言語学的な「単文」・「重文」・「複文」についてのまとめ
学校文法と現代言語学
- 学校文法では、「述語の数」を基準に「単文・重文・複文」に分けます。
- 現代言語学(統語論・生成文法など)では、「節(clause)」を基本単位として、節の階層関係や構造で区分します。
- 基本単位の「節」を、「句」の中でも最も大きな「CP=Complementizer Phrase」として説明します。
- 「節」(clause)は、「句」(Phrase)の集まり(構造)とみなします。
- 「句」(Phrase)は、「CP」「NP」「VP」「TP」などがあります(「生成文法」参照💁)
言語学的整理
1. 単文(simple sentence)
- 節(clause)が1つだけ。
- 例:
- 雨が降る
- 構造:CP = [NP「雨が」] +[VP「降る」]
2. 重文(compound sentence)
- 節が複数あり、並列的に結合されている。
- 英語では coordinate clauses にあたる。
- 結合手段:接続詞(そして、しかし、また、など)、句読点(、)。
- 例:
- 雨が降り、風が強い
- 構造:CP= [CP「雨が降り」] +[CP「風が強い」]
- どちらも 独立節(independent clause)。
3. 複文(complex sentence)
- 主節(matrix clause)に従属節(subordinate clause)が埋め込まれる構造。
- 英語では complex sentence にあたる。
- 従属節のタイプ:
- 条件節(〜なら)
- 理由節(〜ので)
- 時間節(〜とき)
- 名詞節(〜こと、〜の、など)
- 関係節(〜が/〜を…するN)
- 例:
- 雨が降ったので、出かけなかった
- 構造:CP=[ CP「雨が降ったので」] → [ CP「出かけなかった」]
- 前者が従属節(理由節)、後者が主節。
生成文法
- 日本語文法研究では、重文=「等位節構造」、複文=「従属節構造」と呼ばれることがあります。
- 生成文法的にみると:
- 重文 → Conjunction(結合詞)を使った CPの並列構造
- 複文 → 主節CPの内部に 埋め込まれたCP(従属節)
つまり、
- 重文 = 対等な節の並列
- 複文 = 階層的な節の従属
英語との対比
| 日本語 | 学校文法 | 現代言語学 | 英語 |
|---|---|---|---|
| 単文 | 述語1つ | 単一節 | simple sentence |
| 重文 | 述語2つ以上(対等) | 並列節 | compound sentence |
| 複文 | 述語2つ以上(従属) | 埋め込み節 | complex sentence |

