結婚式に巻き込まれた馬丁「ホームズ」
シャロック・ホームズの「ボヘミアの醜聞」に、馬丁に変装したホームズがワトスンの前で、思い出して笑ってしまう場面があります。

It seems that there had been some informality about their license, that the clergyman absolutely refused to marry them without a witness of some sort, and that my lucky appearance saved the bridegroom from having to sally out into the streets in search of a best man.
「どうやら|二人の|結婚|許可証には|手続きの|不備が|あったらしく、|聖職者は|証人なしでは|絶対に|式を|執り行わないと|言い張った。|そこへ|運よく|僕が|現れた|おかげで、|花婿は|立会人を|探すために|街に|飛び出す|必要が|なくなったのだ。」
1. 結婚に必要な手続き
19世紀イギリスでは、結婚するためには通常「banns of marriage(結婚の宣言)」を教会で3回読み上げることが義務づけられていました。これは、すでに婚約者がいる場合や近親関係など、結婚に法的な障害がある場合を地域共同体に知らせるための制度でした。
しかし、時間がない場合やプライバシーを重視したい場合には、この宣言を省略できる「marriage licence(結婚許可証)」を取得することができました。
2. 結婚許可証の種類
- Common Licence(普通結婚許可証):
教区司祭や司教の権限で発行され、特定の教区内での結婚が認められます。 - Special Licence(特別結婚許可証):
カンタベリー大主教の権限で発行され、時間や場所の制限が少なく、特別な事情を持つ人々に使われました。
3. 手続きと条件
- 身元と独身であることを誓約する必要がありました。
- 保証人(surety)が必要な場合もあり、虚偽が発覚した場合は罰金が科されました。
- この制度は、上流階級や急ぎの事情を抱える人々によく利用されました。
『ボヘミアの醜聞』では
コナン・ドイルの『ボヘミアの醜聞』では、アイリーン・アドラーとゴッドフリー・ノートンが結婚する際、許可証に「不備(informality)」があり、牧師が証人を求めました。偶然居合わせたホームズが「立会人」として巻き込まれるというユーモラスな場面につながります。
このエピソードからも、結婚許可証が実際に使われ、時に手続きが複雑であったことが分かります。
まとめ
イギリスの結婚許可証は、結婚における「公開性」と「便宜性」のバランスをとるための制度でした。『ボヘミアの醜聞』に描かれた一幕は、この制度を背景にしたリアリティを作品に与えています。

