言葉と文法|形式名詞と属性——「そのこと」「その父」「その子」を比べる

ハイブリッドラボ

はじめに

前回の記事では、形式名詞「こと・もの」をプログラミングの クラス/インスタンス/オブジェクト/メソッド に例えることで理解を深めました。
続編では「そのこと」「その父」「その子」を取り上げ、形式名詞/関係名詞/普通名詞の違いをプログラミング的に整理し、点訳での分かち書き基準にもつなげます。


「そのこと」=抽象クラスからのインスタンス

  • 「こと」=形式名詞、意味のない器(抽象クラス)
  • 「その」=文脈データを与える引数
  • 「そのこと」=抽象クラスが具体化されたインスタンス
abstract class Koto {
    String content;
    Koto(String c) { content = c; }
}

Koto sonoKoto = new Koto("さっき話した内容");

点訳:「そのことは」→ 続け書き



「その人」=普通名詞(具象クラス)

  • 「人」は形式名詞でも属性でもなく、普通名詞。
  • 具象クラスとしてオブジェクトを直接生成できる。
class Hito {}
Child sonoHito = new Hito();
  • 「その人」= sonoHito(具象クラスのインスタンス)

点訳:「その|人は」→ 区切る(人と同じ扱い)


「その父」=属性(フィールド)の参照

  • 「父」は形式名詞ではなく関係名詞。
  • 「人」という具象クラスの属性(フィールド)としての「父」。
class Person {
    Person father;
}

Person taro = new Person();
taro.father = new Person();
  • 「その父」= taro.father

点訳:「その|父は」→ 前で区切る(属性なので結合が弱い)

比較まとめ

  • 形式名詞(こと・もの・ところ)
    • 抽象クラス
    • 前と一体で名詞句を作る
    • 点訳:区切らない
  • 普通名詞(人・子・娘など)
    • 具象クラス
    • そのままオブジェクト化できる
    • 点訳:区切る
  • 関係名詞(父・母・兄など)
    • 属性(フィールド)
    • 前との結びつきが弱い
    • 点訳:区切る

ポイント

形式名詞・普通名詞・関係名詞を「クラス」「属性」「オブジェクト生成」として整理すると、点訳の分かち書き基準が直感的に説明できます。

  • 「そのことは」=区切らない
  • 「その|人は」「その|子は」=区切る
  • 「その|父は」=区切る

このルールを理解しておくと、点訳講習などでよく迷う「どこで切るか?」という判断が明確になります。