ページ49の内容を確認します。ページ49の翻訳です。

その朝、|憲兵の|伍長1は、|警察官に|課せられた|仕事について|魅力的な|イメージを|抱いたに|違いない。
朝の|四時から|起きていて、|自転車で|すでに|三十キロほど|走ってきた。||最初は|肌寒い|早朝の中を、|次第に|じりじりと|強くなる|日差しの中を。||そして|宿泊客名簿の|定期検査の|ために|ホテル・ド・ラ・ロワールに|着いた。
十時だった。||宿泊客の|ほとんどは|川沿いを|散歩したり、|川で|泳いだりしていた。||馬商人が|二人、|テラスで|話し込み、|主人は|手に|タオルを|持って|テーブルと|鉢植えの|月桂樹の|並びを|直していた。

「警部さんに|ご挨拶して|いかれますか?」|と|タルディヴォンが|声を|かけた。
そして|声を|落として|打ち明け話を|するように|続けた。


「ちょうど|今、|犯行現場の|部屋に|おられますよ!||パリから|書類が|山ほど|届いて、|大きな|写真も|来たんです」
そんな|わけで|少し|後、|伍長は|ドアを|ノックして|詫びを|入れた。

「主人に|誘われまして、|警部。||現場検証の|最中と|聞いて|興味が|わきまして。||パリでは|特別な|方法が|おありだと|聞きます。||もし|よろしければ、|拝見しながら|勉強させて|いただければ|幸いです」
素直で|人好きの|する|丸くて|赤い|顔の|好青年だった。||鋲打ちの|靴に|ゲートル、|どこに|置いて|いいか|わからない|制帽姿で、|できるだけ|身を|縮めようとしていたが、|それも|なかなか|難しかった。
ページ50の内容を確認します。ページ50の翻訳です。

窓は|大きく|開け放たれていた。||朝の|日差しが|イラクサの|小道に|真正面から|差し込み、|逆光で|部屋の|中は|ほとんど|薄暗かった。||シャツの|袖まくりで、|パイプを|口に|くわえ、|硬い|カラーを|外して|ネクタイを|ゆるめた|メグレは、|憲兵が|目を|見張るほど|くつろいで|見えた。

「さあ、|こちらに|座りなさい。||でも、|見ても|面白いものは|何もないよ」

「謙遜が|過ぎますよ、|警部」

あまりにも|無邪気な|言い方に、|メグレは|笑みを|隠すため|顔を|そらした。||部屋には|事件に|関わる|ものが|すべて|持ち込まれていた。||赤みがかった|唐草模様の|更紗の|テーブルクロスから|何も|読み取れないと|確認した|上で、|法医学者の|報告書から|その|朝|司法鑑識課から|届いた|現場と|被害者の|写真まで、|書類を|一面に|広げていた。
さらに、|科学的な|根拠より|むしろ|迷信めいた|感覚から、|黒い|大理石の|暖炉棚の|上に、|真鍮の|燭台の|隣に、|エミール・ガレの|写真を|置いていた。
床には|絨毯が|なかった。||楢の|板張りは|ニスが|かかっていて、|最初に|調べた|捜査官たちが|発見時の|遺体の|輪郭を|チョークで|描いていた。
外からは、|緑の中に|生き生きとした|ざわめきが|湧き上がってきた。||鳥の|さえずり、|木の葉の|そよぎ、|蝿の|羽音、|道路の|遠くで|聞こえる|鶏の|鳴き声、|そして|折々に|鍛冶屋の|鉄床を|打つ|鎚の|音が|それに|リズムを|刻んでいた。
テラスから|くぐもった|声が|聞こえて|くる|ことも|あれば、|吊り橋を|渡る|馬車の|音が|届く|こともあった。

「書類に|不足は|ありませんね!||こんなにあるとは|思いませんでした」
だが|警部は|聞いていなかった。||落ち着いた|様子で|パイプを|ゆっくり|吸いながら、|遺体の|足が|あった|場所に、|十年ほど|着込んで|光沢が|出ているのに|あと|十年は|もちそうな|ほど|目の|詰んだ|黒い|ドレスパンツを|床に|広げていった。

