていた。||自分の|態度が|周りの|顔に|与える|効果を|うかがっていた。
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「お前みたいに|図太い|神経の|人間も|いるんだな」
連れの男が|また|小声で|彼女を|黙らせようとした。


「うるさいわね、|あなたも!||腰抜けじゃ|あるまいし。||飲み物の|代金は|払ってるでしょ?||誰にも|迷惑を|かけてないんだから、|文句を|言われる|筋合いは|ないわ。||ねえ、|ボーイさん、|ピーナッツは?||キュンメル2も|もう一杯|持ってきて」

「そろそろ|行きましょうか」と|メグレ夫人が|言った。
もう|遅かった。||アデルは|すでに|勢いづいていた。||もし|誰かが|立ち上がれば、|何が|何でも|騒ぎを|起こしてみせると|いう|気配が|漂っていた。
マリー・レオネックは|テーブルを|じっと|見つめていた。||耳は|真っ赤で、|目は|輝き、|口は|苦悶で|半開きに|なっていた。
ル・クランシュは|まぶたを|閉じていた。||そのまま|盲目のように|座り、|表情は|こわばり、|テーブルの上の|手は|力なく|静止していた。
メグレが|これほど|じっくりと|彼を|観察できたのは|初めてだった。||その顔は|同時に|とても|若くも|あり、|とても|老いてもいた。||苦しい|幼少期を|送った|思春期の|若者に|よく|見られる|顔だった。
ル・クランシュは|背が|高く、|平均より|高かった。||しかし|肩は|まだ|大人の|男のそれでは|なかった。
手入れの|行き届かない|肌には|そばかすが|点々と|あった。||その日は|髭を|剃っていなかったため、|顎と|頬に|金色の|光沢が|浮かんでいた。
彼は|美男では|なかった。||人生で|笑うことは|あまり|なかったはずだ。||しかし|暖炉も|ない|部屋で、|大西洋の|波に|揺れる|船室で、|粗末な|ランプの|明かりの|下で、|夜更かしを|し、|本を|読み、|字を|書いてきたのだった。

「つまる|ところ、|私が|嫌気が|さすのは、|正直者ぶってる|連中が|私たちと|たいして|変わらない|ってことよ」
アデルは|苛立っていた。||目的を|達するためなら|何でも|言いかねない|様子だった。

「たとえば|うぶな|娘の|ふりをして、|どんな|売春婦も|しないような|やり方で|男に|つきまとう|女の子とかね」
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ホテルの|主人が|敷居のところで、|客たちに|介入すべきかどうかを|問いかけるような|目つきで|様子を|うかがっていた。

メグレの|目には|ル・クランシュだけが|大写しに|映っていた。||頭が|少し|前に|傾いていた。||目は|開かれていなかった。
しかし|閉じた|まぶたから|涙が|一粒ずつ|飛び出し、|睫毛を|押し分け、|たゆたい、|頬を|くねくねと|伝い|落ちていた。
男が|泣くのを|見るのは|初めてでは|なかった。||しかし|これほど|胸を|わしづかみに|されたのは|初めてだった。||おそらく|その|静けさと、|全身の|微動だにしない|様子の|せいだろう。
ル・クランシュの|体の中で|生きていたのは、|その|流れる|真珠だけだった。||それ以外は|すべて|死んでいた。
マリー・レオネックは|何も|気づいていなかった。||アデルは|しゃべり続けようと|していた。
そのとき、|一瞬の後、|メグレに|ある|直感が|走った。||テーブルの上の|手が|ひそかに|緩んでいた。||もう|一方の手は|ポケットの|中だった。

まぶたが|一ミリほど|わずかに|開き、|視線の|かけらが|漏れ出した。||その|視線が|探していたのは|マリーだった。
警部が|立ち上がった|まさに|その瞬間、|銃声が|炸裂し、|叫び声と|椅子の|ざわめきの|中で|一斉に|騒ぎ立てた。
ル・クランシュは|すぐには|動かなかった。||ただ|上体が|ひそかに|左へ|傾き、|口が|かすかな|うめき声とともに|開いた。
マリー・レオネックは|なかなか|理解できなかった。||武器が|見えなかったからだ。||彼に|飛びつき、|膝を|抱き、|右手を|握り、|うろたえながら|振り返った。


