目を瞑った方が速い ― 点字という暗号
BESで六点入力をしていると、ふと気づくことがある。
目を開けて打つより、目を閉じてしまった方が、指先が滑らかに動くのだ。
点字はもともと「目で追う文字」ではない。
触覚で確かめ、指先の記憶で解き明かすものだ。
だから視覚を閉ざしたときにこそ、本来の姿をあらわすのかもしれない。
初めて点字の仕組みに触れたとき、私はシャーロック・ホームズの『踊る人形』を思い出した。
無意味な模様の羅列が、暗号の鍵を得た途端に意味を持ちはじめる——あの興奮。
点字もまた、知る者にだけ開かれる小さな暗号である。
用紙の上に並ぶ六つの点は、
ただの凸ではなく、
言葉を封じ込めた「踊る人形」なのだ。
