海外の小説や古典作品を読むとき、その背後には必ず当時の社会・文化・歴史があります。
ここでは翻訳の過程で調べた資料や考察をもとに、作品世界をより深く理解するための背景解説をまとめています。
推理小説だけでなく、古典から近代文学まで幅広く扱い、時代の空気や文化的な文脈に光をあてます。
ハイブリッドラボ 作品背景|フランスの刑事事件における警察と憲兵隊の役割
二つの組織 ― 警察と憲兵隊フランスの治安維持を担う組織には、大きく分けて「警察(Police nationale)」と「憲兵隊(Gendarmerie nationale)」の二つがある。前者は市民社会の内部にあって、都市を中心に活動する...
ハイブリッドラボ 作品背景|田舎紳士とパリ紳士 ――1930年フランスの装いと社会背景
コンカルノーの名士「ル=ポムレ」ジョルジュ・シムノンの『黄色い犬』で、メグレがコンカルノーのカフェで『デンマーク副領事』『女たらし』と紹介された「ル=ポムレ」の服装について、このように表現されている。L'homme qui se leva ...
ハイブリッドラボ 作品背景|沿岸貨物船カボトゥール(caboteur)
カボトゥールとは何かジョルジュ・シムノン『黄色い犬』冒頭のシーンEn face de lui, dans le bassin, un caboteur qui, l'après-midi, est venu se mettre à l'ab...
ハイブリッドラボ 作品背景|『アルセーヌ・ルパンの逮捕』と<プロヴァンス号>
1905年当時の〈ラ・プロヴァンス号(La Provence)〉「La Provence(ラ・プロヴァンス号)」は、フランスの Compagnie Générale Transatlantique(略称 “Transat”)が保有していた豪...
ハイブリッドラボ 🇬🇧作品背景|Agence Cook,『クック旅行社』とは
トマス・クック社(Thomas Cook & Son)Tous les grands hôtels, sans compter l’Agence Cook, étaient représentés.「名だたる|ホテルの|案内人が|並び、|ク...
ハイブリッドラボ 作品背景|ドーヴァーとフォークストン
「イギリスとフランスを結ぶ船」というと、いちばん有名なのはカレー(Calais)—ドーヴァー(Dover)間の航路である。しかし、シムノンがここで書いたのはイギリス側の港は「Folkestone(フォークストン)」。これは実際に当時存在した...
ハイブリッドラボ 🇱🇻作品背景|『謎のラトヴィア人』——ラトヴィアとは
『怪盗レトン』とラトヴィア『Pietr le Letton』 は、邦題では『怪盗レトン』と訳される。しかし、現代を直訳すると「ラトヴィア人ピエトル」という固有名になる。つまり「レトン=ラトヴィア人」なのである。シムノンはなぜ、このような国籍...
ハイブリッドラボ 🕵️♂️作品背景|ベルティヨン式人相記録 —— 科学が「顔」を測った時代
ベルティヨン式人相記録とは十九世紀の末から二十世紀初頭にかけて、ヨーロッパの警察は「個人を科学的に識別する」新しい方法を手に入れた。それが、ベルティヨン式人相記録(le système Bertillon) である。アルフォンス・ベルティヨ...
ハイブリッドラボ 作品背景|エトワール・デュ・ノール「北極星号」
エトワール・デュ・ノール「北極星号」ジョルジュ・シムノン『怪盗レトン』(1931)の中で、警視メグレが受け取る三通目の電報に、一つの列車名が登場する。Pietr-le-Letton embarqué compartiment G.263, ...
ハイブリッドラボ 作品背景|ポワロとメグレ──通信の時代に生きる二人の探偵
〜クリスティが書かなかった「POLCOD」〜1930年代、ヨーロッパではすでに電報と電話が社会の神経のように張りめぐらされていた。その中で、二人の名探偵――エルキュール・ポワロとジュール・メグレ――は、まったく異なる「通信の世界」に生きてい...