点訳研究|補助動詞と純粋動詞、「する」「いる」など

基本原則(7拍基準)

ラボ流では、7拍以内であれば「する」「いる」「ある」「おく」は前の語と続けて書くことを基本にしています(補助動詞、純粋動詞に限らず7拍基準を順守)。

この理由は、これらの動詞は、補助動詞の意味を持つことや、2拍で成立しているからです。

  • 「する」
    • 補助動詞:勉強する
    • 純粋動詞:勉強をする(7拍基準)
  • 「いる」
  • 「ある」
    • 補助動詞:「根性ある」
    • 純粋動詞:「根性がある」(7拍基準)
  • 「おく」

8拍以上になった場合の処理

基本原則

ただし、8拍以上になった場合、次の二種類に区別して処理する。

種類本来の表記意味と用法用法分かち書きの扱い
純粋動詞漢字(和語)で書くことができる
る」「居る」
「有る(在る)」「置く」
動作・存在を表す本来の動詞
通常、助詞の後に付く前の語と区切る
補助動詞/補助的用法ひらがなで書かれる
「〜する」「〜いる」「〜ある」「〜おく」
状態・態様・完了・可能・丁寧などを表す
名詞や、形容詞・動詞、判定詞の連用形に付く原則、前の語と続けて書

純粋動詞としての用法

動作そのものを表す場合は、独立した自立語とみなし、前の語と分ける。

  1. 大失敗を|する(為る)
  2. 外国人が|いる(居る)
  3. 笑うことが|ある(有る)
  4. 鉛筆をおく(置く)

この場合、「する」「いる」「ある」「おく」の前に助詞があり、はそれぞれ一つの動作・存在を成す語として自立している。(ラボ流では、動詞の前に助詞がある場合は、その動詞は「純粋動詞」とみなす)
3番のように、前の項に形式名詞「こと」がある場合、その前で区切るよりも表音式のリズムや文法的にも自然な区切りと言える。


補助動詞・補助的用法

他の語に付いて、名詞化・状態・完了・態様などを表す補助動詞は、8拍以上になっても続けて書くことを原則とする。

  1. 大失敗した → 名詞+補助動詞
  2. 増加し続けていた → 名詞+補助動詞「し」+複合動詞(補助動詞つき)
  3. 大嫌いであった →イ形容詞+判定詞「で」+補助動詞 

これらは単独では意味を持たず、前の語の意味を補っていること、また、音声上も一まとまりのリズムになっているので、補助動詞や形式名詞が連続して前の語より拍数が長くならない限り、続け書きする。

【例外】判定詞、補助動詞、形式名詞の連続

判定詞や補助動詞、形式名詞が連続して、その前の純粋名詞より長くなる場合は、「判定詞(だ)」又は「する」などの補助動詞の前で区切る。

  • 判定詞の後に補助動詞などが連続して、その前の純粋名詞より長くなる場合は、「判定詞」の前で区切る。
    • 「大失敗|であった」「大成功|なのである」
  • 補助動詞や形式名詞が連続した長い文節では、「純粋名詞」や「慣用句」、「連語」などの内部では区切れないので、補助動詞の前で区切ることを許容する。
    • 「想像|していなかった」「気になって|いるのだろう」

ポイント

見分けのポイント純粋動詞補助動詞
意味動作・存在そのもの態様・完了・準備・結果など
アクセント独立して強調される弱く続けて発音される
文法的地位自立語助動詞・付属語的扱い
分かち書き前の語と区切る原則、続け書きする
(例外)補助動詞が続く場合
  1. 8拍以上の文節で、「する・いる・ある」を含む場合は、読み手の負担をできる限り減らし、また、誤読を防止する工夫をする。
    • 純粋動詞のときは、分かち書き
    • 補助動詞・態様を表すときは、原則、続け書き
  2. 判定詞や補助動詞、形式名詞が連続して、その前の純粋名詞などより長くなるなど、リズムが悪くなる場合は、「判定詞(だ)」又は「補助動詞」の前で区切ることを許容する。

【追加】その他、補助動詞など

  • 補助動詞「なる」、純粋動詞「成る」「為る」「生る」
    • 「面白くなった」(補助動詞:8拍だが、続け書き)
    • 「面白く|なってきた」(補助動詞の連続で例外扱い)
    • 「とうもろこしが|なった」(純粋動詞「生る」)
    • 「〜になる」の区切り方|7拍までは続け書き
      • 気になる(4拍:補助動詞、慣用句)
      • 気にはなる(5拍:純粋動詞)
      • 気になるだろう(7拍:補助動詞)
      • 気にはなります(7拍:純粋動詞)
      • 気になるのでしょう(8拍:補助動詞)
      • 気には|なるだろう(8拍:純粋動詞)
      • 気になって|います(8拍:補助動詞の連続で例外適用)
  • 補助動詞「いく」、純粋動詞「言う」「行く」の意味の違い
    1. 「郵便|局員が|計っていった」→ 補助動詞「いく」
      • 郵便物の量を、次々と計っていくこと。
      • 『点訳の手引き』では区切って書くため、下記純粋動詞との誤読が生じる恐れがある。
    2. 「郵便|局員が|計って|言った」→ 純粋動詞「言う」
      • 郵便物の量を計ってから、料金などを告げる。
    3. 「郵便|局員が|計って|行った」→ 純粋動詞「行く」
      • 郵便物の量を計ってから、どこかに行くこと。
    4. ちなみに、実際に、メグレシリーズで出てきた文章は、「2番」である。