作品背景|「T.S.F.」とは

シムノン作品にたびたび登場する「T.S.F.」

― Prenez place, comme l’autre soir… Où est l’appareil de TSF ?..

「座ってください。||あの晩の|ときの|ように。||TSF(ラジオ)は|どこだ?」

Il le trouva lui-même, tourna les boutons, fit gicler des sifflements, éclater des voix, des résidus de musique, accrocha enfin un poste où deux comiques jouaient un sketch français.
― Le colon disait au capiston.….

彼は|自分で|それを|見つけ、|つまみを|回した。||甲高い|雑音が|鳴り出して、|声が|響き、|音楽が|切れ切れに|入り乱れ、|やがて||フランス語の|寸劇を|演じる|二人の|喜劇役者の|放送に|ぴたりと|合った。
『大佐|が副官に|こう言うんだ。』と|声が|聞こえる。

オランダの殺人 第9章

― N’oublie pas d’aller payer la traite pour la T.S.F.

「T.S.F.(ラジオ)の|月賦代、|支払いに|行くのを|忘れないで。」

マジェスティック・ホテルの地下室 第1章

T.S.F.(Télégraphie Sans Fil)

T.S.F. とは
Télégraphie Sans Fil(テレグラフィ・サン・フィル)の略
直訳すれば「無線電信」である。
フランス語圏では、1920〜30年代にラジオそのものを指す一般名詞として使われていた。

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  • 意味:無線通信 → そこから転じて ラジオ受信機
  • 時代第一次大戦後〜1930年代
  • 用法
    • écouter la TSF(ラジオを聴く)
    • poste de TSF(ラジオ受信機)
  • 現代:今は一般的に、「radio」。 T.S.F. という言葉は、ほぼ使われることはない。

経緯

  • もともとはモールス信号の無線通信を指す言葉。
  • 放送が一般化すると、「無線で音声を受信する装置」=家庭用ラジオを意味するようになった。
  • 真空管式、木製キャビネット、ダイヤルを回して同調させると聞くことができる。

まとめ

T.S.F. = 1930年代フランス人が「ラジオ」と呼ぶ前に使っていた、ちょっと古風で文明臭のする言い方。