ページ51の内容を確認します。ページ51の翻訳です。

同じように|メグレは|モスリンの|シャツと、|その|定位置に|糊の|きいた|プラストロンを|広げた。||しかし|全体が|形を|なしたのは、|ズボンの|裾の|端に|ゴム入りの|靴を|置いたときだった。
それは|遺体とは|似ても|似つかなかった。||あまりに|予想外の|滑稽な|姿に、|伍長は|横目で|メグレを|ちらりと|見て、|気まずい|笑い声を|漏らした。
メグレは|笑わなかった。||重々しく|粘り強く、|ゆっくりと|几帳面に|行き来した。||上着を|調べ、|ナイフが|刺さった|箇所に|穴が|開いていないのを|確かめて|から|コート掛けに|戻した。||左の|ポケットの|高さで|破れていた|チョッキが、|プラストロンの|上に|収まった。

「これが|彼の|服装だ」|と|小声で|言った。
司法鑑識課の|写真を|参照し、|セルロイド製の|高い|硬い|カラーと|黒い|サテンの|蝶ネクタイを|加えて、|頼りない|マネキンを|修正した。

「わかるかい、|伍長。||土曜日、|彼は|八時に|夕食を|摂った。||食事制限中なので|パスタを|食べた。||それから|いつもの|習慣で|ミネラルウォーターを|飲みながら|新聞を|読んだ。||十時を|少し|過ぎた頃、|この部屋に|入り、|靴と|硬い|カラーは|つけたまま|上着だけを|脱いだ」
実際には|メグレは|丹念に|一語一語|承認しようとしている|憲兵の|ためより|むしろ|自分自身の|ために|話していた。

「あのナイフは|その時|どこに|あったのか?||バネ式だが|ポケット用の|タイプで、|多くの人が|持ち歩くものだ。||待って」
証拠品の|置かれた|テーブルから|ナイフを|手に|取り、|刃を|折りたたんで|黒い|ズボンの|左ポケットに|差し込んだ。

「いや、|これでは|しわが|よる」
右に|入れ直して|満足した。

「よし!||ナイフは|ポケットにある。||彼は|生きている。||そして|医師に|よれば、|十一時から|零時半の|間に|死んだ。||靴の|先端に|漆喰と|砥石の|粉が|ついていた。||ところが|窓の|向かいの|ティビュルス・ド・サン=ティレールの|敷地の|塀に|同じ|種類の|靴が|残した|跡が|ある。||

ページ52の内容を確認します。ページ52の翻訳です。

||塀を|よじ登る|ために|上着を|脱いだのか?||自分の|家で|さえ|くつろいだ|格好を|しない|男だった、|それを|忘れては|ならない!」
メグレは|行き来しながら|話し続け、|文章を|最後まで|言い切らないことも|あり、|椅子に|じっと|座っている|聴衆に|目を|向けることも|なかった。

「暖炉には|夏の|間|薪ストーブを|外してあるが、|そこに|焼けた|紙が|ある。||彼が|したはずの|行動を|たどってみよう。||上着を|脱ぎ、|紙を|燃やし、|この|燭台の|台で|灰を|かき散らし(銅に|すすが|ついているから)、|窓台を|またいで|向かいの|塀を|よじ登り、|同じ|道を|通って|戻る。||そして|ポケットから|ナイフを|取り出して|開く。||大した|ことでは|ないが、|これらの|行動が|どんな|順序で|起きたかが|わかれば……||十一時から|零時半の|間に、|彼は|再び|ここに|いる。||窓が|開いていて、|頭に|弾丸を|受ける。||疑いの|余地は|ない!||弾丸は|ナイフより|先だった。||そして|外から|撃たれた。||ところが|ガレは|ナイフを|手に|した。||外に|出ようとは|しなかった。||これは|犯人が|入ってきたことを|示している。||七メートル|離れた|相手に|ナイフで|立ち向かうものは|いない。||しかも|ガレの|顔の|半分は|吹き飛んでいた。||傷口から|血が|流れていた。||しかし|窓の|近くには|血が|一滴も|なかった。||傷を|負った|まま、|彼は|二メートルの|範囲外へは|動いていない。||解剖を|行った|医師の|所見には、|左手首に|強い|打撲傷あり、|とある。||つまり|彼は|左手で|ナイフを|持ち、|その手を|つかまれて|刃が|自分に|向けられた。||刃が|心臓に|刺さり、|彼は|まっすぐ|倒れた。||ナイフを|手放し、|犯人は|気にしなかった。||被害者の|指紋しか|残らないと|わかって|いたから。||

