区切りの日

点訳について

点字図書室を訪ねて

先日、点字図書室を訪ねました。
そこは視覚障害者とボランティアのための場所であり、市民が趣味として点訳を楽しむ場ではないことを実感しました。

少し寂しい思いもありましたが、同時に大切な区切りをつけることができました。
点字文庫は自分とは別の社会。そう理解できたことで、自分のスタンスがはっきりしたのです。

私は「奉仕のために」点訳をしているのではありません。
翻訳の段階から点字を意識し、言葉が触読でも伝わるよう工夫することが面白くて、趣味として楽しんでいるのです。

そのことを話したとき、図書室の担当の方が「なんか、楽しそうですね」と言ってくれました。
それが皮肉だったのかどうかは分かりません。けれども、少なくとも私の“楽しんでいる姿勢”は伝わっていたのだと思います。

一方で、点字図書室で強く感じたこともあります。
私は「読み手にとって読みやすい点訳をしたい」と伝えましたが、返ってきたのは
「趣味で点訳したものは点字文庫には置けない、点訳の目的は、あくまで『点訳の手引き』に従ってサピエに登録すること」
という職員の方のお話しでした。
そこには「読み手」「視覚障害者の方」といった言葉は出てきませんでした。

点字図書室の活動は、読み手のためにより良い点字文庫を充実させるのではなく、ボランティア活動すること自体が目的になっているのかもしれません。

保守的・閉鎖的な活動を長くやっていると、「手段と目的の履き違え」に気づかないのです。
点字を読める人が視覚障害者の10パーセントにも満たないというデータがあるどうですが、そういうとこにも原因があるのではと思ってしまいます。

私は誰かに奉仕することで喜びを得るのではなく、自分の楽しみと記録のために点訳を続けていくつもりです
そして、その記録が未来の誰かにとって参考になったり、共感につながったりすれば十分だと思っています。

義務ではなく、楽しみとして点訳を歩んでいく。
それを改めて心に刻むことができた、今回の体験でした。