作品背景|アメリカ禁酒法時代の船舶事情

作品背景

— ・・・Des Américains, peu après notre mariage, armaient le Seeteufel sous le nom d’un armateur allemand… Et, précisément, si Olaf est venu à Fécamp, c’était pour s’assurer qu’il n’y avait pas ici d’autres goélettes à vendre…
» Vous comprenez, maintenant. Il s’agissait de faire la contrebande de l’alcool aux Etats-Unis…
» De grosses sociétés se sont fondées, avec des capitaux américains. Elles ont leur siège en France, en Hollande ou en Allemagne…

結婚してまもなく|アメリカ人たちが|ドイツ人船主の名義で|セーテウフェル号を|運用していました……||そして|オラフがフェカンに来たのも|ここに|売りに出ている|スクーナーがないか|確かめるためでした……
ご理解いただけると思いますが|アメリカへの酒の密輸のためです……
アメリカ資本で|大きな会社がいくつも作られました。拠点は|フランスやオランダ|ドイツに置かれています……

『怪盗レトン第4章』に、このようなアメリカ禁酒法時代のヨーロッパからアメリカへの酒の密輸の話がでてくる。
当時の背景をまとめてみた。


■ 背景:禁酒法(アメリカ)

  • 時期:1920年〜1933年
  • 法律:ヴォルステッド法(禁酒法)
  • 内容: 酒の製造・販売・輸送が全面禁止

しかし、酒の需要は消えないため、ヨーロッパからの密輸ビジネスが爆発的に拡大した


■ 密輸の仕組み(いわゆる「ラム・ライン」)

海上密輸ルート

  • ヨーロッパ→大西洋→カリブ海 → アメリカ沿岸
  • 公海上に大型船(母船)を待機させる
  • 小型船(スクーナ)がそこから酒を運ぶ

これが「Rum Row(ラム・ロウ)」と呼ばれる、いわゆる「瀬取り」である。

スクーナー

  • 2本以上のマストを持つ帆船
  • 後ろ(後部マスト)の方が高い
  • 縦帆(前後に張る帆)が中心
  • 大型船(母船)=大量の密輸酒を積み、沖に待機
  • スクーナーや小型船=小分けにしてアメリカ大陸沿岸に運ぶ

小型で目立たず、機動性が高くため、いわゆる「ラスト1マイル」に向いた船だった。


船籍ロンダリング(名義偽装)

アメリカ人が|ドイツ人船主の名義で|船を運用

これは普通に行われていた手口です。
アメリカ籍は 厳しい取り締まりの対象だったが、外国籍は 監視が緩く法の網を逃れることができたからである。
特に使われた国がヨーロッパの、ドイツ、オランダ、北欧諸国でした。


フランス・オランダが拠点

主に、フランス・オランダ・ドイツに船籍がありました。

  • 大きな港が多い(ル・アーヴル、ロッテルダムなど)
  • 酒の供給が容易(フランス産ワイン・蒸留酒)
  • 戦後で海運が混乱しており管理が甘い

海運不況(戦後の現実)との関係

  • 第一次世界大戦後 → 海運業が供給過剰となっていた
  • 船乗りは、船はあるが仕事がない状態

この不況で船長が二等航海士に格下げされて、漁業に流れることもありました。
したがって、余分な大型商戦にとって、密輸は「稼げる仕事」になったのである。


■ セーテウフェル号の位置づけ

作中に出てくる「セーテウフェル号」は、表向きは監視の緩いドイツ船(名義)だが、実際はアメリカ資本という、完全に歴史的にあり得る密輸船です。

  • 実態:アメリカ資本の密輸船
  • 航路:ヨーロッパ ⇄ 大西洋 ⇄ アメリカ沿岸