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||財布は|ガレの|ポケットに|残っていた。||何も|盗まれて|いなかった。||それでも|司法鑑識課によれば、|とりわけ|旅行鞄の|上に、|ゴム手袋で|扱ったかの|ような|ごく|微細な|ゴムの|欠片が|あった」

「不思議ですね!||不思議だ!」|と|伍長は|素直に|感嘆したが、|聞いた|内容の|四分の一も|繰り返せなかったに|違いなかった。

「さらに|不思議なのは、|そのゴムの|痕跡の|ほかに|少量の|錆の|粉が|見つかった|ことだ」

「拳銃が|錆びていたのかもしれません!」

メグレは|黙り、|窓の|前に|どっしりと|立った。||白い|シャツの|袖が|ふくらみ、|光の|四角の|中に|その|巨大な|シルエットが|浮かび上がっていた。||頭の|上から|細い|青い|煙が|一筋|昇っていた。
伍長は|おとなしく|隅に|座ったまま、|足の|位置を|変えるのも|ためらっていた。

「浮浪者を|見に来ませんか?」|と|おずおずと|尋ねた。

「まだ|いるのか?||釈放しろ!」
メグレは|頭を|逆なでに|かきながら|テーブルに|戻り、|ピンクの|ファイルを|いじり、|写真の|位置を|入れ替えて、|相手を|じっと|見た。

「自転車が|あるか?||駅まで|ひとっ走りして、|土曜日に|ヘンリー・ガレという|二十五歳くらいの|青年——背が|高くて|痩せていて|顔色が|悪く、|暗い|色の|服を|着て|べっ甲縁の|眼鏡を|かけていた——が|何時の|列車で|パリに|向かったか|聞いてきてくれるか?||ところで、|ジャコブという|人物を|聞いた|ことは|ないか?」

「聖書の中のなら」|と|伍長は|おそるおそる|答えた。

エミール・ガレの|衣服は|まだ|床に|広げられたまま、|遺体の|戯画のように|見えていた。||憲兵が|ドアの|方に|向かおうとした|ところで、|ノックが|あり|タルディヴォンが|告げた。

「お客様です、|警部!||ブールサンという|婦人が|少々|お話ししたいとのことです」
伍長は|できれば|残りたかったが、|メグレは|そうさせなかった。

ページ54の内容を確認します。ページ54の翻訳です。

「お通しして」
そして|しぼんだ|マネキンの|方へ|かがみ込み、|少し|迷って|から|微笑み、|心臓の|位置に|ナイフを|突き刺し、|指先で|パイプに|タバコを|詰め込んだ。
エレオノール・ブールサンは|落ち着いた|裁断の|明るい|スーツを|着ていた。||若く|見せるどころか、|三十歳より|むしろ|三十五歳に|見えた。
ストッキングは|きちんと|伸び、|靴も|整っていて、|金髪は|白い|麦わら帽子の|下に|丁寧に|まとめられていた。||手袋を|はめていた。
メグレは|影の|隅に|引っ込み、|彼女が|どう|振る舞うかを|じっと|見守った。||タルディヴォン氏が|敷居の|上で|別れを|告げると、|彼女は|一瞬|立ち止まり、|窓の|強い|光と|部屋の|薄暗さとの|対比に|戸惑った|ようだった。


「メグレ警部でいらっしゃいますか?」|と|ようやく|口を|開き、|数歩|進んで|まだ|輪郭しか|わからない|人影の|方を|向いた。
「お邪魔して|申し訳|ありません」
メグレは|彼女に|近づき、|光の|中に|入った。||ドアを|閉めてから|言った。

