ラボ流|翻訳と点訳の取り組み

翻訳と点訳

― 言葉に、もうひとつの形を ―

翻訳は、遠い国や昔の時代から届いた言葉を、日本語の文字に置きかえる作業です。
そこには、作者の息づかいや、まだ見ぬ景色が潜んでいます。

点訳は、その日本語の言葉を指先でたどれる形に変える作業です。
点字は、漢字・平仮名・片仮名に続く、日本人のための「四番目の文字」。
小さな点の並びに、間(ま)やリズムが息づき、触れて読むとき、そこには静かな息遣いと温かさがあります。

どちらも、言葉の形を変えて新しい読者に届ける“もうひとつの翻訳”です。
このページは、翻訳と点訳という二つの形をつなぐ橋。
どうぞ、その橋を渡ってみてください。


当サイトでは、翻訳したものを「墨字」として掲載し、点訳したものを「点字データ」として自由にダウンロードできるような形で掲載しています。
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『日本点字表記法』と『点訳の手引き』

まず、翻訳から点訳を進める上で基礎となる『日本点字表記法』と『点訳の手引き』について、その位置付けを整理しました。

1. 『日本点字表記法 2018』

  • 制定・改訂は日本点字委員会が行う、公式な全国共通の点字表記規則です。
  • 2025年現在、『2018』版が最新です
  • 点字の書き表し方の原則を体系的に定めたもので、法令や制度に準ずる位置付けに近く、標準化の基盤となります。
  • 各種点字資料の作成や教育の際、この表記法を根拠として統一を図ります。

2. 『点訳の手引き』(全視情協編)

  • 『日本点字表記法』を、点訳実務の立場から再構築したテキスト。
  • 2025年現在、『第4版』が最新版である。
  • 表記法に幅がある場合は、点訳上の配慮や選択基準を加えて整理し、規則をできるだけ簡潔に提示している。
  • 「本則」「備考」「処理」「参考」「コラム」の5区分で構成され、例外や運用方法、触読者への配慮など実践的情報を盛り込んでいる。
  • 全国の点字図書館・点訳団体などが加盟する全視情協が編集・発行し、サピエ図書館に登録される点訳は本書準拠とすることが決められてる 。

3. 位置付け

  • 表記法=点訳の原則と基本的なルール
  • 手引き=原則だけでは判断しにくい配慮すべき点について、点訳活動の具体的な運用・選択肢・注意点を用例を上げて幅広く提示し、サピエ図書館にアップする点字データを同質にすることを目的とする。そのため、各地域・団体の実務の意見を参考に、できる限り統一した点訳のルールを提示している。
  • 実務では、表記法で示された原則を尊重しつつ、『点訳の手引き』に準拠して点訳を行うのが一般的である。

点訳の方針と作業の流れ

ハイブリッドラボ・プロジェクトにおける実際の作業の流れです。

  1. 翻訳作業
    • 原文を精読し、当時使われた慣用句などの意味を正確にとらえ、原文に込められた作者の意図をできるだけ推し量って日本語化する。
    • 特に、人物の呼称(ミスター/ミセス/ドクター/マドモワゼルなど)や、二人称(あなた/君/あんた/おまえ)などに配慮することで、読者が人物の個性や会話の中での互いの感情などを、日本語でもよくわかるように表現する。
    • 当時の表現に拘るあまり、現代において理解し難い意訳をすることは避け、墨字・点字双方の読者が情景を思い浮かべやすいように配慮する。
    • 既存の出版物では各種事情により削除・編集された部分であっても自由な立場で盛り込む。
    • 固有名詞や地名などのほか、当時のユニークな言葉など現代の日本の読者に伝わりにくい表現については、「注釈」として追記するほか、「作品背景」として別記事を立て、「研究ノート」で説明するようにした。
  2. 点訳作業
    • 『日本点字表記法』を基本に、『点訳の手引き』の「本則」「備考」「処理」に準拠することを原則とする。
    • 「分かち書き」「切れ続き」は、「日本点字表記法」に記載された「第1の原則」と「第2の原則」の理念に従うことを基本とする。
    • このため『点訳の手引き』の各用例は、あくまで「指針」と位置付け、上記原則に従って点字読者の理解のしやすさを優先する。
  3. 最終稿の作成
    • 翻訳時の墨字文の「分かち書き」「切れ続き」をする箇所に『|』を入れる。
    • 点字にした時の理解のしやすさを優先して翻訳案の文章を随時修正し、翻訳の最終稿とする。
    • 修正版は、墨字、展示ともに最新版のみ掲載する。
  4. 点字データの作成
    • BES(Braille Editor System )に入力し、デジタルデータ(拡張子:BES)を作成する。
    • 点字の文章を通し読みをして、点字独特の間(ま)やリズムが崩れていないかを確認する。
  5. 校正
    • 現在、校正していただける方を探しています。問い合わせ先よりご連絡いただければ幸いです。
  6. 仕上げと公開
    • 点字の理解に役立つよう翻訳ページと点字ページ(墨字による点字)をリンクした形で同時公開することを原則とする。
    • 「著作権法」等の法令を遵守し、著作権者等の権利に抵触しない範囲内で公開する。
    • 完成したBESファイルに作品情報や発行日を付記し、更新履歴を残す。
    • 作成した点字データは当サイトで公開し、「サピエ図書館」に寄贈することを目的としない。
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