本作『怪盗レトン』は、ジョルジュ・シムノンのメグレ警部シリーズ、最初の作品と言われています。
怪盗レトンは、原文の『ピエトル=ル=レトン』(ラトビア人のピエトルという意味)とはかなり異なる題名になってます。
おそらく、最初に日本語訳が出版されたとき、おなじフランス人作家で当時日本でも人気だった、モーリス・ルブランの「怪盗ルパン」が意識されていたのかもしれません。
また、現代でこそバルト3国のひとつ「ラトヴィア」という国が存在しますが、当時は旧ソ連の時代で、日本ではラトヴィアという国の知名度が高くなかったということもあると思われます。
メグレ警部シリーズは、前半の読み進めて拾った材料だけで、読者が謎の解明することは困難です謎解きゲームを楽しむ読者にはお勧めできません。
この作品は、推理小説というよりも、レイモンド・チャンドラーの探偵フィリップ・マーロウのような、ハードボイルド系ノアール小説として読んだ方がいいでしょう。
しかし、読み進めているうちに、まさにミステリー(謎)の部分が徐々に解き明かされていくのところは推理小説として十分通用するものと思います。
また、初登場らしく、メグレ警部の人となりの描写が多く描かれています。メグレのこのときの一連の捜査は、後続するシリーズの中で取り上げられることもあるくらい、メグレにとっては過酷な仕事だったことがわかります。