「どうぞ|お座りください」
そして|何も|助け舟を|出さずに|待った。||むしろ|不機嫌な|様子を|装っていた。

「ヘンリーが|私の|ことを|お話ししたと|思います。||それで|サンセールに|おりますので、|失礼とは|存じながら|参りました」
黙ったまま|でいたが、|彼女を|動揺させることは|できなかった。||落ち着いた|口調で、|ある種の|品格を|もって|話した。||ガレ夫人を|思わせた。
より|若く、|おそらく|ヘンリーの|母が|かつて|そうだった|よりも|少し|美しいが、|同じ|社会的な|階層を|代表する|女性だった。

「あの|恐ろしい|事件の|後、|サンセールを|去りたかったのですが、|ヘンリーが|手紙で|残るよう|勧めたんです。||二、三度|警部を|お見かけしました。||地元の|人から、|犯人を|探す|役目を|お受けになっていると|聞きました。||それで|何か|わかったか|お聞きしようと|思い切って|参りました。||私は|ヘンリーとも|その|ご家族とも|公式には|何の|関係も|ない者ですので、|立場が|難しいのです」
ページ55の内容を確認します。ページ55の翻訳です。

用意してきた|台詞のようには|見えなかった。||言葉が|自然に|唇から|出てきて、|話す|速度も|焦りが|なかった。
何度か|視線が|床に|広げられた|衣服が|描き出す|奇妙な|形に|突き刺さった|ナイフへ|向いたが、|彼女は|微動だに|しなかった。

「あなたの|愛人に|私を|探りに|来るよう|頼まれたのか?」|と|メグレは|突然、|意図的な|乱暴さで|ぶつけた。

「何も|頼まれて|いません!||彼は|この|打撃に|打ちのめされています。||葬儀に|寄り添えなかったことも|一番|辛いことの|一つです」

「知り合って|長いのか?」
尋問に|なりつつある|ことに|気づいた|様子も|なく、|声の|調子は|変わらなかった。

「三年になります。||私は|三十歳で、|ヘンリーは|まだ|二十五歳です。||私は|未亡人です」

「パリの|出身か?」

「リール2|出身です。||父は|紡績工場の|主任経理士でした。||二十歳の|とき、|繊維技術者と|結婚しましたが、|結婚して|一年も|経たないうちに|機械の|事故で|亡くなりました。||雇っていた|会社から|年金を|受け取るはずでしたが、|事故は|被害者の|不注意による|ものだと|主張されて。||それで|生計を|立てなければ|ならなくなったのですが、|誰もが|私を|知っている|街では|働きたくなかったので、|パリに|出てきました。||リヨミュール通り3の|商社で|出納係として|働きはじめました。||紡績会社に|訴訟を|起こしました。||裁判は|あらゆる|審級を|経て|長引きました。||二年前に|ようやく|勝訴して、|もう|生活に|困らなくなったので|仕事を|辞めることが|できました」

「ヘンリー・ガレと|知り合ったのは|まだ|出納係を|していた|頃か?」

「そうです。||ソヴリノス銀行の|外交員として|私の|勤め先に|よく|来ていました」

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「結婚の|話は|出なかったのか?」

「最初は|話しましたが、|判決が|出る|前に|結婚していたら、|年金を|めぐる|裁判での|私の|立場が|不利に|なっていましたから」

「それで|ガレの|愛人に|なったわけだな?」

「その|言葉は|怖くありません。||私たちは|役所を|通った|夫婦と|同じくらい|結びついています。||三年|前から|毎日|会い、|彼は|食事を|すべて|私の|ところで|摂っています」

「だが|テュレーヌ街の|あなたの|部屋には|住んでいない」

「彼の|家族のことが|あります。||私の|親と|同じく、|厳しい|考えの|人たちです。||ヘンリーは|家族に|交際を|知らせずに|おくことで|もめごとを|避けたかった|のです。||それでも|いつか|障害が|なくなって|南フランスに|暮らせるだけの|蓄えが|できたら|結婚しようと、|ずっと|決めていました」
どんなに|立ち入った|質問に|対しても、|彼女の|態度に|戸惑いは|なかった。||ある|瞬間、|警部の|視線が|彼女の|脚へ|向いた|とき、|彼女は|さりげない|仕草で|スカートを|引き下げた。

