海外の小説や古典作品を読むとき、その背後には必ず当時の社会・文化・歴史があります。
ここでは翻訳の過程で調べた資料や考察をもとに、作品世界をより深く理解するための背景解説をまとめています。
推理小説だけでなく、古典から近代文学まで幅広く扱い、時代の空気や文化的な文脈に光をあてます。
作品背景 🇺🇸作品背景|英国の警部とは違う? ヴァンスの相棒マーカム地方検事
英国探偵小説の「警部」たちシャーロック=ホームズにはレストレード警部、エルキュール・ポワロにはジャップ警部が登場します。彼らはいずれもスコットランドヤードの実務警察官で、捜査権限を持つものの、探偵に先を越される「引き立て役」として描かれるこ...
作品背景 作品背景|20世紀初頭のイギリスの「バザー」——スタイルズ荘の怪事件
アガサ・クリスティ『スタイルズ荘の怪事件』には、キャベンディッシュ夫人が「バザーを開くのが好きだった」と描写される一節がある。She was a most generous woman, and possessed a considerab...
作品背景 🇬🇧作品背景|ホームズの時代とビール文化
a glass of half-and-half『ボヘミアの醜聞』の一場面で、ホームズは馬丁にまじって働き、報酬として「a glass of half-and-half(ハーフ・アンド・ハーフ)」を飲む。一見すると些細な飲み物の描写にすぎな...
作品背景 作品背景|なぜエセックスが舞台になったのか——スタイルズ荘の怪事件
ロンドン郊外としてのエセックスエセックスはロンドンの東隣に位置し、鉄道で1〜2時間ほどで到達できる距離にある。都会からは近いが、農村的要素も色濃く残り、「都会に隣接しながらも隔絶感のある舞台」として読者にリアルに感じられる土地だった。(作品...
作品背景 🇬🇧作品背景|ロンドンの法曹学院——インナー・テンプル
インナーテンプル『ボヘミアの醜聞』に登場するゴドフリー・ノートンは、「インナー・テンプル所属の法廷弁護士」として紹介される。一見、地名か学校名のように聞こえるが、インナー・テンプル(Inner Temple)は実在する組織であり、ロンドンの...
作品背景 作品背景|アルフレッドの服装に映る都会と田舎の対立——スタイルズ荘の怪事件
『スタイルズ荘の怪事件』には、登場人物たちの発言や仕草の中に、当時のイギリス社会の価値観が自然に映し出されています。ジョン・キャベンディッシュが、義母の再婚相手アルフレッドを指して「absolute outsider」と批判する場面もその一...
作品背景 🇬🇧作品背景|イギリスの結婚許可証(Marriage Licence)
結婚式に巻き込まれた馬丁「ホームズ」シャロック・ホームズの「ボヘミアの醜聞」に、馬丁に変装したホームズがワトスンの前で、思い出して笑ってしまう場面があります。It seems that there had been some informa...
作品背景 作品背景|「へなちょこ」ヘイスティングスの早すぎる退場
——なぜヘイスティングスは長編2作目で結婚退場したのか——ヘイスティングスが結婚するのは『The Murder on the Links(ゴルフ場の殺人事件)』、つまりポワロ・シリーズの長編としては第2作目です(1923年刊)。ここで面白い...
作品背景 作品背景|イギリスには戸籍制度がない?ミセス=イングルソープと夫婦別姓
イギリスには「戸籍制度」がない日本では、結婚によって必ず夫婦どちらかの姓を選び、戸籍に記載されます。しかしイギリスには、日本のような「家単位の戸籍制度」は存在しません。中世以来、出生・結婚・死亡は教会のパリッシュ・レジスター(教区簿)に記録...
作品背景 作品背景|田舎のバザーに呼ばれる「プリンセス」——スタイルズ荘の怪事件
プリンセスがオラが村に!?探偵小説の舞台となるイギリスでは、田舎のバザーや慈善行事に「プリンセス(the Princess)」が招かれる場面がしばしば描かれます。現代の日本人が読むと、皇室の姫君(内親王殿下、女王殿下)がそんな場に顔を出すの...