S.S.ヴァン・ダイン(S.S. Van Dine, 1888–1939)
生涯
- 本名は ウィラード・ハンティントン・ライト(Willard Huntington Wright)。1888年、アメリカ合衆国バージニア州シャーロッツビルに生まれる。
- 美術評論家・文芸評論家として活動し、ヨーロッパ文化に造詣が深かった。
- 病気療養中に探偵小説を大量に読み、ジャンルの研究を経て自ら執筆を開始。
- 1926年、『ベンスン殺人事件』で作家デビューし、探偵フィロ・ヴァンスを主人公とするシリーズで一世を風靡した。
- 1939年にニューヨークで死去。
文学的特徴
- 論理的な推理と美学的な薀蓄を重視。
- 主人公フィロ・ヴァンスは上流階級の知識人として描かれ、芸術・哲学・心理学などに通じている。
- 当時のニューヨーク社交界を舞台にした華やかな雰囲気と、知的な対話が作品の特色。
- いわゆる「黄金時代」の本格派探偵小説に属するが、後年は冗長との批判も受けた。
主な作品(フィロ・ヴァンス・シリーズ)
- 『ベンスン殺人事件』(1926)
- 『グリーン家殺人事件』(1928)
- 『僧正殺人事件』(1929)
- 『カナリヤ殺人事件』(1927)
- 『ドラゴン殺人事件』(1933)
- 『ウィンター殺人事件』(1939) – 遺作
ヴァン・ダイン作品一覧はこちら💁♂️
主要キャラクター
- フィロ・ヴァンス
博学多才な紳士探偵。美術・音楽・心理学に通じ、皮肉を交えた知的な会話が特徴。 - ジョン・F.-X.・マーカム
地方検事でヴァンスの友人。物語の語り手的役割を果たす。 - ヴァン・ダイン自身
作中にしばしば「編者」として登場し、実録風の体裁を取る。
影響と評価
- 1920年代末から1930年代初頭にかけてアメリカで大人気を博し、映画化も盛んに行われた。
- フィロ・ヴァンス像は洗練された知識人探偵の典型として、後の作家たちにも影響を与えた。
- 一方で「気取った探偵」「知識のひけらかし」と評されることも多く、評価は賛否両論。
- 今日では「黄金時代」探偵小説の一つの象徴的存在として研究対象となっている。