海外の小説や古典作品を読むとき、その背後には必ず当時の社会・文化・歴史があります。
ここでは翻訳の過程で調べた資料や考察をもとに、作品世界をより深く理解するための背景解説をまとめています。
推理小説だけでなく、古典から近代文学まで幅広く扱い、時代の空気や文化的な文脈に光をあてます。
作品背景 作品背景|フランス流ブランデーの飲み方だ!
メグレのおもてなし『オランダの殺人』第七章にこのようなシーンがある。Pijpekamp n'osait pas protester. L'alcool lui fit venir les larmes aux yeux, tant il é...
作品背景 作品背景|ダービー帽(山高帽)とフェルト帽――1930年代探偵小説における警察官の帽子表現
ダービー帽の由来と意味ダービー帽(derby hat)は、19世紀イギリスで生まれた帽子である。名前は、貴族 第12代ダービー伯爵(Earl of Derby) に由来する。乗馬や狩猟の際、枝に引っかからない頭を保護できる形が崩れにくいとい...
作品背景 作品背景|アムステルダム取引所の運賃相場
Mais quelqu'un entra, qui déploya un journal, parla des derniers cours du fret à la Bourse d'Amsterdam.そこへ|誰かが|入ってきた。||新...
作品背景 作品背景|ギルダー?フローリン?
― Vier gulden.…「4ギルダー。」Quatre florins! Quarante francs! Ses yeux rigolaient toujours.4フローリンだ!||40フランだ!それでも、|彼の|目は|相変わらず|...
作品背景 🇯🇵作品背景| 1930年代の日本七宝細工
ヨーロッパでの七宝細工の評価十九世紀後半から二十世紀はじめにかけて、日本の七宝は国際的に特異な地位を獲得した。その背景には、以下のような史実がある。国際博覧会での受賞ラッシュパリ万国博覧会(1867, 1878, 1889, 1900)ウィ...
作品背景 作品背景|北オランダの地方都市の建物
1930年代でも基本は「平屋(地上階のみ)」Maigret se pencha à la fenêtre, vit le hangar à vélos, le potager bien entretenu et, au-delà des c...
作品背景 作品背景|都市ブルジョワ vs 地方ブルジョワ
そもそもブルジョワとは?『オランダの殺人』第三章で、次のように『ブルジョワ』という言葉が出てくる。私は、この言葉を『良家』と訳したが、『ブルジョワ』とは、そもそも「おとなしい気弱な性格」なのか?1Mais cela n’empêchait ...
作品背景 作品背景|スイス・ロマンドと宗派文化
「あなた、プロテスタントですか?」― Et vous êtes protestant ?「それで|君は|プロテスタント|なのか?」メグレはジャン・デュクロの初対面で、唐突にこう言う。いきなり、宗教の質問をするとは理解し難いが、そこが、メグレ...
作品背景 作品背景|シムノンが描く1930年代の「学者像」
1930年代のフランス人が抱く学者像の特徴『オランダの殺人』の中で、メグレが初めてデュクロ教授に会った時の印象である。A rien ! A l’ensemble ! Duclos appartenait à une catégorie d'...
作品背景 作品背景|1920〜30年代オランダの産業構造と水路交通
オランダは「水上輸送国家」だったオランダは国土の大部分が低地で、河川と運河が縦横に走っている。1920〜30年代の同国では、鉄道よりも、運河の輸送量の方が多い地域が珍しくなかった。理由は単純である。平坦な土地水路建設が容易重い荷を大量に運べ...