「警部!||いったい|何が?」
メグレだけが|すべてを|察していた。||ル・クランシュは|ポケットの|中に|リボルバーを|持っていた。||どこで|手に|入れたか|神のみぞ|知る。||朝に|刑務所を|出た|ときには|持っていなかったのだから。
そして|ポケットの|中から|自分を|撃ったのだ!||アデルが|しゃべっている|あいだ、|目を|閉じ、|待ち、|おそらく|躊躇しながら、|長い|時間|握りしめていたのは|リボルバーだったのだ。
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弾丸は|腹か|脇腹に|当たったようだった。||腰の|高さで|上着が|焦げ、|ぼろぼろに|裂けているのが|見えた。
「医者を!||警察を!」と|どこかで|叫ぶ声が|した。
医者が|やって|来た。||水着姿だった。||ホテルから|百メートルと|離れていない|浜辺に|いたのだ。

ル・クランシュが|倒れそうに|なった|瞬間、|誰かが|支えた。||食堂へ|運ばれていった。||マリーは|半狂乱で|その|行列の|後を|ついていった。
メグレは|アデルにも|その愛人にも|かまっている|暇が|なかった。||カフェに|入った|瞬間、|青ざめた|アデルが|大きな|グラスを|あおっているのが|目に|入った。||グラスに|歯が|ぶつかって|音を|立てていた。
自分で|注いだのだ。||まだ|瓶を|手に|持っていた。||もう一度|グラスを|満たした。

警部は|それ以上|気に|とめなかった。||しかし|ピンクの|ブラウスの|上の|青白い|顔と、|とりわけ|クリスタルの|グラスに|ぶつかる|歯の|音が|脳裏に|焼きついた。
ガストン・ビュジエの|姿は|見えなかった。||食堂の|ドアが|閉められた。

「ここには|いないでください。||落ち着いて!||医者が|静かに|してほしいと|言っています」と|店主が|客たちに|言った。
メグレが|扉を|押して|入ると、|医者が|ひざまずいているのが|見えた。||メグレ夫人が|傷ついた男に|飛びつこうと|する|半狂乱の|マリーを|押さえていた。

「警察です」と|警部は|医者に|小声で|言った。

「この|女性たちを|外に|出してもらえませんか?||服を|脱がせなければ|なりませんし」

「わかった」

「手伝いが|二人|必要です。||救急車にも|すぐ|電話を」
医者は|まだ|水着姿だった。

「重傷ですか?」

「傷を|探ってみないと|何とも|言えません。||それに|これを|見れば|おわかりでしょう」
そうだ。||肉と|衣服が|ぐちゃぐちゃに|混ざり|合った|その|凄惨な|光景を|見て、|メグレには|わかった。

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テーブルには|夕食の|食器が|並んでいた。||メグレ夫人が|マリー・レオネックを|連れ出していった。||フランネルの|ズボンを|はいた|若者が|遠慮がちに|言った。
「お手伝いできますか?||薬学生なんです」
斜めに|差し込む|真っ赤な|夕陽が|窓ガラスに|当たり、|あまりにも|まぶしかったので、|メグレは|よろい戸を|閉めに|行った。

「足を|持ち上げて|もらえますか?」
昼間、|ハンモックチェアに|だらりと|座りながら、|妻に|言った|言葉を|思い出した。||マリー・レオネックの|小柄で|活発な|シルエットの|隣で、|ひょろりとした|シルエットが|浜辺を|歩いているのを|目で|追いながら。
『猫の|えじきになる|鳥だな』
ファルー船長は|到着してすぐ|死んだ。||ピエール・ル・クランシュは|長い|あいだ、|激しく|もがき続けた。||おそらく|目を|閉じ、|片手を|テーブルの上に、|もう一方を|ポケットの|中に|入れたまま、|アデルが|観客に|向けて|しゃべり続けている|あいだも、|まだ|もがいて|いたのかもしれない。
- この場面でメグレが言いたいのは——ル・クランシュは殺人犯では|ないかも|しれないが、何か|重大な|秘密を|抱えており、それが|彼を|じわじわと|追い詰めている。||もがいても|もがいても、|すでに|罠に|かかった|鳥のように、|逃れられない|運命に|向かっていると|メグレには|見えている——ということです。
メグレの|悲観的な|直感が|この一言に|凝縮されています。
↩︎ - キュンメル(Kümmel)は、キャラウェイシード(セリ科の植物の種子で、日本ではヒメウイキョウ)を主原料とした蒸留酒(リキュール)です。
北欧やバルト海沿岸地方が発祥で、ほのかな甘みとスパイシーな香りが特徴です。19〜20世紀のヨーロッパでは広く飲まれていました。
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