「細かいことを|聞く|必要がある。||ヘンリーは|あなたのところで|食事を|していたわけだが、|彼は|生活費は|出していたのか?」

「簡単なことです。||きちんとした|家計のように|帳簿を|つけていて、|月末に|食費の|半分を|払って|もらいました」

「南フランスに|住む|話が|出ていたが。||ヘンリーは|貯金を|していたのか?」

「私も|同様です。||体が|あまり|丈夫でないのは|ご覧の通りです。||医師からは|新鮮な|空気を|勧められていますが、|ただ、|事務仕事で|生計を|立てている限り、|田舎では|生活できません。||農業や|職人仕事でも|しなければ、|田舎で|稼ぐ|手段は|ありませんから。||私も|田舎が|好きです。||ですから|つましく|暮らしていました。||ヘンリーは|外交員だと|申しましたが、|ソヴリノス銀行は|主に|投機を|扱う|小さな|銀行です。||ですから|情報の|源に|いるわけで、|双方から|貯めた|お金は|すべて|株式に|まわしていました」

ページ57の内容を確認します。ページ57の翻訳です。ご指定の箇所まで訳します。

「口座は|別々ですか?」

「当然です!||将来が|どうなるか|わからない|のですから」

「それで|どれほどの|資産を|作れましたか?」

「正確には|言いにくいです。||お金は|日々|値が|変わる|有価証券に|なっていますから。||四万から|五万フランほどです」

「ガレは?」

「もっと|あります!||去年の|八月の|ラプラタ鉱山のような、|あまりに|危険な|投機には|私を|巻き込もうとは|しませんでした。||今頃は|十万フランは|あるはずです」

「いくらに|なったら|やめるつもりでしたか?」

「五十万フランです。||あと|三年は|働くつもりでした」

メグレは|今や|感嘆に|近い|感情で|彼女を|見ていた。||しかし|それは|特別な|感嘆——強い|嫌悪で|色づいた|感嘆だった。
三十歳の|女と|二十五歳の|男。||愛し合っているか、|少なくとも|一緒に|生きると|決めた|二人。||なのに|その|関係は|まるで|商取引の|共同経営者の|ように|整然と|仕切られていた。
彼女は|それを|さらりと、|むしろ|ある種の|誇りをもって|話していた。

「サンセールには|いつから|いますか?」

「六月二十日に|一か月のつもりで|来ました」

「なぜ|ホテル・ド・ラ・ロワールや|コメルスに|泊まらなかったのですか?」


「高すぎます。||村の|外れの|ペンション=ジェルマンなら|一日|二十二フランです」

「ヘンリーは|二十五日に|来ましたか?||何時に?」

「土曜と|日曜しか|自由に|なれません。||日曜は|サン=ファルジョーで|過ごすと|決まっていますから。||土曜の|朝に|来て、|夜の|最終列車で|帰りました」


「つまり?」

「十一時三十二分です。||駅まで|送っていきました」

「お父さんが|ここに|いると|知っていましたか?」

「ヘンリーから|会ったと|聞きました。||父親は|私たちを|探りに|来ただけだと|思って|腹を|立てていました。||ヘンリーは|家族に|私たちのことに|口を|出されたくなかったので」
ページ58の内容を確認します。ページ58の翻訳です。

「ガレ家の|人たちは|その|十万フランの|存在を|知らなかったのですか?」

「当然です!||ヘンリーは|成人しています。||自分の|人生を|自分で|生きる|権利が|あるのでは|ないですか?」

「愛人は|普段、|父親の|ことを|どう|話していましたか?」

「野心が|ない|ことを|少し|恨んでいました。||あの|歳に|なっても|まだ|自分が|『ガラクタ』と|呼んでいたものを|売り歩いているのは|情けないと|言っていました。||でも|いつも|礼儀正しく、|とくに|母親には|そうでした」

「ではエミール・ガレが|実は|詐欺師で|あることを|知らなかったのですね?」

「詐欺師?||あの人が?」

「十八年来、|もはや|その|『ガラクタ』の|仕事など|して|いなかったことも?」

「そんなはずが!」
あの|陰気な|マネキンを|ある種の|感嘆を|もって|眺めながら、|芝居を|している|のだろうか?

