プリンセスがオラが村に!?
探偵小説の舞台となるイギリスでは、田舎のバザーや慈善行事に「プリンセス(the Princess)」が招かれる場面がしばしば描かれます。現代の日本人が読むと、皇室の姫君(内親王殿下、女王殿下)がそんな場に顔を出すのかと不思議に思えますが、当時のイギリス社会では状況が異なっていました。

At that moment a well remembered voice floated through the open French window near at hand:
“Then you’ll write to the Princess after tea, Alfred?
I’ll write to Lady Tadminster for the second day, myself.
Or shall we wait until we hear from the Princess?
その時、|聞き覚えの|ある|声が|近くの|開け放たれた|フランス|窓から|聞こえてきた。
「じゃあ、|アルフレッド、|お茶の|後に|プリンセスに|手紙を|書いて|くれるわね?||私は|<レディー_タドミンスター>に|二日目の|ことについて|書いておくわ。
それとも、|プリンセスからの|返事を待った|方が|いいかしら?|
プリンセス(Princess)とは
王族女性の称号としての「プリンセス」
イギリス王室には「プリンス(王子)」「プリンセス(王女)」の称号を持つ人物が多数存在しました。女王や国王の娘だけでなく、王族の血筋にあたる女性が幅広く「プリンセス」を名乗ることができたのです。そのため、20世紀初頭には十数人から数十人単位の「プリンセス」が同時代に存在していました。
バザーと社交
地方のバザーや慈善行事に「プリンセス」が登場するのは、その行事の格式を高めるためでした。王族の名がプログラムに載るだけで、寄付金は集まりやすくなり、地元の名士たちもこぞって参加するようになります。日本でいえば、戦前の華族の令嬢が顔を見せるようなイメージに近いでしょう。
日本の「プリンセス」
🇯🇵 日本の皇室制度における女性皇族の呼称
- 内親王殿下(ないしんのう でんか)
- 天皇の子や皇太子の子、あるいは皇太子・皇女の孫にあたる女性。
- いわば「直系の王女」にあたります。
- 女王殿下(じょおう でんか)
- 親王の子や孫にあたる女性。
- 傍系に生まれた「王女」にあたります。
この二つだけが、現在の皇室典範で定められた「女性皇族の身位」です。
👑 イギリスとの違い
イギリスでは「プリンセス」の称号が広く、国王・女王の子孫、あるいは王族と婚姻した女性もプリンセスと呼ばれます。
一方、日本のプリンセスは「内親王」「女王」のみであり、また、婚姻すると皇籍を離脱するのが原則という大きな違いがあるのです。
まとめ
日本の皇室制度では、プリンセスに相当する皇族の女性(内親王殿下、女王殿下)はごく限られています。そのため「プリンセスが田舎のバザーに」という描写は、現代の日本人の感覚からすると違和感があります。
イギリスでは「プリンセス」と呼ばれる範囲が広かったため、バザーへの登場は必ずしも異例ではなく、社交行事の一環として自然に受け入れられていたのです。