「驚きました、|警部さん!||あの人が!||あのへんな|こだわりや、|みすぼらしい|格好や、|貧乏な|隠居みたいな|物腰で!」

「土曜の|午後は|何を|していましたか?」

「ヘンリーと|二人で|高台を|散歩しました。||彼が|コメルス・ホテルに|行くために|私と|別れた|ときに|父親に|会ったんです。||夜の|八時に|また|落ち合って、|今度は|川の|反対側を|列車の|出発まで|ぶらぶら|しました」


「このホテルの|近くには|来なかったのですか?」

「鉢合わせは|避けた方が|よかったので」

「駅から|一人で|帰って、|橋を|渡りましたね」


「そのまま|すぐ|左に|曲がって|ジェルマンに|戻りました。||夜は|一人で|歩くのが|好きでは|ないので」

「ティビュルス・ド・サン=ティレールを|知っていますか?」

「どなたですか?||その|名前は|聞いた|ことが|ありません。||警部、|まさか|ヘンリーを|疑っているのでは|ないでしょうね?」
ページ59の内容を確認します。ページ59の翻訳です。
顔は|少し|生き生きとしたが、|冷静さは|保っていた。

「ここに|来たのは|主に|彼の|ことを|よく|知っているからです。||ほとんど|ずっと|病気で、|性格が|暗く|疑い深くなっていました。||二人で|何時間も|黙ったまま|いることも|あります。||父親に|ここで|会ったのは|偶然です。||でも|疑わしく|見えることは|わかっています。||彼は|プライドが|高すぎて|自己弁護が|できません。||何を|話したか|知りませんが、|質問に|答えたのでしょうか?||私が|誓えるのは、|夜の|八時から|列車に|乗るまで|ずっと|私と|一緒にいたことです。||彼は|神経質でした。||心配していたのは、|母親に|私たちの|交際が|知れること。||母親を|ずっと|大切に|していたので、|私から|引き離そうとするだろうと|わかっていたんです。||私は|もう|若い娘では|ありません!||五歳の|差があります。||愛人で|あったことも|事実です。||早く|犯人が|捕まって|ほしい。||とくに|ヘンリーのために。||父親と|会ったことが|当然|嫌疑を|招くと、|彼は|十分|わかっているはずですから」
メグレは|変わらぬ|驚きで|彼女を|見続けていた。||この訪問は|それなりに|誠実な|行為だったのに、|なぜ|心を|動かされないのか|不思議だった。
最後の|言葉を|わずかに|力をこめて|話すときも、|エレオノール・ブールサンは|自分を|完全に|制御していた。||メグレが|遺体が|発見時のままの|姿を|写した|大きな|鑑識写真を|さりげなく|見えるようにすると、|彼女の|視線は|その|衝撃的な|画像の|上を|止まらずに|滑っていった。

「何か|わかりましたか?」

「ジャコブという|人物を|知っていますか?」
彼女は|誠実さを|読んでほしいと|言わんばかりに|目を向けた。

「その|名前は|知りません。||誰ですか?||犯人ですか?」

「かもしれない」|と|ドアに|向かいながら|言い捨てた。
エレオノール・ブールサンは|入ってきたときと|同じように|出ていった。

ページ60の内容を確認します。ページ60の翻訳です。


「警部、|時々|様子を|聞きに来て|よいですか?」

「いつでも」
伍長が|廊下で|辛抱強く|待っていた。||訪問者が|姿を|消すと、|問いかけるような|目を|警部に|向けた。

「駅では|何と?」|と|メグレが|聞いた。

「その|青年は|三等の|往復切符で|十一時三十二分の|パリ行きに|乗りました」

「犯行は|十一時から|零時半の|間だ」|と|警部は|夢見るように|つぶやいた。
「急げば|ここから|トレシー=サンセールまで|十分。||犯人は|十一時から|十一時二十分の|間に|やったことに|なる。||駅まで|十分|かかるなら、|戻りも|同じだ。||つまり|ガレが|殺されたのは|零時十五分から|零時半の|間、|駅から|戻ってきた|誰かに|よって。||ただし、|鉄格子の|問題が|ある!||それに|いったい|エミール・ガレは|あの|塀の|上で|何を|しようとしていたのか?」
伍長は|さっきと|同じ|場所に|座って、|続きを|待ちながら|うなずいていた。||しかし|続きは|なかった。

「アペリティフを|飲みに|行こう!」|と|メグレは|言った。

- フランスの|法執行機関の|仕組みは|日本と|異なります。
憲兵隊(Gendarmerie nationale)
国防省(軍)の|管轄
主に|農村部・小都市・道路を|担当
軍人の|身分を|持つ
「ブリガディエ(brigadier)」は|憲兵隊の|階級で|「伍長」、警察では巡査部長クラス
警察(Police nationale)
内務省の|管轄
主に|大都市を|担当
文官の|身分を|持つ
メグレは|この|警察の|警部
この物語での|関係
サンセールは|小さな|地方都市なので、|地元の|治安は|憲兵隊が|担当しています。||メグレは|パリの|司法警察から|派遣された|上位の|捜査官として|やって|きており、|地元の|憲兵伍長は|いわば|メグレの|補佐役・連絡係のような|立場です。
日本で|言えば、|憲兵伍長は|地元の|駐在所の|警官、|メグレは|警視庁から|来た|捜査一課の|警部、|というような|イメージが|近いでしょう。 ↩︎ - リール(Lille)は、フランス北部の|都市です。
地理的な|位置 ベルギーとの|国境に|近く、|パリから|北へ|約220キロの|場所に|あります。||フランス最北部の|主要都市で、|フランドル地方に|属します。
1930年代の|リール シメノンが|この|作品を|書いた|頃(1931年)、リールは|フランスでも|有数の|工業都市でした。||エレオノールの|父が|紡績工場の|主任経理士だったという|設定は、|この|都市の|性格に|ぴったりです。||19世紀から|20世紀にかけて、|リールは|繊維産業——綿・羊毛・亜麻——の|中心地として|栄えていました。
エレオノールの|背景との|関係 リール出身という|設定は、|彼女の|人物像に|意味を|持ちます。||勤勉で|実直、|感情を|表に|出さず、|家計を|几帳面に|管理する——これは|フランス北部の|労働者・中産階級の|気質として|よく|描かれる|特徴です。||シメノン自身も|ベルギー出身で、|この|地域の|人々の|気質を|よく|知っていました。
↩︎ - リヨミュール通り(rue Réaumur)は、|パリの|中心部にある|通りです。
地理的な|位置 パリ2区と|3区に|またがる|通りで、|グラン・ブールバールの|南側に|平行して|走っています。||セーヌ川の|右岸、|マレ地区の|北西に|あたります。
1930年代の|リヨミュール通り この|通りは|19世紀末から|20世紀にかけて|繊維・衣料品の|卸売業者が|集まる|商業地区として|知られていました。||生地屋、|衣料品の|問屋、|商社などが|軒を|連ね、|活気のある|ビジネス街でした。
エレオノールとの|関係 エレオノールが|出納係として|勤めていた「商社」が|この|通りに|あった|という|設定は|自然です。||繊維技術者の|未亡人が、|かつての|夫の|業界に|近い|商社で|働いていた|という|文脈にも|合っています。
名前の|由来 18世紀の|フランスの|物理学者・昆虫学者、|ルネ=アントワーヌ・フェルショー・ド・レオミュール(René-Antoine Ferchault de Réaumur)に|ちなんで|名づけられています。||温度計の|レオミュール度(°Ré)で|知られる|人物です。
↩︎




